見出し画像

映画『プロスペローの本』ピーター・グリーナウェイ監督

芸術とは何か。

大学の授業でピーター・グリーナウェイ監督の『コックと泥棒、その妻と愛人』(1989年)を鑑賞したときの衝撃は忘れられない。
それまでは、ストーリーや登場人物の感情に共感できるかどうかで映画を観てきた私には、そのどれにも当てはまらず、ただ芸術という観点で映画を観ることに困惑した。
表象論の授業で、映画に出てくるモノやサブカルチャーから分析してきてはいたが、それはストーリーありきだった。
こんなにも芸術に振り切った作品で、こんなにも理解が難しいのは初めてだった。

彼のほかの作品もいつか観たいと思っていたが、
マイナーすぎて、配信もないし、DVDレンタルもなくて困っていた。
そんな中、彼の作品を上映すると知り、観に行った次第である。

『プロスペローの本』Prospero's Book (1991年)
監督・脚本:ピーター・グリーナウェイ
出演:ジョン・ギールグッド、マイケル・クラーク、ミシェル・ブラン、エルランド・ヨセフソン他

終わって最初に思ったことは、
え、人って背景になるの?あれは登場人物ではなく、舞台装飾の一つだったなと。
ずっと宗教絵画を観ているような感覚だった。

ストーリーは正直言うと、少し難しかった。
シェイクスピアの「テンペスト」をもっと勉強しておけばよかったと後悔している。
そうすれば、もっと全体図の理解ができたと思う。

印象に残っているのは2つ。
1つ目は、水の音。
水滴の音が大きく響いて、なぜか不気味な感じがした。
私の中で、水は流れるもの=変化の象徴が強い。
だが、ここでは、恐怖・畏怖の対象であることに新しい発見があった。
確かに、水の災害は甚大だ。
でも、最後プロスペローが許す様子が
「水に流す」じゃないけど、そういう暗示もあるんじゃないかと考えられる。

もう1つは、歩くこと。
ずっと歩いてる。
歩いて場面転換をしているんだけど、
ぬるっと変わるから、『コックと泥棒、その妻と愛人』と
舞台っぽいセットは同じだけとなんか違うなと感じた。
なんか宗教絵画を観てる感じがした。

グリーナウェイ監督は、絵画から映画つくると、
何かの記事で読んだことがある。
私が感じることは間違ってはいないのだろうけど、
そこからの考察ができない自分の知識不足が悔しい。

もっと勉強しようと改めて感じる作品だ。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?