息子のまなざし

2回観て、2回とも酔いしました。
それだけカメラが動く。
「超」がつくほど、動く。
それと同じくらい彼らの視線も動く、心も揺らぐ。

必ずしも物理的距離と精神的距離が合致するとは限らない。そんな比例にも反比例にもなり得る人間の心と心の摩擦から生じる不協和音。それだけが、音楽のないこの映画からひしひしと伝わってくる。

動き回るカメラは2人の人間を一度に捉えようとは滅多にしない。捉えてもピントがボケていたり、2人が違う方向を見ていたり、異なることをしていたり…。建前でも人とわかり合おうとしない彼らの心をあらわしているよう。

しかし、この映画はそんな不安定で危うい人間の心に関する1つの末路を提示する。

静止したカメラ。
そっと囁かれる慎み深く調和した音。