#74 顧客の要望に対して謝ってはいけない


顧客の要望に対して謝る?

はち:ジョンさんはBtoBサービスですが、カスタマーサクセスやカスタマーサポートは重要な組織ですか?

ジョン:あの、まあ普通に重要だと思っていますし、重要じゃないなんて言ったら、ぶち殺されそうです。

はち:まあ、重要ですよね。ありがたいフィードバックをいただける反面、時折すごく怒ったフィードバックも来ないですか?

ジョン:ああ、お客様からってことですよね?はい、ありますね。もちろん。

はち:僕たちもBtoCではありますが、やはりお客様からの怒りのフィードバックが来ることがあります。

ジョン:お怒りのフィードバックですね。そうですね、冷静に怒られるケースもありますし、場合によっては怒鳴られることも普通にあります。お客様の業務が止まることもあるので。

はち:うん、なるほどね。確かにそれもありますよね。今の話を前提に、カスタマーサクセスやカスタマーサポートにおいて、特にカスタマーサポートかな、そういうフィードバックの声は非常にありがたいですよね。そもそもありがたいという前提で、今回お話ししたいのは、顧客の要望に対して謝ることが本当に正しいのだろうかという問題提起をしたいんです。

ジョン:顧客の要望に対してね。

はち:そう、いいポイントに食いつきましたね。

ジョン:いや、大事なポイントだと思ってました。

はち:そうなんですよ。裏を返すと、今日のスコープアウトしたいことは、こっちが悪いことをしたら謝りましょうっていうことなんです。
前提として、要望というところが大事で、よくあるのが僕たちの場合でわかりやすいんですが、例えば、僕たちは動画を再生するプレイヤーがプロダクト中に入っています。例えば、もう解決した話で言うと、「画質調整機能を早くつけてください。じゃないと私は格安SIMを使っているので、動画でパケットを使いすぎてしまいます」という声がきます。これに対してよくある返答が「申し訳ございません」とか、「我々が準備できておらず、ご不便をおかけして」といったニュアンスで謝ること。それを前置きとして、「今後予定しています」とか、「こういう解決策があります」とか、本題に入っていくことが多いんですが、ふと思ったのが、これなんで謝るんだろうと。

ジョン:そうですね。

「期待してください」を伝える

はち:あともっと言うと、「なんでYouTubeであるこの機能がないんですか?」みたいな問い合わせが結構来るわけですよ。ああ、はいはい、うん。「まあまあ落ち着いてくれよ」と思いながら、ありがとうございます、と。そう思いながらそれに対応するんですけど、それは別にYouTubeにあるからうちにないことを謝る必要はないなと思っていて。それはなぜかっていうと、期待していることは何かって話なんですよね。それを問い合わせしてくれている方が謝ってほしくて問い合わせるわけじゃなくて、多分対応してほしいというか、その機能をつけてほしい、ないしそれに準ずる体験を提供してほしいということじゃないですか。うん、だから要望だから本当に期待しているのは謝られることというよりも、「わかりました、約束はしないけど、前向きに検討して、それをいち早く対応することじゃないですか」ということなんですよね。

なので、最近うちはまだそんなに問い合わせが多くないんですけど、数十件とか多い時で百件ぐらいしか問い合わせ来ないんです。一旦僕が全部一次窓口をやってるんですよ。

ジョン:え、マジですか。すごい。

はち:そこが大事だし、声がわかるし、かつ中途半端な対応できないから。僕が「これができませんか?」「質調整ができません」「何々ができません」って来たとき、まず僕が介している定型文というか、フレーズがあって、「それはご要望ありがとうございます。」で、最後に「ご期待ください」って書くんですよ。

ジョン:なるほど。

はち:それ、なぜなら全然見当違いな時とか、それを予定しない時とか書かないけど、なぜならそれを言ってくれてる方は安心したいわけじゃないですか。今はないんだけど、これ対応してほしい、じゃないと使い物にならない、もしくは対応してくれたら使えるのにっていう要望だから、「じゃあ大丈夫です、それはいち早く対応します」って言ってくれた方が一番安心できるなっていう。なので、そう返していて、そこが結構期待値がずれると、「ごめんなさい」って下から下からというか、上からも下からもないけど、なんか謎のへりくだりというか、余計なごめんなさいが発生するだなと思って。だから本当は「ごめんなさい」ではなくて、「要望ありがとうございます。頑張るから期待して待っててね」が正しいんじゃないかなと思ってる。

