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審判員の裁量で判断する難しさ ~8/21 ポチのルールクイズ回答解説~

ドラゴンズファンにとっては目を覆いたくなる週末の3連戦が明けた。
移動日の月曜日。
変に意識はしない。
こういう時は、ルーティーンをこなすのがいい。

場所は神宮球場ではなく横浜スタジアム。
2塁上で試合の行方を左右するプレイが起きて、審判の判定にプロ野球ファンは賛否を唱えた。

順を追って丁寧に説明していこうと思う。


1. 起きた事実の確認

2023.08.18 (Fri) 横浜DeNAベイスターズ vs 阪神タイガース
9回表 阪神タイガースの攻撃
1死1塁
熊谷選手が盗塁し2塁上で京田選手がタッグ、2塁審はセーフの判定をした。
セーフ判定に横浜DeNAベイスターズの三浦監督がリクエストを行使した。

長いリクエスト検証。
リプレイ映像で湧くスタジアムにお茶の間。
(今やDAZNなどネットで観られる時代、お茶の間と限定するのもどうかと思うが。)

審判が検証を終えてバックネット裏から出てきた。
アウトかセーフか。
ジャッジの行く末が気になる周囲の期待とは裏腹に、
当日の責任審判である敷田審判員はジャッジの結論を言うでもなく、代表してマイクで説明を始めた。

「走者と野手が接触していますが、妨害とは致しません。よって、アウト。」(一部略)

覆った判定に当然納得がいかないのは阪神サイド。
本来、リクエストで決まった判定には異議を唱えることはできないが、岡田監督は”走塁妨害”をアピールして猛抗議。
しかし当然、現行ルール通りリクエストでの判定は再度覆らない。『アウト』で試合は再開された。

2. 責任審判による場内説明について

敷田審判員はジャッジの結論の前に説明を始めた。
色々な考えがあると思いますが、私は、順序立ててロジカルに説明すべきだったと感じた。

なぜか?

横浜のリクエストは、
「(タイミングが)アウトかどうか?」のリクエストであったはずだ。
なので現場で起きていたことは次のように推定される。

  1. 三浦監督からリクエストがあった。

  2. ビデオを見たらアウトだった。

  3. アウトだったからここで初めて『走塁妨害だったか?』を検証し始める。

  4. 映像を見ながら(←?※)審判が協議し、”妨害は無かった”と判断。

  5. よって最終的にアウトにした。

※妨害について映像を見ながら判断したのか(現行の取り決め上できるのか)、はたまた審判団が自分の目で見た情報をベースに協議したかは定かではない。

そう。
まず、アウトになった。そして、走塁妨害を検証した、という順番だから、いきなりマイクで妨害の話をし始めては。
よほど規則を知っていない限り、話の流れについてはいけまい。

3. 走塁妨害があったかどうか?

ここで、最も関心があると思われる点に触れていく。
まずは基本である、ルールの確認をしよう。

走塁妨害の規則原文

規則本文を読んだ上でプレイを見ると。
「京田選手はボールを捕球するプレイの最中」である。
よって規則の本文、
「野手がボールを持たないときか、あるいはボールを処理する行為をしていないときに、走者の走塁を妨げる行為」に対しては明確に当てはまらない。

なのでここまでのロジックでは、妨害無しと考えられる。

しかし、規則には【原注】がある。
ちょっと待て、話は最後まで聞け、というやつだ。
そこまで読むと、本当に妨害無しで良いのか、疑問が湧いてくる。

【原注】
「野手がこれ(送球)を受け止めるにふさわしい位置をしめなければならなくなった状態」

京田選手のプレイは、この文言に当てはまるのか否か?
みなさんはどのように思われますか?

京田選手が
 A. 捕球のため仕方なしにあの体勢になった(=自然な流れ)
 B. 捕球に必要ないにも関わらずあの体勢をとった(=故意)

Aなら仕方ないのでナッシング(=今回の判定)である。
しかしBなら故意なので走塁妨害になっていたと推測する。

ここで次に問題になるのは、
審判はどうやって、A or Bを協議し判断するのか?
皆さんならどうしますか?どうやって判断しますか?

