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ある平日休み

昼過ぎまで1人ファッションショーをするなどしてだらだらしていたが、職場の同期と夜ご飯を食べる約束をしていたので、いちばん日差しが濃いと思われる時間に家を出た。
場所は京都駅で、銀行に払い込みにいく予定もあったので、用事を済ませてふらふらしつつ同期を待とうと思ったのだった。


私は人と会う時も会わない時も、基本的に自分の着たい服を着る。相手がどう受け取るかとかは、マッチングアプリとか大勢の飲み会でない限りは考えない。
今日は黒のカーゴパンツに黒のシースルートップス。カーゴパンツはともかくとして、シースルーは透けてる上に黒なので、日光を集めるだけ集めて遮光はあんまりしてくれない。自転車に乗って駅まで行くのが、とても、あつい。


京都駅に着いたらひとまず払い込みを済ませ(この「済ませ」って小説っぽくてかっこいい)、屋上のほうへ行ってみることにした。通勤で使っている駅だが、屋上のほうはほとんど行かない。
京都駅は屋上が楽しい。特に、私はホテルグランヴィアがある方面が好きだ。人が少なくて、ただ広いだけのよく分からん空間がたまにあって、未開拓の場所という感じがする。


そちら側の屋上には駅ピアノがあるので、せっかくだし ということでかなり初心者だけど弾いておいた。駅ピアノを弾くためにピアノの前に歩み寄るときの勇気と、気になる人をご飯に誘う時の勇気はかなり似ている。超える壁の種類が一緒だと思う。
そしたら今まで誰も弾く気配なんてなかったのに、ずっと座っていた人が私が席を退くや否やめっちゃ上手い演奏(あとで調べたら渚のアデリーヌって曲)をはじめた。「これぐらい上達してから弾きな」っていう牽制だったのだろうか。
まあ素敵な演奏を引き出せたという点では私の拙い鍵盤捌きも役に立ったといえよう。それでいいやもう。


背中で素晴らしい演奏を聴きながら、駅の天井近くを歩ける「空中経路」を通ってみることにした。
今日は日差しがとても強かったのが功を奏して、京都駅の美しい骨組みが道にくっきり影を落としていた。私は京都駅の緻密な骨組みが綺麗で大好きなので、天井をこんなに近くで見られたことも、影が綺麗だったことも嬉しかった。
そして、シースルーシャツの柄が影とおそろいだった。

偶然


これからこれを「京都駅の骨組みトップス」と呼ぶことにする。
やっぱ着たい服着てきてよかった。

空中経路の出口は駅ビル大階段側の屋上の近くになるので、ついでにそちら側も探索していくことにした。
平日なので、ベンチにいる人もまばら。奥の方に行くと、何にもなさそうな空間があった。扉を開けて、くすんだガラス張りの小さな部屋みたいなところに入る。

いい空


ただ、屋上から景色が見れるよというそれだけの空間で、京都駅に関わるほとんどの人がこの場所の存在を忘れていそうな雰囲気がした。良い場所だ。

そのガラス張りの小部屋?が伊勢丹につながっていて、フロアをぷらぷらしながら時間をつぶした。

うれしなつかしウォータークーラー


フロアの隅のほうに外装の黄ばんだウォータークーラーを見つけた。最後にここで水飲んだの誰なんだろう。けっこう勇者だと思う。

高校にあったのと全く同じ機種?だと思う。あの頃はみんな足でペダルを踏んで、冷たいのをがぶがぶ飲んでいた。
いつ撤去されるのか、定期的に見にいこうかな。10年後も置かれてたらすごいし、置かれてそうな気配がある。

同期の仕事が終わる時間をかなり過ぎたが、まだ連絡がない。
もう京都駅は楽しみ尽くした感があるし、歩き回って疲れたので、イノダコーヒのチョコレートパフェを食べならがら待つことにした。

チョコレートパフェは、読んでいた小説に出てきてから猛烈に食べたかった。デパートにずっと入っている昔ながらのレストランのチョコレートパフェ。おしゃれなカフェのやつではだめなのだ。これが探すと意外となくて、この前イノダコーヒの前を通った時にメニューに「チョコレートパフェ」の文字を見つけた時はたいへんテンションが上がった。
イノダコーヒに入店し、ケーキとプリンは売り切れだけれどもチョコレートパフェはあるということを確認し、席に座って申し訳程度にメニューを眺めて「チョコレートパフェひとつ」と言った。
チョコレート、パフェ。なんてかわいらしい響きなのだろうか。パフェ という言葉と、グラスに生クリームがたっぷり盛られた華やかな見た目がぴったり。おしゃれなのもおいしいし大好きだけど、パフェ!って感じのするのはやっぱり昔ながらのやつである。

イノダコーヒ チョコレートパフェ


そして、来た。
コーンフレークやケーキはなく、さくらんぼ、ウエハース、バイラアイス、生クリーム、チョコレートソース。
これを溶かしたらさくらんぼとウエハースしか残らないなと思いながら食べた。私は実体のあるものが好きな傾向がある。溶かして液体になるものは実体がないほうにカウントしている。
このかるーい生クリームをまさに求めていたので大満足だった。

そうこうしているうちに同期から「いま仕事が終わった」と無事LINEが来た。かなり残業したようで、お疲れ様。

私はひとりで休日を過ごすことがほとんどだが、(私比で)こんなに有意義なのは久しぶりで嬉しかった。
ひとまず伊勢丹のウォータークーラーを観察する任務ができたので、撤去されるまでは休日やることには困るまい。

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