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娘が中三の秋、志望校を聞いた夫と私は、少々反対だった。遠くに行かなくても近くの学校でいいと思ったからだ。それでも最後は本人の意思を尊重し、娘は志望校に合格した。 入学式でのこと。吹奏楽の演奏にあわせて一年生が入場してきた。この曲、何て歌だったかなぁと思い出そうとしていると、娘の姿が目に入った。真っ直ぐ前を見て歩くその横顔を見た途端、胸にこみ上げるものがあった。周りに知り合いはおらず、とめどなくあふれる涙が恥ずかしかった。 二人の子どもを育ててきて、入学式に泣いたのはあの日
社会人になった娘が、夏に帰省したときのことだ。荷物を置くなり、四畳半の茶の間で足を投げ出し、「あー、ウチは落ち着くねぇ」と伸びをした。 娘が帰ってくる前に、小綺麗にしておこうと思っていたのに、仕事で忙しい毎日が続くうち、片付けることができないままだった。テーブルの上には、ノートパソコンや読みかけの雑誌、リモコンやボールペンなど、定位置に戻していないものが載ったままだ。 しかし、娘はさほど気にする様子はない。「この雑多な感じが、実家に来たって気がするわ」と、笑っている