後ろにぽちっ

パジャマ代わりの膝丈のワンピースを愛用している。真っ黒でボタンも何もなく、襟ぐりも広くなく、すっぽりかぶるタイプなので、前後を間違える可能性がとても高い。寝ぼけていたり、ちょっと暗がりだったり、焦っていたりするとたいてい間違える。毎回、ちょっと首がぐえっとなって、サイドのポケットを確認して「またやった・・」とくるっと回すことになる。実際にはお風呂上がりの潤った体ではくるっと回らないので、一旦脱いで、また着ることになる。このパジャマは2年以上は着ているので、間違えた数は下手したら100回は超える。さらに同じものを二着持っていて超多忙時期になると、クローゼットの中で混在して、どっちが洗ったのかわからなくなり、匂いで確認することもある。

というわけで、今更ながら印をつけることにした。首の後ろにぽちっと丸く刺繍。ちょっと立体的にしたら、寝ぼけていても、暗がりでも手で触ってわかる。そして四角と丸で形を変えたら二着の違いもわかるぞ。と冴えている気分で取り掛かる。半年以上前からの構想だったが、この前、WSに参加して刺繍デビューしてみたので勢いづいていた。

一着目は丸の形にすることにした。今思えば、なぜ難しそうな丸からやるのか。これが私の凄さだ。できるかできないか、やりやすいかとかではなく、やりたい方からやる。案の定、下書きした丸とは程遠い、菱形と卵形を合わせたような形になった(つまりはぐちゃっとした形。)とはいえ、出来上がった。プクッとしている。これで前後間違えないぞ!しかもちょっとかわいいぞ!やったー!と思って、服を広げてみたら・・・

なんと、前についていた。
前後を間違えないようにつけた印が、すでに間違っていた。

「じゃ、もう前につけることにしたらいいじゃない」
「もう一着も前につけたら、同じことじゃない。」

と、ささやく自分もいたんだけれど、すでに半年以上も「後ろにぽちっとつけよう」と構想を練っていた私の脳みそが、「前にぽちっとついている」と上書きできる気がしない。さらに、後ろにぽちっとがかわいいんやん、前にぽちっとは違うやん、と面倒くさい私がささやく。

というわけで、結構時間がかかった刺繍にハサミを入れ、やり直した。2回目の丸はちょっと空気の抜けたボールみたいな形になった。けど、後ろにぽちっとちゃんといるから満足している。




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