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創業融資だけではもったいない|痒い所に手が届く日本政策金融公庫との付き合い方

こんにちは。
元銀行員で財務コンサルタントの岩瀬です。

「日本政策金融公庫と言えば創業融資」

そういうイメージを持っている方も多いかも知れません。
もちろん創業融資で利用することも多いですが、それだけではない日本政策金融公庫(以下、「公庫」と言います)の特徴をお伝えしたいと思います。


日本政策金融公庫の特徴

基本理念

まずは公庫の基本理念を紹介します。

政策金融の的確な実施

国の政策の下、民間金融機関の補完を旨としつつ、社会のニーズに対応して、種々の手法により、政策金融を機動的に実施する。

公庫のHPより抜粋

この基本理念を知っていると公庫との上手な付き合い方が見えてくるため、頭の片隅にでも置いておいてください。

では、公庫の特徴を説明していきます。

①創業融資に強い

審査する人の気持ちになってほしいのですが、創業融資の審査は相当難しいです(創業計画通りに行くかどうかなんて、はっきり言って誰にも分かりません)。
民間金融機関なら信用保証協会の保証付き融資が基本で、余程の理由がない限りプロパー融資は考えられません。

この感覚は公庫でも同じです。
ただ、公庫には「国の政策の下、民間金融機関の補完を旨とし」という基本理念があります。

「公庫の創業融資は簡単(審査が緩い)」と言われることもありますが、そうではないです。
創業融資の審査は難しく、リスクが高いことは公庫も分かっていますが、公庫がやらなければ誰もやらないため、敢えてリスクを取って融資しているわけです。

②審査基準が異なる

(ほとんどの)民間金融機関は信用保証協会の保証付き融資が基本です(つまりどの銀行に行っても信用保証協会が審査します)。
そして、今はなくなりましたが以前は国が作った審査の手引きみたいなもの(金融検査マニュアル)に基づいて審査を行っていました(今もあまり変わっていない銀行も多いです)。

それに対して公庫の融資は基本的にすべてプロパー融資です。
そして、先ほども出ましたが「国の政策の下、民間金融機関の補完を旨とし」という基本理念があるため、民間金融機関と審査基準が異なります。

どこがどう違うのか正確なことは言えませんが、民間金融機関では融資を断られたのに公庫では受けれた、逆に公庫では断られたのに民間金融機関では受けれた、ということを何度も経験しています。

③信用保証協会の保証枠を使わない

信用保証協会の保証付き融資には限度額(無担保8000万、有担保2億)があります(コロナ融資などはこの限度額とは「別枠」とされています)。
それに対して公庫の融資は基本的にすべてプロパー融資です。

事業規模が小さいうちは8000万もあれば十分ですが、年商が数億円を超えるようになると保証枠が足りなくなります。
保証枠を超える部分はプロパー融資を受けるしかないため、事業規模が大きくなる前にプロパー融資を受けられるような決算内容にしないと困ってしまいます(そうなってしまう企業も多いです)。

そこで利用を検討したいのが公庫です。
銀行に融資の相談に行くと、取り敢えず保証枠を限度額まで利用することになります(わざわざプロパー融資や公庫の利用を薦めてはくれません)。
そして、保証枠を限度額まで利用してからプロパー融資の相談に行くと、融資を受けられるか、受けられないか、の2択になってしまいます。

そうならないためにも、保証枠を4000万~5000万くらい利用した段階でプロパー融資や公庫の利用を検討することを薦めています。
うまく行けばプロパー融資を受けられますし、ダメでもまだ保証枠が残っているからです(保証付き融資なら受けられる)。

④プロパー融資の足掛かり

保証付き融資はすごく雑に言ってしまえば信用保証協会の審査さえ通れば融資を受けられます(少なくとも銀行の担当者はそのくらいの感覚です)。

それに対してプロパー融資は、銀行の担当者にとっては保証付き融資の10倍以上は大変です(特に初めてプロパー融資を受ける企業のときは大変です)。
企業との条件交渉だけでなく、本部の審査担当者から重箱の隅をつつくようなツッコミも入りますが、粘り強く対応しなければなりません。

そんなときに心強いのが公庫です。
何度も繰り返しますが、公庫には「国の政策の下、民間金融機関の補完を旨とし」という基本理念があります。
見方を変えると、「公庫はメインバンクにはなりたくない。できれば、メインバンクと一緒に協調融資(複数の銀行から同時に融資を受けること)をしたい。」と言うことなんです。

これまでに全国の公庫の担当者から、「メインバンクはどうするんですか?メインバンクが融資するなら公庫も融資します。」といったことを何度も言われました。

このような公庫とのやり取りをメインバンクとの交渉材料にすることで、メインバンクからのプロパー融資が受けやすくなります(公庫もそれを望んでいます)。

⑤貸し渋り対策

上記の「④プロパー融資の足掛かり」とは逆のようなケースで、コロナの影響でかなり増えてきています。

銀行からプロパー融資を受けているが、保証付き融資も保証枠の限度額まで利用している。
最近赤字が続いているため、「保証付き融資なら出せるがプロパー融資はこれ以上出せない。」とメインバンクから言われた。
こういった状況の対応策として公庫の利用を検討します。

まず初めに断っておきますが、「業績が悪化した企業に対してプロパー融資を出さない」というメインバンクの対応を批判するつもりはありません(融資する側なら当たり前の判断だと思います)。

ただ、現実的な話として、このようなケースではプロパー融資以外の資金調達方法がないため、いきなりプロパー融資が止まるのは困ります。
そこで公庫の出番になります。

メインバンクに公庫との協調融資を依頼することによって、プロパー融資を受けられる可能性があります(あくまでもソフトランディングという意味合いで、業績を改善させない限り継続してもらうのは難しいです)。

お気軽にご相談ください

「公庫って公的な金融機関でしょ。」くらいに思っている経営者の方も多いかも知れませんが、公庫とうまく付き合えるようになると資金調達に安定感が生まれます(業績が良い時も悪い時もです)。

特に「保証付き融資が5000万を超えたのにプロパー融資を受けたことがない」という企業は、公庫の利用を検討することをお勧めします。

初回相談は無料ですので、お気軽にご相談ください。
ご相談のお申込みは以下のお問い合わせフォームやSNSのDMにてお願いします(※氏名、企業名、業種、メールアドレスなどの連絡先、希望の連絡方法、ご相談内容などを添えていただけると助かります)。

また、士業、不動産業、保険業、高額な商品やサービスを販売している企業など、取引先の資金調達が必要になる事業者の方からのご相談もいただいております(※基本的に弊社のクライアントを紹介することはありませんのでご注意ください)。

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