客観的に観ている人が”中立”に、A自然な流れ or B故意でのブロックか判断するのは大変難しいことだと思います。

技術的な側面も当然考慮しつつ、
下記のイラストのように、どちらともいえないものを、何か判断理由を考えて推定しなければならないと、私は考えています。

注:絵は私が作った個の主観であり、正式にこのような理論がある訳ではないです。

判定の基準と選手意図の建て付けイメージ

難しい点は2つある。
 ① ルールブックに明確に基準は無い点 (原注の曖昧さよ)
 ② 京田選手の意図なんてもっと分からないこと点 (他人だから)

審判員は現行のルールをもとに、過去の判例、経験値から仮説を立てるしかないのだと推測します。

4. 審判員の判断は正しかった

話を横浜DeNAベイスターズvs阪神タイガースに戻そう。
審判は協議をして、結論として【妨害無し】と判断した。

私がこの雑記の中で最も言いたいことは次の一文だ。
此度の判定に【現行ルールの適用における落ち度は全くもって無かった】。
これだけは絶対に伝えたいことである。

なのでまとめると、
 ・判定は妥当も妥当
 ・だが人の数だけ意見が違って議論の余地があるのも妥当
なのである。

5. 将来のために考動をつづける大切さ

今回の一件、京田選手や審判の判断を的にして、一瞬の炎上をすることは全く生産性がない。
大事なのはここで終わりにせず、継続して議論をすることであるのは自明である。
何よりも選手が安全にプレイできるようにルールのあるべきを検討し、判断基準を明確にするために考え続けることが必要だと私は思う。

そんな想いを持っていたら嬉しいニュースが舞い込んできた。

記事から引用するとNPBは下記のような見解を持っていた。
そして意見書を提出した阪神タイガースも納得をしているようである。

記事から引用

6. さいごに ~いちソフトボール弱小審判の意見~

本来は順番が逆だ。笑

ソフトボール審判員(弱小3種)として活動するドラゴンズファンであり野球ファンであるという前提があるから、ルールの周知ができればよいという思いでクイズもしている。

僕は初Noteを自身の審判活動体験談にして華々しく(←勘違い)デビューし、手で数えるくらいのハートマークは貰うつもりだった。

ニワトリたまご理論で。先にたまごを書いてしまった。
順番がおもいっきり逆なのである。笑

言い訳は置いといて。私見を述べさせていただくと。

「僕なら、あれは走塁妨害を取りたい!
だって、タッグに行くまでの時間を体を入れてブロックして稼いでるんだから、印象悪すぎ!!
本来なら技術(タッチの速さ)でカバーすべき!!!
堂々とあれを妨害とってセーフにできるような、ルールの明文化をして、選手も審判さんも守れると良いなぁ!!」

急な口語表現、想いは、こんな感じだ。
でも、審判をやっていると、今回のケースのようなどちらとも取れる微妙な場面なんてのは、何回も発生する。
全部が明確なストライクorボールの2値化ではないのだ。
(その2値すら、境界を人間が判断するのは非常に難しいことである。)

そんな不満とも言えない、奥深さ、難しさを知って。
「あぁ、審判って。いたずらに批判できないなぁ。」
と思っていただける人がちょっとでも増えればいいなと思い。

そう、僕は。
ドラゴンズファンにとっては最高な週末だろうが最悪な週末だろうが。
明けた移動日の月曜日は。

変に意識はしない。
いつだって、ルーティーンをこなすのがいい。



7. 後記!9/5ルール改正発表!!

とっても嬉しいニュースが飛び込んできたので思わずキーボードを叩く!
8/18(金)の試合からたった18日後の9/5(火)。

(すごくない?僕の所属するリアルな社会の、検討⇒関係部署との調整⇒上司説明⇒修正⇒決済の回り方から推測しても、ちょっと尋常じゃない対応の速さよ?)

NPBだけの新ルールが爆誕した。

超信頼する元NPB審判の酒井さんがYouTubeで解説してくれた!

動画によると、重要なポイントは4つだ。

1."完全に"ベースを塞いでいた場合に適用される
2.タイミングがセーフだった場合適用される
  (ポイント:あくまで不利益を取り除くルールである)
3.新ルールは妨害ではない
  これ、めちゃポイント!
  妨害は故意でないと取れないが新ルールは故意ではなくても取れる!
4.国内のNPB限定のルールである
  (ポイント:国内でも社会人とか高校野球は今は適用しない!)

つまりこういうことだと思われます!

酒井さんが大変素晴らしいことをおっしゃっていました!

まだまだ新しいルールなので、議論が出てくるとは思うが、現状は説明した運用になります。このように日々ルールは変わっていくので、これからも説明していきたいと思います。

酒井さん 【新ルール】ブロッキングベースとは?【ルール解説】

いたずらに炎上して終わりではなくて、より良くするための建設的で合理的な議論をみんなであーだこーだ継続することが、選手を危険から守ったり、野球をさらに面白くしたり、するに違いないと僕は信じている!

最後に。

新ルール適用に至る経緯がある。
このような文脈だ。

阪神タイガースの意見書による提案と、それに即断即決で応えてルール改正を決断したNPBに賛辞を。

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