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ロックダウンとは何か(NYからのレポート)

 小池知事がロックダウンの可能性を示唆した。

 諸外国の大都市と比べて圧倒的に東京都の対応が緩かったのは事実だし、小池知事から一定の危機感の共有を図る会見を行ったことは評価しつつも、なぜロックダウンが必要か実際ロックダウンになったらどういった影響が出るのかなど不安になることも多いと思う。
 ロックダウンとは何か、現在コロンビア大学に留学しNY滞在中のPMI理事田中が、一足先にロックダウンを経験しているここNYからレポートしたい。

 ロックダウンの正確な定義は良く分からないが、小池さんの会見を見るに、外出禁止令やレストラン等の営業停止、最終的には他都市との移動制限を念頭に置いたものではないかと思う(そしてそれは諸外国の大都市が実施している取組とほぼ同じだ)。
 NYでは、爆発的感染を受けて3月半ばから事実上のロックダウン状態となった。ここでいうロックダウンは基本的に外出禁止と都市内での移動制限要請で、他都市との移動制限にはまだ至っていない(ただしNY市からの移動者には2週間の自主隔離が求められている)。

 正直中にいる身としては、ちょっと前まで危機感をほとんど持っていなかった。暖かくなってきたし公園ででも過ごしてたらいいかなぁと思っていた程度だった。
 ところが、ここ数日で坂を転げ落ちるように状況が悪化し、気がつけばロックダウンに近い状態になっていた。3月9日には19人しかいなかった感染者が、一週間後の16日には463人、その一週間後の23日には12,339人まで増えている。コロナ気をつけようね~と注意喚起がなされた翌日に緊急事態宣言が出され、その翌日には外出制限がなされる、そんなスピード感だった。


 ちょっと時系列にそって整理してみたい。
※ 人口:東京都927万人、NY市862万人、NY州1,954万人

3/9 感染者(市)19人/(州)142人
・大学のオンライン授業がスタート
・一般的な注意喚起(手洗いうがいなど)あり

3/10 感染者(市)36人/(州)173人
・大規模な感染が起きた一部のエリアを封鎖

3/11 感染者(市)52人/(州)216人

3/12 感染者(市)95人/(州)325人
・市が非常事態宣言を発出
・ブロードウエイの全ての劇場,メトロポリタンオペラ劇場,カーネギーホールは全ての公演の中止を発表

3/13 感染者(市)154人/(州)421人
・トランプ大統領が国家非常事態を宣言
・ドライブスルー型の検査施設を設置

3/14 感染者(市)269人/(州)613人
・欧州26カ国からの入国禁止措置
・NY州での初めての死者確認

3/15 感染者(市)329人/(州)729人
・州職員に対して在宅勤務命令
・死者4名に増加

3/16 感染者(市)463人/(州)950人
・市長がレストラン、バー、カフェは持ち帰り(take out)か宅配(delivery)のみの営業に制限する旨宣言
ナイトクラブ,映画館,小劇場,コンサート会場は閉鎖すべしとする行政命令に署名することを発表

3/17 感染者(市)814人/(州)1,544人
・市長から屋内避難令の可能性を検討している旨発言あり

3/18 感染者(市)1,871人/(州)2,914人
・トランプ大統領は記者会見で、米国とカナダの国境を一時閉鎖する旨発表
・1,000程度の病床を提供可能な海軍病院船(USNS Comfort)のNY港派遣が決定
・州知事は、全業種で労働者の50%以上を出勤させてはならないという行政命令を3月20日(金)に発動すると発表

3/19 感染者(市)3,615人/(州)5,298人
・米国務省国民に対してすべての海外渡航を中止するよう勧告
・市長は引き続き屋内避難令の可能性を検討するも、州知事はまだ検討しないとの立場

3/20 感染者(市)5,151人/(州)8,516人
・州知事は、在宅勤務の義務付け及びできる限りの自宅待機を要請する行政命令を出すことを発表

3/21 感染者(市)7,530人/(州)10,372人
・トランプ政権はNY州に大規模災害宣言を発出
・一部の学校施設が病床に転換

3/22 感染者(市)9,654人/(州)15,168人
・州知事からこの状況が4か月から9か月程度継続することを想定する旨発言あり

3/23 感染者(市)12,339人/(州)20,909人
・必要不可欠な業種を除く全ての事業体及び非営利団体は可能な限り在宅勤務を活用し,雇用主は原則として業務現場で勤務する人員を100%削減することを命じた行政命令が発効
NY州からの国内旅行者に14日の隔離を要請

3/24 感染者(市)14,904人/(州)25,665人
・市長より「未だ公園で集まっている市民がいるが、この状況が続くのであれば、公園閉鎖などの更なる決断を下さざるを得ない。」との発言あり
・自転車での移動促進のためシティバイク(自転車シェアサービス)について30日間の無料使用期間を設ける予定

3/25 感染者(市)17,856人/(州)30,811人
・州知事より、NY州の感染者数のピークはこれから2週間から3週間後を想定する旨発言あり

3/26 感染者(市)21,873人/(州)37,258人 

3/27 感染者(市)25,573人/(州)44,870人 
・トランプ大統領はGDPの約1割に当たる237兆円規模の家計への現金給付や企業支援のための大型経済対策法案に署名

