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天然の肝試し

義母が退院する準備のため、昨日は夫と別々の車に乗って出かけた。

私の運転する車では狭い道を入って行けないため、夫から村はずれの墓地の駐車場に停めたらいいと言われていた。

夫が義母と荷物を下ろす間、私は家の近くを通り越して300mほど先にある墓地の駐車場まで、くねくねした道を走った。

のどかな春の日、桜も満開だ。

砂利をひいた駐車場。
いつもと同じように、特に何も考えず車を停めた。

せっかくなので、石段を上ったところにあるお墓をささっと掃除して手を合わせる。
義父とご先祖に義母の退院を報告すると、車で上ってきたくねくね道を、義母の家へと歩いていった。

それからは、昨日のnoteに書いたような、まるで祭りのような時間をすごすことになる。

気づけばすっかり日が暮れていた。

義母も疲れただろうと、家から持ってきた五目ご飯や麻婆茄子の残りなどで、地味に夕ご飯を済ませた。

念のため今夜は泊まることにすると、夫が言う。

車も2台あることだし、私はひとりで帰ることにした。

義母のために買ってきた血圧計を試している夫に、「じゃあ帰るね」と声をかけた。

夫は「ひとりで大丈夫?一緒に行こうか?」と言ったけれど、手を止めるのもなんだしと「大丈夫!行けるから」と言って、家を出た。

時計は7時半をまわったころだった。

しかし、すぐに私は甘かったことに気づく。

田舎の夜7時半は、体感では11時くらいの感じなのだ。

周りはシーンとして、外灯もない。

もちろん、人っ子ひとり歩いてはいない。

目が慣れるまでは、暗い道を勘で歩いて行く。

最後の家の灯りが見えた。

一瞬でも「怖い…」なんて言ったら、叫んでしまいそうだった。

ホッホウ〜とか、ケケッとか、鳥なのか獣なのか、何かが鳴く声がする。

何度か引き返そうかと思ったが、今歩いてきた道を戻るのも真っ暗で、足がすくみそうになった。

そこに見えてくるはずの、私の車が見えない。

グレーのメタリックはすっかり闇と同化しているのだろう。

目を瞑った方がいいほど真っ暗な道を上り切ると、ぼんやり車の輪郭が見えた。

ドアに手をかけると、やけに大きな音でピピッとロックが解除された。

慌てて車に乗り込むと、いつもはしないのに急いでドアをロックした。

側溝との段差が大きいらしく、少しずつアクセルを強く踏むと、三度目くらいで道路に出た。

そこからはもう一目散という気分だった。

早く!早く明るいバイパスに出たいという一心で、坂道を下った。

自分も田舎育ちだけれど、こんなに田舎の夜を怖いと思ったことはなかった。

やっぱりお墓だもん。
真っ暗な墓地が怖くない人なんて、そういないのでは?

ーーーーーー

昨夜は家にひとり、布団に入ってからこれを書いていた。

何か物音がするたび怖くなって、家族LINEに何か書こうとしたが、時計は12時近くになっていた。

疲れているのに胸がざわざわして、このまま眠れなかったら嫌だな…と思った。

が、その後の記憶がないということは、すぐに寝落ちしたらしい。

お化けは出てこなかったけれど、まさかの天然肝試し、もう絶対やりたくない。

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