ジョン:うん、そうっすよね。

はち:これ案外よく注意してみてると、みんな大体ごめんなさいしてるっていう。

ジョン:うん、なんかね。あんまり意識してなかったけど、ちゃんと意識してみたらそうかもしれないですね。

誰も悪意でものづくりしているのではない

はち:これ、僕、何で気づいたかっていうと、世界一流エンジニアの思考法っていう牛尾さんの本の最終章に、あのCOCOAってあったじゃないですか?昔、コロナの時期のあれについて書いてある章があって、そこでハッとしたんですよね。それ抜粋すると、COCOAって当時、マイクロソフトだかアマゾンだか忘れたんですけど、の所属している人が、世の中をより良くしよう、もしくは早く検知できるようにボランティアで作ったアプリを。そこから政府含めて、いろんな人たちがそれを広げて「ありがとう」って言って、みんなに広げるっていうところからスタートしてるんですね。

ジョン:ほう。

はち:なんだけど、COCOAの不具合があったり、何か足りない機能があった時に、「こんなやつ作ったやつ、誰だ」とか、「こんなやつ作ったやつエンジニアの風上にも置けない」とか、そんなのがSNSで飛び交ってたわけですよ。で、いやいやいやみたいな。それ、牛尾さんも本の中で怒っているんですけど、そもそもそれを抽象化して理解すると、誰も我々は悪意をもってものづくりしてないわけじゃないですか。

ジョン:うん。

はち:世の中を良くするために頑張っていて、かつ、バグのないプロダクト、逆に質が低いみたいなことよく言われてるじゃないですか。だから、ごめんなさいって謝る必要なくて、丁寧に聞いて期待を受け止めて、それに早く答えるっていうことが一番最善だって考えると、ごめんなさいじゃなくて、ありがとう。「頑張るから期待して待っててね」っていう返しをするべきじゃないって思ったっていうのを、最近これを提唱している。

ジョン:確かにそうっすね。なんか結構、どっちがいいかというと「ありがとう」がいいなと思いつつ、結局やっぱり、改善する、「頑張るから期待して待っててね」のところが大事なポイントなのかなって、結構聞いてて思って。なんかそうすると、流行りはどっちでもいいような気がしなくもない。

はち:うん、要はそうです。「ありがとう」のほうがベターではあるが、「ごめんなさい」ということに対するリスクとかはないのかなと思ったっていう感じですね。

ジョン:やっぱり日本人ですね。すみません。いや、もう何も悪いことしてないから。自己肯定感を保とうよっていう。「ごめんなさい」っていう言質が取られてしまうと。

はち:そう、なんか、これがね、前何回か前にやった、「ごめんなさい」を過度に、こう責任感を持つことは大事だけど、重みに感じてしまうとメンタルやっちゃうんで。

ジョン:うん、そうっすね。確かにな。今自分で言っててすごい反省したのは、心ない謝罪をしてるんだろうなって、

はち:一番たち悪いよ、それ。本当に「ごめんなさい」を思ってなくても、息を吸うように「ごめんなさい」する大人にだけはなるなって親に言われた。ちょっと反面教師として。はい、というわけで、とっちらかりましたが、気持ちの問題ですね。まず大前提は、最近いろんなところでよくある記事で、お問い合わせいただいたことをクレームって書いてる記事とかも見ましたけど、それは論外です。いただいているご要望とかフィードバックに対しては、前向きに期待に応えられるといいねっていうお話でした。

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キャスト

  • MC

    • はち (PIVOT株式会社 プロダクトマネージャー)
      https://twitter.com/PassionateHachi

    • ジョン (とある上場スタートアップ プロダクトマネージャー)
      https://twitter.com/john_tk120

  • スタッフ

    • 「PMのネタ帳」コミュニティーメンバー

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