藤井風140字小説まとめ

Twitterに溢れている沢山の「140字小説」。ずっと書いてみたいと思いつつ、全く思いつきませんでした。ふと「藤井風140字小説」を書いてみたら、次々書けるではありませんか。それで不定期で書いておりました。
たまったのでまとめます。
他の方が書かれた面白い140字小説もありますので、興味のある方はTwitterでハッシュタグ「#藤井風140字小説」をご覧になってくださいね。
ハッシュタグを含めて140字の小説もあります。

--------------------------------

1
イブキは線路脇で抱きしめられてから風に片想いをしていた。彼女の飼い主は幸運にもバラベレン民だった。ある夜飼い主とHEHNのリリパを見ていたら風はあの時のようなダンディな男性ではなく緑ジャージを履いたお茶目な男だった。自分の顔が描かれたケーキを渡される風が映った。「え、それ食べるの…」（2020/6/22）

2
HEHN RECORDSにバイトで入った小林は次々来るヘン顔Tシャツの注文に辟易していた。いくら梱包しても終わらない。もう3日ほとんど寝ていなかった。「もう辞めたい。バイト代もいらんわ、もうええわ…」4日目の朝寝癖で髪の毛が爆発した風がやって来て小林に言った。「やれるだけやって後は任して」（2020/6/22）

--------------------------------

3
伊吹が女子高に行く前に昨晩の残り物のお好み焼きを食べていたら彼氏の風からLINEが来た。「すぐに来い」急ぎ家を出たら青さ粉が歯にはさがっていて風にふられた。その夜兄は「あん時車で送ろうか聞こうとしたらおまえもういなくて…」と謝った。伊吹は泣き叫んだ。「何で何も聞いてくれんかったん！」（2020/6/22）

--------------------------------

4
風は動画を撮るためにスーパーでじゃがりこを買ったが帰り道で転んで全部折ってしまった。買いなおしたがすれ違った人にぶつかってまた全て折れてしまった。「すれ違った人だって過去だって怖くない」再びスーパーに戻ると食品の危険性について客同士が話していた。「要らんことばっか聞かせんといて！」（2020/6/25）

--------------------------------

5
ユニ〇ロのレジの特許侵害疑惑を知って風は頭を抱えた。服に疎い彼はいつもユニ〇ロで買っていたが今回は許せなかった。 GUで買うことにしたが後で系列店だと知り更に混乱した。しまむらで買うより他なかった。「風君、モデルのオファーが来たよ！バレンシアガ！」風にはもう何がなんだかわからなかった。（2020/6/26）

--------------------------------

6
「風くん私のこと好き？」「春の熊くらい好きだよ」「私可愛い？」「山が崩れて海が干上がるくらい可愛い」「じゃあ私のお願いを二つ聞いてくれる？」「みっつ聞くよ」「『折り合い』を耳コピしてピアノアレンジして楽譜を私にちょうだい！」「べつにかまわないよ。僕は時間のあり余ってる人間だから」（2020/6/28）

--------------------------------

7
冷蔵庫を開けたらなにやらツンと来た。おっとカビの香り。気づいた時にはまだ早い。風は毎年梅雨時期に揚げにカビを生やしてしまっていたが今年はまだそれほど生えていない。バラベレン民がTwitterで教えてくれた冷凍保存という手もある。大丈夫だ。渇きなどない。わし満たされてる。（2020/6/29）

--------------------------------

8
私が病院に着替えを持って行ったら風は骨折した右腕を見せた。「絶対すぐ治る」あなたはすぐに絶対などと云う。「ギブスの写真撮って！」あなたはすぐに写真を撮りたがる。私は何時も其れを厭がるの。自撮りもしてるけどその写真ほとんどギブスじゃなくて自分の顔よね？ナルシスト。（2020/7/2）

--------------------------------

9
栄美はバーで自撮りをSNSに投稿した。独りで飲んでいるようだった。彼女を岡山に残して来た風は毎日投稿を確かめた。せめてもの優しさだった。だが今日は写真の栄美の瞳に同級生の河津が写っていた。風は栄美に1年ぶりに電話した。「風くん今何を見てた？」「あなたの目を見てた…」（2020/7/2）

