《トイレ洞窟探検隊》は給食中の教室から締め出された ── 「レア体験」1番?(#私だけかもしれないレア体験)
数日前に人生における「レア体験」をいくつか書きました。
書いた後で、小学校時代の悲惨な記憶がよみがえりました。
(……ひょっとしたら、1番はこれかもしれない……)
おそらく、こんな経験は私だけでしょう。いや、もうひとり、探検隊のメンバーかいるか……。
私が入学した時、小学校のトイレは校舎とは別棟にあり、和式の汲み取り式でした。男女の区別もなかったですね。
6年に上がるときに、「汲み取り式」から「水洗式」に変更工事が行われることになりました。工事は順番に行われるので、いつも使っていた、校内最大のトイレはしばらく使用禁止となりました。
工事がほぼ終了し、間もなく使用可能、となった頃です。
私は友人何人かに、
探検!
を持ちかけました。
「まだ使っていないうちにトイレに潜り込んで中を探検しようぜ!」
《なりたかった職業》の第3位が《探検家!》であったことは別の場所に書きました。
とはいえ、都会に住んでいては《探検場所》は限られます。
こんな機会を逃す手はありません!
「ええ……いやだよ……そんな、トイレの中なんて……」
怖気付く意気地なしはもちろんいました。
私は、
「トイレったって、まだ使ってないんだぜ! まだ汚くないよ! 使い始めたらもう探検できないんだぞ! 行くなら今しかない!」
……結局、探検隊長についてきた隊員はひとりだけでした。
「立ち入り禁止」と書かれた入り口を突破し、一番端の「個室」に入りました。
和式便器から下を覗くと、セメントで作られた経路らしきものが見えました。
「よし、行くぞ!」
私はたったひとりの隊員に声をかけ、白い陶製の便器に、足から身を下ろしていきました。
その水洗システムは、各個室の使用者が個別に水を流すのではなく、おそらくは水量節約のためでしょう、下記のように、ある時間おきに一気に水を流すようになっており、便器はその下で、子供なら這って通れるほどの大きさのセメント張り水路でつながっていました。
そこで、私隊長と隊員1名は、乾いた水路をくぐっては別の便器から顔を出し、……ということを繰り返し遊んでいました。
気分はもう、洞窟探検隊!
でした。
隊員に勧誘したのに怖気づいた連中が遠まきに眺めているので、便器から手を振りました。
「おい、そろそろ給食の時間だぞ!」
「そうだな!」
探検隊は手を洗って教室に戻りました。
── すると、たいへんな事態になっていたのです。
既に廊下に何人かが立って、
いわゆる「エンガチョ」のローカル版を叫んでいました。
「きったねえ! こっち来るな!」
「こいつら、便所に入ってたんだぞ!」
悪童が喚いているのはまだしも、
「あんたたち、教室に入らないで! みんなで決めたんだからね!」
「お前ら二人は立ち入り禁止だ、いいな!」
驚いたことに、良識があるはずの男女学級委員も、戦後民主主義を背景に、探検隊をブロックするのです。
「ええ? だって、まだ誰も使っていない洞窟を通ってただけじゃないか!」
「中はきれいなもんだったぞ!」
実は、洞窟の中には早まった誰かが落として乾いたウンチがふたつぐらいありましたが、もちろん、それは口に出せません。
「とにかくダメ! あんたたちふたりはもう教室に入れない! みんなで決めたから!」
クラス全員からイジメに遭う辛さ、は相当なものだと想像しますが、クラス全員から教室に入ることを禁じられる絶望感、というのも経験しなければわからないでしょうね。
トホホ……。
とにかくクラス中からバイキン扱いされた探検隊は、仕方なく廊下をぶらつき、花壇のレンガに腰を下ろしたりしていました。
「腹、減ったなあ……」
「……Pochiについていくんじゃなかった」
隊員からは早くも泣きごとが聞こえますが、泣きたいのはこっちの方でした。
「今日だけじゃなくって、オレたちずっと、給食食べれないんだろうか……」
「授業は受けなくてもいいけど、給食は……困るよな」
などと話している所に、担任の先生が教室で給食を共にするためにやってきました。
「おい、何やってるんだ?」
事情を話すと、
「しょうがないなあ、みんなに頼んでやるよ」
……というわけで、探検隊は先生の《口効き》でクラスと和解(は、してないけれど……彼らは権威の前に仕方なく……)し、給食にありつきました。
しかし、……
この記事を書いていて、
特に、この絵を描いていて、
思ったのだけど……
もし、水路洞窟の《探検中》に、工事の人がテストで水を流したりしたら、悲劇になっていたのではないかな……。
良い子は決して真似をしないように。
……しないよね。
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