シュレディンガーのイヌ

どーも、好きなキャラクターはスヌーピーです。

というわけで、毛がある動物が嫌いである。
パンダやらトラやらの観賞用は問題ないが、直に触れる機会のある飼育用はどうにも触れたくない。

「ハゲ薬飲んでるくせに何言ってんだこの野郎!」というご意見には申し訳ないが、昔からそうなのだから仕方ない。

まず、小学生の時に公園で遊んでいたら、いきなり凶暴化したおイヌ様に友達が顔面を咬まれたという事件が起きた。
友達は病院送りになり、次の日も学校を休んでしまったという恐怖の思い出である。

今じゃ問答無用で加害犬は保健所送りに処されるのではないかと思うが、飼い主のおっさんは「うちの犬がわりーね」くらいでいたように思う。
幼い小学生からしたら人生に遺恨を残すレベルの恐ろしさで、バイオハザードでケルベロス(ゾンビ犬)が出てきた際に発狂しかけるくらい、おれのピュアハートにグサリとトラウマができてしまった。

また中学生の頃、学校帰りに親友の家に寄ってテレビを見たりゲームをしたりダラダラと過ごしていたのだが、そこの飼い犬がやたら毛の長いおイヌ様だった。
四足歩行のイエティみたいな出立ちで、何かあった中高生の如く前髪を異様に垂らし、ワウワウ吠えていた。

そいつは大型犬で外で飼っているにも関わらず、やたら家に入ってくるヤツだった。
中学生の最大限オシャレであるダッフルコート(下は青ジャージ)に、その老婆の抜け毛の如く白くわっさりとした毛が大量にくっついてしまい、帰る前に毛を落とすのが大変だったのである。
「おれのオシャレ着に何してんだっぺよ」と、犬に向けた怒りが嫌いに拍車をかけていった。

また高校生の頃に、家族の話し合いでおイヌ様を飼うこととなった。
無論おれは孤立無援の抵抗勢力として、絶対にアカン、みんなで旅行も行けなくなる、家が臭くなってしまう、と涙と鼻水混じりに説得を試みたが、多勢に無勢、民主的議論により、マイノリティの切なる願いは封殺されたのだった。

ただし、一つだけ約束をした。
1人でも嫌な思いをするのだから、外で飼えと。
向こうは玄関に犬小屋を置くと言ったので、こちらも譲歩し、その運用ルールで飼うことが決まった。

アホみたいに可愛がる家族を横目に、オマエラはコイツの怖さがわかっていない、油断したら咬まれるぞ、勝負服に毛がつくぞと1人孤独に家族の安否を心配していた。
たった1人の戦いを今でも誇りに思う。

そんなある日のことである。

学校から帰宅した際に、いつもの家と異なる不穏なオーラを感じた。
家族は誰もおらず、玄関で犬がハァハァと真顔でこちらを見ているが無視して自分の部屋に入った。

異様なオーラは続いている。
朝、家を出るまでにはなかった感覚だ。
カバンを置き、辺りを見る。
朝と異なる点を、少しでも変わった点をしばらく探した。

それはおれのベッドの上にあった。
まさかのモノだったので見落としかけたが、なんと、ウンコが布団の上にあったのである。

うちの家族にボケてしまった者はいないし、おれも寝グソして気付かないほどアホではない。
そうなると犯人(?)はアイツしかいない。

後にも先にも犬を触ったのはその時だけであるが、玄関にいた犬を外に放った。(気持ち的には投げたと言いたい)
犬は自由を手に入れたと勘違いしたのか、どこかに走って行ってしまった。

ここで動物虐待ではないか?
という動物愛護なご意見もあるかと推察されるが、日々精神的虐待、人権侵害を受けていたのはおれであり、溜まりきったストレスが飽和した結果のこの行動(=放つ)だったのである。

ジャイアンの暴力に耐えかねてのび太が反撃したところ、コイツが暴力を振るったと触れ回るスネ夫的振る舞いは、ドラえもんのいないおれにとっては助けてくれる者のいない当時の状況と一緒になるため控えていただけると幸いである。
できればクルーザーに乗せてくれるスネ夫とお近付きになりたい。

閑話休題。

ノンキに帰ってきたかーちゃんは、「〇〇ちゃんがいない」とおれに聞いて来た。
「玄関で飼うという約束を破った、おれの部屋を見てみろ」と告げた。

早く片付けたくても触れたくもないおイヌ様のウンコにかーちゃんは気付き、不貞腐れたように謝罪をしてきた。
「で、〇〇ちゃんは?」と言うので、「早く片付けろ!そして外に行ったわ!」と返した。
外に探しに行ったかーちゃんを許せず、おれは家にカギをかけ籠城をキメ込むという結果に至った。

ちなみにその後は、おれが一人暮らしで家を出たということもあり、なし崩し的に家の中で飼われるようになっていた。
1人は都落ち、1匹は残された家族を懐柔し、一国の長の如く振舞っていた。
この平成の源平合戦、その後、おイヌ様が亡くなるまで隆盛は留まることなく、おれは地元より田舎な山の上で砂を噛む思いで過ごすこととなった。

実家に帰った際は、おれは床、ヤツはとーちゃんと共にソファが定位置である。
全く絡むことがないよう「いないいないいないぃぃぃっっ」と思い込むことに徹した。
また一つ、おれの動物嫌いに拍車がかかったのである。

この小中高の3連コンボにより、犬だけには触らないようにしている。
牧場に行って馬に乗ったり、ヤギにエサをやったり、牛の乳を搾ったりなどは、心を無に、ハイジの気持ちを作ることによって問題なく振る舞うことができるようになった。

友達や仕事で関わる方々が「犬飼いたい」「犬最高!」という話をされる際も「イヌ、カワイイデスヨネ」と返すことができる。
顔で笑っているが、心で泣いている。
本音を隠さなければ生きていけない、世知辛い世の中なのである。

※本稿は本当はネコのことを書こうと思っていたが、イヌの勢いに押された結果、全く出てこなかったため、いつかどこかで書きたいと思う。
(タイトルを変更しました)

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