--------------------------------

10
里庄町役場に殺害予告電話がかかって来た。電話は風の携帯に転送された。「藤井聡太か？」「なに？わしは藤井風じゃけれども。人違いじゃ」「何？どこの言葉を話している！」「岡山じゃが」「何を言ってるか分からん、もうええわ！」「何なんw」県警は脅迫容疑を視野に捜査している。（2020/7/3）

--------------------------------

11
「サカナクションの山口一郎さん、眠そうですね」「バッハの旋律を夜に聴いたせいです」「バッハが耳に残りましたか？」「踊っちゃって」「夜の踊り子ですね」「そう、忘れられないの」「最後に。2020年音楽界の一番の話題は何になりそうですか？」「う〜む。ルーキーで。多分、風」（2020/7/4）

--------------------------------

12
古山裕一(窪田正孝)はコロンブスレコードの喫茶室で新人作曲家の藤井風(藤井風)と会った。藤井は赤レコードに抜擢された新星だ。「ふ、藤井君せ、せ、背が高いね？ぼ、僕からエールを送るよ」そこに作曲家の木枯正人(野田洋次郎)がやって来て藤井に聞いた。「初めまして、君の名は？」（2020/7/5）

--------------------------------

13
風はWDMと揉めた。「なんでそんなにTV出演を渋るのさ、神秘性を求めずその端正で凛々しい美貌を露出しようよ！日本中を風くんの色気で悩殺しよう！」「調子のんないで」「鏡見てみな、その彫刻みたいな造形を見せびらかそう！今世紀最大のイケメンだよ？」「あなたの言葉はこの鼻を伸ばす…」（2020/7/7）

--------------------------------

14
「イケメンならポテサラぐらい自分で作ったらどうだ」と高齢男性に言われて風の心は折れた。風はいつも苦労してハムを抜いて食べていた。「俺」をほのめかしたらワシ派からは非難轟々、パンツ一丁で踊ったら親世代から「ちゃんとしろ！」と怒号が飛んだ。あぁ今日からどう生きてこう。（2020/7/11）

--------------------------------

15
伊吹はデート中にネックレスを失くした。それは風が買ってくれたホームセンターの風呂栓だった。「失くすなよと先がけてワシは言うたが」伊吹は人目を避けて涙を流した。その後アテスウェイでケーキを頼んだ伊吹は先ほどとは別人のように3個も食べた。「あの時の涙はなんじゃったん」（2020/7/11）

--------------------------------

16
太腿を叩いた音で太り気味だと風は気づいていた。「ほんの少しだけそれだけでふりだしに帰り得るな」ダイエットを決意した。帰宅すると同棲相手の林檎が高級アボカド油で大量の豆腐ハンバーグを焼いていた。風の24歳の誕生日だ。丸新本家の湯浅醤油の香ばしい香りが漂った。「逆らい難い嫌な匂い…」（2020/7/22）

--------------------------------

17
アレクサでHEHNを聴いていたら白い壁に不穏な黒い物体が見えた。アイコはスプレーを手に急遽立ち向かうことにした。『死ぬのがいいわ』がかかり始めた。アイコは歌いながらジリジリと近寄った。そして壁に向けて噴射した。「死ぬのがいいわ〜♪」歌の意味が変わっていくのを感じた。（2020/8/9）

--------------------------------

18
ずっずは柳宗理の鍋でパエリアを焼きアヒージョを披露した。ノンアルワインもあったが風は洗練されたミッドセンチュリーな部屋に落ち着かなかった。パーティーが終わって家に帰った風はパンツ一丁になって焼きそばを作ってフライパンごと食べた。食べ終わると上から鍋が落ちて来た。（2020/8/11）

--------------------------------

19
1997年6日11日、友達の結婚式の二次会出席のためアイコは神戸のカフェにいた。その夜他の友達と西宮の都ホテルに泊まった。悩みが多すぎて頭を抱えていた23年前のその日をアイコは鮮明に覚えている。そしてその3日後に世界は変わった。アイコがそれを知ったのは22年後のことだった。（2020/9/10）

お読みくださりありがとうございました。