インターヴィーン #3
放課後、生徒の姿がまばらな通学路。
公人はひとりで下校していた。
バス停をすぎた先で「きゃああ!」という悲鳴が聞こえた。
とっさに声のした路地へ走った。
「!?」
マンションの駐車場に青ざめた顔をした詩織の姿があった。
学生鞄が転がっている。。
すぐ近くに好雄がうずくまっていた。
「あいつ、写真で飽き足らずに詩織を襲ったのか!!」
公人はカッと火がついた。。
好雄のシャツを掴んで力づくで立たせる。
拳を振りかぶった。
「うわわわっ!」
「えっ、公人!?」
突然あらわれた公人にふたりとも固まっている。
「見損なったぞ、好雄!」
「ちがうのよ!」
詩織があわてて止めに入った。
「体にわからせないとダメなんだ。二度と詩織に近づけないようにしてやる!」
「バカッ! 好雄くんは私を助けてくれたのよ!!」
「へっ? ……襲ったんじゃなくて?」
「だからいってるでしょ。二人組の不良に絡まれてたのを助けてくれたの。好雄くんがいなかったら危なかったわ」
「そうだったのか。すまん、好雄」
公人は掴んでいた手を放した。
「はやとちりね、公人」
「いててて……もう一発殴られるかと思ったぜ」
地面にすわりこんだ好雄の顔にはすでに殴られた痕があった。
鼻血が垂れる。
「大丈夫、好雄くん? これを使ってちょうだい」
詩織はスカートのポケットからハンカチを取り出すと、しゃがんで好雄の顔に当てた。
心配そうに見つめている。
「詩織ちゃんのハンカチが汚れちゃうよ」
「それより好雄くんのケガが心配だわ」
「これぐらいたいしたことないよ」
「他に痛む場所はない?」
「ほんと平気平気」
「好雄くんってとても勇気があるのね。不良相手に一歩も引かないんだもの。見直しちゃった、私」
「へへっ、詩織ちゃんが危ないって思ったら考えるより先に体が動いてたんだよね」
「危険だわ。次からは自分の安全も考えてね」
詩織は感動した様子で話しかける。
最悪の場合、人気のない場所に連れ込まれて乱暴されていたかもしれない。好雄は命の恩人なのだ。
「不良たちはどこだ?」
公人が辺りを見回す。
遠巻きに野次馬が集まってきた。
「騒ぎを聞いた人が警察を呼んで逃げたみたい」
「あいつら、他校の生徒だよ。例の雑誌を見てきたんだよきっと。詩織ちゃんファンは学校外にも大勢いるし」
好雄が状況を説明した。
「詩織の帰りを待ち伏せしてたわけか。物騒な話だな」
「私の腕を引っ張って、路地に連れていかれたの。ほんと好雄くんのおかげだわ。それで殴られたのよ」
「やるじゃん、好雄。俺からも礼をいうよ」
「へへっ、女子を守るのは男の役目だろ。詩織ちゃんのためなら火の中水の中だよ」
「ねえ、立てる?」
「この通り。ピンピンさ」
立ち上がった好雄は元気をアピールするように頭をかいて笑った。
公人は地面に落ちていた荷物を拾って渡す。
遠くからパトカーのサイレンが近づいてきた。
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