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禍話リライト「先回りこっくりさん」

◆この話は、二次利用フリーな怪談ツイキャスの「禍話」を書き起こしたものです。

禍話X 第十五夜

(35:31頃~)




某月刊誌やテレビなどの影響もあってオカルトブーム全盛期だった頃のこと。
学校の七不思議やら都市伝説などが大いに学校を賑わせていた。
そんな中でも女子というものに欠かせないものが恋愛系統のおまじないだ。
それが結果としてマイナスなものになったりもするが基本的にする側は楽しんでするものである。
その中の一つにこっくりさん、というものがある。
漢字だと狐狗狸さんと書く。
漢字の通り動物の霊を呼び出すことによって占うという一種の降霊術だ。
やり方としてはまず紙とペンと十円玉を用意する。
用意した紙に上の方に鳥居とYES,NOと書きその下に五十音を並べる。
そしてこっくりさん、こっくりさんおいでくださいと唱えながら十円玉が動き出すのを待つ、というものだ。
それ以降も色々とルールがあるのだがこの話には必要ないため割愛する。
季節は丁度バレンタインが近づいた頃それもあったのか、そのこっくりさんがとある中学校で大流行していた。
誰も彼もが我先にと言わんばかりにしている中、あるクラスの女子グループがいた。
4、5人ほどのどこのクラスにもいるようなオカルト好きというかおまじないなどが好きな子たちである。
そんな彼女たちだから当然こっくりさんには興味津々であった。
ある日、登校してきた彼女らは両隣のクラスでこっくりさんをしたらしいと聞き遂に我慢できなくなったのか今日の放課後絶対やろう!という次第になった。
放課後さあやろうかと紙を用意して、十円玉を用意しようとすると誰も手持ちにないという。
昼に使ってしまっただとかお小遣い使い切っちゃった~だのとのたまうばかりである。
さて困ったとクラスを見渡すも誰もいない。
皆先に帰ったりだとか部活であったりだとかしてそこには彼女たちしかいなかったそうだ。
そのうちグループの中でもリーダー格であった一人(仮にAとする)が借りてくる!と言ってクラスを飛び出そうとした。
Aは何故かドアを開けたまま外に出ようとせずにまるでそこにいる誰かに話しかけているように見えた。
廊下には電灯がついておらず暗かったが誰かいるようには見えなかったという。
そして二言三言喋ると突然体の力がふっと抜けたように崩れ落ちた。
慌てたのはそれを静観していたグループの子たちである。
急いで駆け寄り声をかけたがまるで応答がない。
こりゃいかんと出来るだけ揺らさずにAを保健室へ運んだ。
幸いなことに崩れ落ちたことによる軽い怪我だけですんだという。
ここからはそのAが起きてから話してくれたことだ。
皆が十円玉がないと皆が騒いでいた時Aは丁度ドア側に目を向けていたらしい。
暗いながらも誰かが立っていることが分かったという。
ならあの子でいいかとばかりに、ちょっと借りてくるとだけ言って教室のドアを開けたそうだ。
そうしてみるとやはり誰かがそこにいて、クラス側とちょうど反対になるように廊下の窓から校庭を眺めているかのようだったという。
この時期であるから誰か好きな人がいて部活中のその人でも見ているのかな?と思って少し気後れしたが声をかけてみた。
「あのう、ちょっと悪いんだけどさ、十円玉持ってない?もしあったら貸してほしいんだけど…明日返すからさ、お願い!」
その子はめんどくさそうに振り向くとこう言ったという。
「あのねぇ、カワサキ君が一方的に好きなだけ」
「え?」
「だからぁ、カワサキ君が一方的に好きなだけ!」
ようやく暗さに目が慣れたAはそこでその子の顔をしっかり見たという。
目が普通の位置よりもズレていた。
まるで福笑いで鼻側によらせ過ぎたかのように、もしくは写真加工アプリなどでいじっている最中に手が変な方向へズレたかのようだったという。
その瞬間意識が切れてしまったらしい。
その後グループの一人がカワサキ君のことを憎からず思っていたためこっくりさんに聞いてみようと思っていたと打ち明けた。
少し怖くなった彼女たちはそれからこっくりさんをしなくなったという。


八十年代の関西の中学校で起きた話である。


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