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前日譚になりそうな日だった

気持ちいいぐらい晴れている。友人のプロフィールムービーが難航。作業を集中しようと部屋を出てフリータイムでカラオケに入る。
開始1時間で母からLINE。「話したいことがあるのですが、時間ありますか」
どう考えても急ぎの良くない話なので、今日この後いけると即答。
1時間後母到着。
「父が不正で懲戒解雇。訴訟は免れる可能性が高いが、どうなるかはわからない。あと、父に秘密の借金が500万あった。ローンは後1400万ある。君にはわからないかもだけど、1400万返すのは楽勝。住むところがあれば人生何とかなるから、あなたたち兄弟に70坪の土地を残したい。あと、私の死後は知的障害の子の面倒をみて欲しい。あなたはどうしたい?」
「お金どうやって返すの?」
「あたしが寝る間を惜しんで働く。あなたには迷惑かからない。万が一死んだらローンはチャラになる保険に入っているから安心して欲しい」
「…」
快活クラブで作業の続きをする。
やっとこさ終わって帰り道。
家族のことを思い出す。なんだか足が動かない。しゃがみ込む。偏頭痛。奇声が体の奥から出てくる。抑えきれない。
私は手取り16万、生涯彼女なし、おまけにADHDの診断をされている、よくいる一般男性。家に帰って、明日のおにぎりを作って、5時間半ぐらい寝て、会社で人間のふりをしなきゃいけない。それなのに。
気力ながないのでおにぎりは作らない。シャワーを適当に済まし、布団に入る。眠ってしまいたい。体から不幸焦燥、絶望が滲み出てきて、奇声が漏れる。ヘッドホンを投げる。小さく跳ねながら布団の上を一周したあたりで、おちゃらけたツイートをする。俺は大丈夫だ、面白い話ができた。不幸はみんな面白がる。俺にはまだこれがある。
鏡を見る。不細工な私。頬を引っ掻く。顔を殴る。棚をどつき洗剤も何もかもぶちまける。手元に落ちてきた眉毛用の小さな鋏。ブスブスと腿に刺す。
薬をたくさん飲んで眠りたい。でも薬局は閉まっている。もう3時なのに、横になって眠りたいだけなのに、汗が止まらない。体を小さく揺らし続ける。あまりに長い夜。もう死にたい。自殺と検索する。「1人で悩まないで」と、サイトは優しい。コールセンターに電話をかける。「只今、大変混み合っています」D'oh!!と声をあげる。俺はホーマー。
血糖値スパイクで眠ろう。全て終わりにしよう。ペヤングの超大盛りを買いに、コンビニに走る。壁伝いの床にネズミのフンがこびりついた大通り沿いのコンビニ。ポッドのお湯から、ペヤング超大盛り二つに2リットル近くのお湯を注ぐ。走る。風が気持ちいい月の綺麗な夜。金髪のカップルが楽しそうに歩いている。俺はめちゃくちゃな服装をして、小股の早歩きでペヤングを運んでいる。面白いだろうか。
ペヤングはうまい。2000キロカロリーを摂取する。心が落ち着いてくる。頭がだんだんぼんやりしてくる。焦りがきえる。ゆっくりと1日が終わっていく。日に日にバカになっていく。

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