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褒めてあげてほしい

日々の仕事は研究室と事務室を行ったり来たり、こちらは何でも屋なので、よく書類にダメ出しされる。
完璧に作っているつもりだが、相手の書いてほしいようにできていないから仕方ない。

そんな中、いつもやり取りする事務室のTさん(アラサーかな)の応対が、とても感じが良くて好きだ。

クリアファイルに挟んだものをTさんの机に持っていく。
「〇〇の書類ですけど、確認しておいてもらえますか?」と渡すと、彼女は決まって書類を目の上に掲げて「お預かりします」と言う。

一瞬だが、神様のお下がりをいただくような仕草だ。
それが自然で美しく、書類はただの紙じゃないという意識が伝わってくる。
前の勤務先だろうか、それとも育った家庭環境なのだろうか。

私が今の職場で働き始めたころのことだ。
まだ全てが「紙」の時代だった。

5、6枚で一式の書類を持って事務室に行き、それを担当の女性に渡すと、紙の順番が違っていたらしかった。
違っていたら「違うよ」で済むのだが、その人は「こんなの受け取れない!」と書類の束を投げつけた。

散らばった書類を拾うのは惨めだったが、私は悪くないから腹は立たなかった。
今ならパワハラとも言えるが、あの人には気をつけようとだけ思った。

正規職員のその人は、やがて別の部署に異動していった。
そんな仕事ぶりでも評価され昇給もする。
しかし非常勤は評価もされないし、昇給もない。
若い人にはもっとご褒美をと思う。

Tさんの上司に、彼女の丁寧な仕事ぶりを伝えたい。
でも残念なことに、それを受け止めてくれそうな上司がいない。
もし言っても「ふう〜ん」で終わりそうで、オバサン何言ってるの?と思われそうだ。

Tさんのいる部署は女性ばかり、職場で一番機動力があって気の利く人も多い。
結局は非正規の労働力で回っている。
こんな状況でいいの?と疑問がわいてくるが、これが現実だ。

若い人がやる気を持って働ける職場になったらいいなと、オバサンは密かに見ているだけだ。

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