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灯台のひと
【碧い世界のちいさなお話】
静かな月夜の海。
少年は海の向こうに見える、
あの色とりどりの光を求め、
暗く広い海をひとり、
進んで行くことにしました。
しかし荒波がやってきて、船はこわれ、
海に投げ出された少年は、
もがきもがき泳ぐことになります。
今にも、深い深い海の底へ飲み込まれそうになりながら、
それでも必死に息をして、
力の限り泳ぎます。
つかめる物があれば、
どんなにちいさな物でも手を伸ばし、
遠い遠い、あの光を目指すのでした。
しかし、たどり着くことはできません。
![](https://assets.st-note.com/img/1676897637688-v81pHZhSpC.jpg?width=1200)
どれほどの月日がたったことでしょう。
少年はいつしか、
ちいさな島の上の灯台になっていました。
暗く広い海で、
その明かりを頼りにする人はたくさんいました。
灯台があるおかげで、
船乗りは安心して
海を通ることができましたし、
船乗りの帰りを心細く待つ家族も、
その明かりがあるおかげで
心を落ち着かせることができるのでした。
少年はいつしか、
あの時目指していた光よりもずっと、
確かに灯る、
あたたかい光となっていたのです。
昼間は島の人々が灯台の下に集まり、
ごはんを広げ、
それはもう、にぎやかになります。
~灯る光に ゆらぐ波の音 潮風がはこぶ 島の恵み~
こどもたちは決まって、
この海の唄をうたうのです。
その声をきくことが何よりの楽しみでした。
灯台は広い海を、
遠くまで見渡せるようになっていました。
あの時目指していた色とりどりの光にも、
この島から信号を送ることができるようになっていました。
そして、あの時の少年のように、
ひとり、海の中をもがく者があれば、
広がる海に伝え、そっと光を当てるのです。
灯台は長い間、人々に愛され、
もう決して、ひとりではありませんでした。
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