恵那峡温泉で、モミアゲ&顎ヒゲだろうか、顎マスクだろうか?と……(旅で★深読み)
岐阜県東濃地方・恵那峡にある温泉に紅葉見物を兼ねて出かけました。
恵那峡は福沢諭吉の娘婿で電力王と呼ばれた福沢桃介が手がけた発電所の中で最大規模の大井ダムによってできた景勝地です。日本の女優第1号の川上貞奴も桃介に協力しており、工事現場の写真には他の関係者と共に、ふたりが中央で写っています。
紅葉はちょうど盛りで、恵那峡の遊覧船もおそらくは3年ぶりのかき入れ時のようでした。
それはともかく……
夕食前に大浴場で大欲情!……ではなく、まったり湯船に浸かっていると、更衣室から40歳ぐらいの男性が現れました。
今日はこの《謎》の人物をレポートしたいと思います。
第一印象は、濃いヒゲを生やした人物 ── でした。耳のすぐ下から顎、そしてもちろん、反対側の耳の下までずっと、濃灰色の《ヒゲ》で覆われていたからです。
彼はカランの前に座り、私の位置からは薄暗い中、横顔が見えました。
(あれ? ……なんかおかしいな)
「モミアゲの生え方」が普通じゃないのです。
耳の前の部分からだけでなく、耳の後ろからもモミアゲ(?)が伸びています。
(うーむ。ヒゲ?があまりに濃い?というか、……あんな所まで生えている人は珍しいな)
といっても口ヒゲ ── 漢字で「髭」 ── はまったく無い。
(……ひょっとしたら、あれは濃いグレイのマスクなんじゃないだろうか)
それならば、グレイのラインが耳の後ろから伸びているのも理解できる。
── しかし。
しかし、マスクを「顔パンツ」と称する人もいるが、パンツを少し下げた状態で温泉に入って来るとは……。
彼はシャワーを出し、そのシャワーを顔にかけ始め……。
(シャワー……やはり違うな、ヒゲに間違いない)
私がそう「判断」した瞬間です ── 彼は、彼自身さも驚いたようにシャワーを大きく逸らし、顔からヒゲを ── いや、濃いグレイのマスクをむしり取り、何事もなかったかのように顔を洗い始めました。
(ああ……やっぱりマスクだったんだ!)
彼は脱衣場で「顎マスク」にした後、そのまま着けていることを忘れてしまったのでしょう。
(それにしても、あんなギリギリまで気付かないとは……)
(まあ、俺が眼鏡を髪に挟んだまま、どこにいっちゃったかと探すのと、同じってわけだ)
この3年間、あまりにマスクが「常態化」したため、こんな人まで現れた!
(これは《進化》だろうか、それとも……)
小さな感動を覚えつつ、浴槽で体を伸ばしたのです……。