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【這っても黒豆】(新釈ことわざ辞典)記事版

選挙に強い政治家が討論会でしばしば披露するロジック芸 
「いや、黒豆じゃないか、ほら!」 
「うわーっ! 口に入れた!」 
「そこまでやるとは!」
 

比較的マイナーなことわざですが、明らかに間違いとわかっても、自分の間違いを認めようとしないことです。
特に政治家どうしの討論会で、相手方から弱みを攻撃された時にこの『ワザ』がうまい者ほど支持者からは『強い/頼もしい』と思われたりしますね。これは、本人はもちろん、支持者の期待も、『正しいことを言う』のではなく、『ディベートで相手に勝つ』ことだからでしょう。
代表的なのがドナルド・トランプさんで、相手から矛盾を突かれようとも、その話題に応えることなく、まったく異なる方面から相手を攻撃します。
『泣く子と地頭には勝てぬ』
と言いますが、『泣く子』と『地頭』を兼任しているような政治家に勝つのは容易ではありませんね。

それほどではなくても、こういうヒト、会社員人生でもたまに遭遇します。

「その新型バイクの開発計画ですが、予算の見積もりが少々甘いように思います。なぜなら……」
「予算? キミは金のことしか頭にないのか!」
「いえ、そうではなく……」
「じゃあ、キミは、金の工面さえつけば、ウチの会社がゴキブリ捕獲器であっても、開発すべきだとでも言うのかね!」
「え、ゴキブリ? まったく話が違いますが……ウチの会社は……」
「確かにウチはモビリティ企業だ。だがね、仮にウチの会社にゴキブリ捕獲機を作って欲しい、という依頼があったら、キミはどうする?」
「え、それはその……まずは……どれほどの利益が見込まれるかを見積もって……」
「そうだろう? まずは収益を見積もるべきじゃないかね? 予算うんぬんは二の次だろう!」
「まあ、それはそうですが……いや、だから、収益と開発コストを比較して……」
「またコストか! じゃあ、まず、ゴキブリ捕獲器の開発コストと収益を出してみたらどうだ!」

こうして、本来の議論から大きく逸れ、ロジックの迷路に入って行くことになる。

こうしたヒトたちがよく使う言葉は、
「仮に……だとしたら」
「例えば……の場合」
から、まったく別の論点に話をすり替えていくのです。


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