湯用浴衣を作る話【前編】

旅館などで提供されている浴衣は湯用浴衣といい、一般的な浴衣とは構造を異にしている。具体的には筒袖つつそで身八みやつなし、サイズ対応のために反物幅いっぱいにして作成するなど、リラックスウェアとしての役割を全うできるよう工夫されている。そこに一般的な着物にありがちなマナーやルールは、ほぼないと言ってよいだろう。

そんな湯用浴衣を寝巻きにして、そろそろ1年になる。冬は下に長袖やタイツを着るのである。なかなか便利でかわいいので、自分用にこれの作り方を軽くメモして置こうと思う。

裁断

和服の裁断は洋服とは違い、反物を右から左に送り込んで2次元的に行う。この際柄合わせというか、上前うわまえの膝元や肩のあたりに特徴的な模様が来るように調節することが多い。

裁断の様子。手前のものは1枚目の湯用浴衣。
奥の紺色の反物を今回裁断。
定規を忘れたため、1枚目の浴衣を活用して
裁断を行っている。

布端を右に起き、そこから用尺ようじゃく……まずは上前(左身頃)から柄を見ながら設定する。今回はそこまで悪くなかったので、そのまま上前を取ることにし、その次に下前(右身頃)を設定する。この際、右端に重しを置いて背中を仮に合わせて見ることで、柄が左身頃に向かって下がるようにし、背縫せぬい(背正中線)をどっちにするか決める。こういうフレキシブルさが和服の良いところ(小紋こもん色無地いろむじなど限定。付け下げや訪問着や留袖は異なる)だと思う。

同じ要領で袖(2つ)、おくみ(半巾に裁って2枚なので用尺1枚取ればよい)、えりを取る。私は衽の柄だけ気にするようにしている。何故かと言うと、衿の柄を気にしても半衿で隠れてしまうからだ。半衿はんえりが衿本体より長いことはないため、柄の調整がある程度効くから、衿の柄はあまり気にして裁断していない。衽の柄は、上前の膝元に設定した模様より7〜10cmくらい下に設定してあるとバランスが良いと思う。

背縫いをする

背縫いが済んで縫い合わさった左右の身頃。
とても見づらい。

背縫いを決めたらすぐ糸で印をつける。この時糸端が出ている方が表というルールがある。また背縫い側端に寄せて耳に平行に糸印をつける。これですぐどちらが表で背縫い側なのかがわかるというカラクリである。
背縫いをするにあたり、生地を中表なかおもてに合わせて縫うのだが、私はいをするために下前を5mmほどはみ出させて縫う。この製作では折り伏せ縫いや袋縫ふくろぬいを、洗濯機で湯用浴衣をガンガン洗うためのテクニックとして多用している。また基本ミシン縫いである。

また洗濯するということで言えば、綿は水で縮む性質がある。そのため多少縮んでも着られるように工夫して製作する必要がある。
一般的な浴衣では腰揚こしあげを設定することが多いが、私は縮み用に裾揚すそあげ10cmしか取っていない。

そして和服のルールとして、背縫いを上前が下前に乗っかるように作製するというルールがあるため、表から見た時に上前に折り伏せの縫い目が出るようにする。このルールは背縫いだけでなく着物の前の合わせでも左が上になるように決められており、日本の伝統的なしきたりで左上右下さじょううげと言われる。

疲れた。また次回。

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