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晴旅雨筆(エッセイ)

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これまでの人生で書き散らしてきたノートの切れ端をちぎれ絵のように張り付けたエッセイ。本を読み、山に登り、酒を呑み、街を歩く。
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2021年2月の記事一覧

現実はSF小説にやすやすと追いつき、そして追い越していく (エッセイ)

「時代小説というのは、もうそれ以上古くならないからいいんですよ。──逆説的ですけどね」 かなり前のこと、とてつもなく弱い江戸化政期の相撲取りを小説に描いたことがある。時代考証に苦労したが、その時、編集者がそう言った。 なるほど、同じ頃に(当時の)現代を描いたコメディーには「ポケベル」なるものが登場するが、今や遠い昔の話になってしまった。 現在がどんどん古くなり、過去へと飛ばされていくのだから、未来だっていつまでも手付かずのままではいられない。 小説を書かなくなってしばらく