3/28 感染者(市)29,158人/(州)52,318人
 
3/29 感染者(市)32,308人/(州)59,513人 ←NEW!
・州知事より自宅待機について、4月15日まで延期する旨発表

 東京の類型感染者数は200名程度だと思うので、NY市でいう3月13日前後。NY市の場合、特に3月17日以降の伸びがすさまじい。ほぼ毎日2倍ずつ増えている。

感染者推移

 検査キットも足りていないようなので、今の数値はおそらく物理的に把握できるMAXの感染者数であって、隠れ感染者がどれくらいいるのかは正直分からない(なお州知事は、最終的に全州民の40%~80%が感染すると言っている)。
 結局感染しても多くの人は軽症で済む(もしくは自覚症状すらない)一方、感染が広がれば広がるほど重症化数も増えるわけで、今NYで起きているのは重症患者用の病床と人工呼吸器が圧倒的に足りていないという状況のようだ(NYには4000台の人工呼吸器があるそうだが、このペースで重症の患者が増えれば、最大4万台が必要になるとのこと。結果テスラなど民間企業が人工呼吸器の製造に乗り出している)。

こうした医療現場の現状についてとてもいい動画があったので共有したい。NYの医療現場で何が起きているのかお分かりいただけると思う(自分が間接的にNYの医療機関で働く知り合いから聞いた話とほぼ一緒だった)。
https://www.youtube.com/watch?v=pGKWARC56Ws

 州レベルでは1日100人の死者が出ている。累計ではNY州で385人が亡くなっている。知事や市長が医療崩壊に言及し始めるなど、状況は日に日に切迫している。一部では重症化すればNYでは助からないとも言われている。なのでとにかく感染者を減らすこと、そのためには人間と人間の接触を極限まで減らすことこれがロックダウンの最大の目的だと理解している。

 NYと全く同じ基準を当てはめるのもナンセンスだが、NY市は感染者が400名を超えた3月16日時点でレストラン等の営業停止を命じている(持ち帰りのみOK)。もし同じペースで東京の感染者が続いた場合、数日後には東京がロックダウンされる可能性もある。

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↑レストランは持ち帰りのみ。席は片付けられている。 

 なお肝心のロックダウンについては、
①州民サービスに必要不可欠な機能に従事する者以外の全労働者は在宅勤務とする。
自宅に留まり,戸外の活動を真に必要な活動に限る。
・公共交通機関をできる限り使わない。
必要不可欠な食料品等の買い物は可能とする。
④レストラン(持ち帰り・宅配のみ)、食料品店,薬局,医療機関、ガソリンスタンド、ドライクリーニング、郵便局、公共交通機関などの必要機関・店舗の営業は継続する。
⑤屋外の散歩や自然の中で運動はできるが,基本的には単独行動で、他の人から6フィート(約1.8m)の距離を保つ
⑥緊急ではない限り,(同居していない)家族や友人と会うのはどのような規模であっても控える
と、端的にいえばひたすら自宅で過ごすよう奨励される。
 少し前までは公園に行けばたむろする若者がいたが、3月24日に州知事が激怒して厳戒態勢を敷いたので、今では巡回する警察官も見られ、屋外を出歩く人を見かける機会は圧倒的に減ったように思う。

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 なお、食料品は一時混乱も見られたが、今のところスーパーには供給され続けているし、自宅に一日いないといけない点を除いてクリティカルに支障はない。ただし中にいる人数を制限しているので行列ができている。

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 一番気になるのは当然ながら経済への影響。
 文字通り全てのレストランやサービス業が閉業を強いられており、すでに従業員に解雇を言い渡した企業も増えてきている
 Bloombergによると米国全体では失業保険申請者数が過去最多の328万件前週より300万人増加。1982年10月の過去最高69万5千件を大幅に上回る水準)に上ったそうである。そもそもニューヨーク市民の約4割は収入を失った場合翌月の家賃が支払えないと言われており、ホームレスの増加も見込まれる。
 トランプ大統領はこのままでは国が亡びると早期の経済活動の再開に言及するが、今のNYの現状を見ているといつに元の生活に戻れるのかまるで想像がつかない。なお、現行法上東京都が出来るのは自粛要請までで、NYのように強制的に全店舗を閉じたりすることはできない。それでも、いざコロナが蔓延したとき、これまで通りの経済活動が続くとも考えにくい。

 感染予防もそうだが、今はいかにNYの狭い空間の中で家族3人落ち着いて暮らしていけるか、安定した精神状態を保てるか試行錯誤を重ねる日々である。
 
 最後に、今回のレポートは相当程度在NY総領事館からの情報提供を参考にさせてもらっている。先日総領事館が入るビルからもコロナ感染者が出たらしい。厳しい状況の中情報提供を続けてくださる職員のみなさんに全力で感謝を送りたいと思う。本当にありがとうございます。


Public Meets Innovation 理事 田中 佑典

1989年奈良県生まれ。京都大学卒業後、総務省入省。長野県、外務省での勤務を経たのち、総務省において、シェアリングエコノミーの社会実装をはじめとする人口減少下の持続可能な社会を実現するための企画・立案に従事。現在、米国コロンビア大学修士課程に在籍中(公共政策学)。2019年世界経済フォーラム Global Shapersに選出。


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ミレニアル世代を中心とした国家公務員、政治家、弁護士などのパブリックセクターとスタートアップや研究・教育機関のイノベーターらが協働し、日本が抱える社会課題に 対してイノベーションがどのように社会に機能・実装しうるかを考えるコミュニティ。HP: https://pmi.or.jp/

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