仏性は子どもに宿る

 新聞の読者投稿欄の記事を読んで不思議な感覚にとらわれた。小3の男の子の話だった。その祖母よると、この子は神社の庭にばらばらに死んで転がっているセミをきれいに一列に並べたり、採集したアメンボを元の川にそっと戻したりする子で、10歳年上の兄が受験に出かける時も「おい、己に勝てよ」と声をかけ、帰ってきた時には「己に勝てたか」と聞いてきたとのこと。また母親に反抗する兄に向って、お兄ちゃんは誰から生まれたの、と諫めていたとのこと。
 生きとし生けるものを優しく見守り、死んだ虫たちを悲しみ、葬式を一人で執り行い、人の弱さを知っているからこそできるような言葉を発するような8歳の子供などめったに見たこともない。
 このようなすべての生き物に対する慈しみ深い性質のことを仏性と言うのだろうが、このような性質の発露は子どもにしか、しかもめったには現れないものなのだろうか。
 すっかり汚れてしまった世の中で、俗と欲にまみれた大人たちに、果たして仏性を持つ子どもたちに道徳を教育する資格などあるのだろうか。

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