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宝石の国107話までの感想というか脳内整理メモ


107話まで一気読みをしまして、複雑なストーリーを自分の中で整理するために書く
(深夜に3〜4時間で読みきったため、見落としがきっとたくさんあります。自分の脳内整理用なので許して)

宝石…
人間滅亡後に地球に表れた知的種族。
基本的に1種1人で、繁殖能力も持たない、食事も育児も不要なことから、本来は集団生活をしない(社会性のない)生物だと思われる。

なめくじ…
人間滅亡後に地球に表れた知的種族。
食事が必要で、繁殖する。社会性がある。

月人…
滅亡した人間の魂が、成仏できず月を仮住まいとしている状態。
この世界で成仏するには、他者の祈りが必要らしく(最後の1人どうするねん←そのために祈りを外注できるシステムが作られた)

先生…
ありし日の人間が作った、祈るための機械。
想定通りに稼働すれば、最後の1人まで残らず人類を解脱させられるのだと思う。
人間との集団生活に適応したシステムを持っており、彼が人間に似た異種族を人間プロトコルで生活させようとしたことで、大変なことに(?)

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読みながら「フォス、ともだち頼れ〜」と思っていたけど、もともと宝石は集団生活をしない種(だよね、たぶん)なので、協調性がないのはそりゃ仕方がない。

「フォスが祈ってなんとか解決できんのか」とも思いましたが、宝石はおそらく他者のために祈ることもできないのだろう。
本来、広漠とした地球を1個体でぼんやりさまよう、みたいな生態を持つ種のはずだ。

宝石同士が触れ合うと、硬度の差で削れる(さらに全身が記憶装置となっていて、削れると個の同一を保持できない)みたいな設定があることからも、群れを作る生き物ではないはず。

それが、人間の遺物に洗脳され(あえて洗脳と呼ぶ)、人間の後始末に巻き込まれたために、悲劇が起きるわけなのですね。

彼らはほぼ不老不死で種を反映させる本能も持たないため、将来のことを考える必要がない。
そのため、先生も宝石たちも、長期的なものの見方ができず現状維持的で保守的。
目の前の敵に対処できればよく「敵はなぜ襲ってくるのか?」などの、根本的な解決に至る道筋を考察する個体は少ない。

フォスは、彼らの穏やかでその場しのぎな日々を破壊する異端者なのですが、宝石は他者への共感が苦手なうえ保守的なので、十分な支持者を得ることができず、ひとりで革命を成し遂げるほどの強さはなく、おかしくなっていき、苦行じみた生を送ることになり、最終的に宝石の身でありながら祈りを会得し、他者を解脱させることができるようになる。

って書いてみるとフォス、滅亡種族のあとしまつへの、巻き込まれ方がえぐくてかわいそう。
自分にできることを探していたけど、1万年の苦行は激しすぎるじゃろがい

個人的には、宝石たちの未熟な社会性に加え、先生の指導力のなさがまた悲劇という印象があった。
先生も宝石も、お互いに役割を与えるため依存しあっており、自立した精神の持ち主がいない。
傀儡の指導者に飼い慣らされた、少年兵のキャンプをみているかのようだ。
対話や社会を教えてくれる大人は不在で、戦うことだけが、仲間との日常を守る唯一の手段だと教えられている。

人間社会を真似る異種族を俯瞰することで、人間の愚かさと尊さが浮かび上がるタイプのSFなのだなあと思いました。
人間は愚かだが、弱いからこそ共感と連帯でシナジーを生むことができる面もあり。

フォスには石の友達ができてよかったよね。あっちのほうが、宝石の本来のあり方に近そうだよね。

こんな一般受けしなさそうなストーリーが広く読まれているのは、ビジュアルの力が強いなあと思う。
きらきらの髪、無性の幼い美形たち、美しいボディラインを強調する衣装、それをためらいなく破壊する戦闘シーン、東洋の美術品に似た敵の攻撃兵器・・・

ふしぎな漫画だなあと思います。