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おんじ (101)

 全国高等学校野球選手権大会、夏の甲子園が大変に盛り上がっている。暑いんだから時期を変えた方がとか、ドームでやったらどうかなどの意見があり、確かに一理あると思うが、球児達が頑張ってる今だけは、素直に応援していたい。三年生にとっては最後の甲子園だし、一年生二年生はそんな三年生と出来る最後の野球かもしれない。またレギュラーになれなかった子達も、スタンドで踊りながらそれぞれの想いで、選手達を応援している。とはいえ勝負事、勝ちもあれば負けもある。勝てば誇り高く校歌を歌い、負ければ汗と涙の染み込んだ土を持って帰ったりする。非常に古めかしい気もするが、それもまた良いものだ。何よりプロ野球とは違って、贔屓だけでなくどの球児達も応援したくなるのが、甲子園の魅力である。そう感じるのも、少しは大人になったからかもしれない。

 一度読んだ本などを、日を改めてまた読んでみると、違う感動があったりする。先日、アルプスの少女ハイジ一挙放送というのがあった。今更ハイジなどと思いながらも、軽い気持ちで観てみたところ、見事にハマってしまった。子供の頃はアルムおんじは怖いと思っていたが、そうではない。とんでもないイケメンである。クララの心に寄り添い、肩を抱きながら、気持ちを代弁し、優しい言葉をかけたりする。ペーターも物凄いイケメンである。歩けないクララを背負うための道具を、誰にも頼まれていないのに作ったり、ハイジやクララのためにお花を摘んできたりする。あの歳で毎日働いているのも凄い。ただ鼻を垂らした少年だと思っていたのを反省した。そして何より驚いたのは、ロッテンマイヤーさんだ。ただ怖くてい厳しくて意地悪だと思っていたが、違うのだ。ただただ真面目なだけなのだ。ハイジに厳しくあたったのも、野生児で無知なハイジが社会に溶け込めるようにと考えただけであり、ハイジを虐めようとした訳ではない。またアルムの山の大自然でまでクララに勉強を強いたのも、勉強が遅れるとクララが困るだろうと考えただけなのだ。何よりも足の悪いクララを危ないアルムの山に行かせたくなかった。それでも山に行くならば、その危険を全て取り払わなくてと、クララのことばかり考えていた真面目な人なのだ。ロッテンマイヤーさん、誤解してました、申し訳ございません。
思えばアルプスの少女ハイジを最終回まで観たことがなかったかもしれない。懐かしのアニメ特集でクララが立ったところは何度も見ていて、あれが最終回だと思っていたが、そうではない。立った後歩く練習をして、つたい歩きをして、転んでくじけて、でも最後に歩く。クララは立つばかりではない、自分の力で歩いて最終回なのだ。してみるとアルプスの少女ハイジは、前半はハイジが主役、後半はクララが主役のアニメだったのだ。

 昔観たものをもう一回。情報量も多く目まぐるしい現代、そんなことをしてる場合ではないのかもしれない。しかし、ものによっては何か新しい発見や感動がある。今更何言ってるんだと思うだろうがその通りだ。今回の煮込む日々は、今更アルプスの少女ハイジに感動した、ただそれだけなのだ。


この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com