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私が見ている藤井風はマボロシな件について

人は見えないモノに囚われている

以前、偏差値の高い大学出身のご夫婦の話をどこかで読んだ。妻が論文を書くためか何かの理由で旧姓に拘ったため、名前の為だけに離婚届けを出した。実生活は何も変えず籍だけを抜いたのだ。ところが姓が変わると夫の気持ちが離れてそのまま本当に離婚することになったという驚愕の話だった。
人は気づかないだけで意外なモノに囚われている。夫婦は2人ともまさか「姓」によって作られた絆だなんて思いもしなかったのだろう。

私は「星野源の才能を知っている数少ないファンの1人」だった

周りがまだ誰も星野源を知らなかった2011年頃、私は星野源が大好きでサカナクション山口一郎君との今はなきUstream「サケノサカナ」を観たりしていた。「サケノサカナ」とは友人関係である一郎くんと源さんの2人がトークをした番組の名前である。
源さんが「恋」でブレイクして以降私が興味を失ってしまったのは別に源さんの音楽が変わったのではなく私が愛していたのが「スターではない星野源」だったのだろう。人間は社会的な生き物だから純粋に星野源の音楽だけを聴くことが出来ない。私は源さんの音楽は好きでも「スター星野源」は好きではないのだ。それはおそらく「星野源という才能を知っている数少ないファンの1人」だという自負が満たされなくなったからなのだろう。

私は時々ヨーロッパ映画を劇場に観に行くが映画館に客は私1人だったりする。そしてそれは全く悲しくない。むしろ心地良い。日本に映画好きはたくさんいるがノルウェイ映画だのスウェーデン映画だのを観に行く人はとても少ない。しかし私や多くの欧州映画好きは「欧州映画の良さが分かる数少ない日本人の1人」という自負があるのだ。

私が好きなのは「スターになる藤井風」であるが・・・

そして藤井風をこよなく愛する私は「藤井風の良さが分かる数少ない1人」ではない。風氏は出会った頃(2020年春)から国民的アーティストの卵だった。私は最初から「近い将来世界にその名を轟かせる藤井風」が好きなのだ。
風氏はつむじ風のように瞬く間に頂上に登って行くだろう。私はそれを見ている。初めからそれが分かっている。私の楽しみは彼の知名度がどんどん上がり世間に周知される事なのだ。風氏を知った頃からずっとそれを待っている。「ね?風くんって素敵でしょう?」と言いたくてたまらない。

しかし好みは絶対的ではなくその時代や世の中に影響を受けるモノだから私が「藤井風をしぬほど好き」だと思っている感情は私と風氏の音楽だけの問題ではなく2020年というこの時と社会のあり方が作っている。私は藤井風の曲を聴くと当時に藤井風を好む人達の声を聴く。藤井風を好まない人の声も聴く。それらがアーティスト藤井風とファンの存在を作っている。私が「単体としての藤井風の音楽」を味わうには他のモノを全て遮断しなければならないのだ。

藤井風の曲が好き・・・だからじゃなくて?

私は新曲『へでもねーよ』と『青春病』を聴いた時とても混乱していた。シンプルに「良い」と思えなかった。あれから数週間が経ち実はおかしなことになっている。
昨日、新曲が「突然アーティストが変わったレベルで別のことをしてる」と評されているのを知った。
青春病 / 藤井風 を解説!プロも驚愕の事実とは!?【後編】

(だけじゃないchannelのFUJIくん、面白い解説をありがとうございました)
これにより自分の戸惑いも深く納得できたのだが、実は私は今も新曲2曲をあまり好きではない。『何なんw』のようにはしっくり来ない。しかし毎日狂ったように聴いている。なぜか?

聴かずにはいられないから!

風氏の曲を聴いていると私の脳内で快楽物質ドーパミンが放出されるからだ。驚いたがそれは曲が好きかどうかには関係ないらしい!なんてことだ!

「大好きなカッコいい藤井風」という幻

私が「好き」だと思っている藤井風氏の音楽と美しい風くんは、実は実在している藤井風そのものではなく周りの影響を大きく受けている実態のないモノである。その証拠に好きかどうか分からない曲によりドーパミンが出たりもしている。更に「藤井風はカッコいい」というのも自分で暗示をかけているに過ぎない。「絶対的な美」というモノは存在しない。美しさは国や時代によって変わる相対的なモノである。私は風ファン達と毎日Twitterで会話しているために「風くんはカッコいい」と毎日自分で刷り込んでいるだけなのだ。
つまり「大好きな世界一カッコいい垂れ目の美男アーティスト藤井風」はマボロシなのである。(ここで言う”マボロシ!”の“シ!”の音はDとD♯の間のちょうど真ん中というカラオケで採点できない未来の音です)



この記事はTwitterで呟いたことをnote用に書き直したものです。
写真:Fujii Kaze Staff Twitterより
最後の「マボロシ」に関する文章は藤井風氏本人のツイートより引用しました


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