ひるね

おぼえているかな
わたしの手は
この指ざわりを

髪の生えるのが　おそい
きみの　ふわふわとした
ほそい毛並み

ゆっくりと
くりかえし
なでる　なでる

愛しい　ときを
刻むように

おぼえているかな
わたしの頬は
この肌ざわりを

まだ地肌のみえる
きみのあたま
その体温を

やわらかいうぶ毛が
ほかほかと
つたえてくれる

そのぬくもりに
すいよせられるように
ほおずりをする

目の前の　ときを
確かめるように

おぼえているかな
わたしの肩は
この重みを

ひるねの途中
きみはむにゃりと　めをさまし

仰向けに寝る　わたしの右肩
寝ぼけまなこで
よいしょとのぼり

頭をあずけて　そしてまた　
すぴいすぴいと
ねむりにおちる

そのまま　そうっと
そのまま　そうっと

右手をまわして
わたしはきみのあたまをなでる

うでがじんじん
しびれてくるまで

なでる　なでる

ふわふわとやわらかい
その髪を

なでる　なでる

体温を伝える
そのあたまを

なでる　なでる

流れゆく　ときを
感じるように

いつか
きみがおとなになっても

おぼえているかな
わたしの手は
この指ざわりを