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それぞれの第二の国歌 (19)

私の師匠、志の輔のマクラで
「例えばですよ、例えば災害が起きて見ず知らずの老若男女数人がどこかで助けが来るまで共に過ごすとして、何か歌を歌ってこの大変な状況を耐えよう乗り越えよう。となった時、日本人って何を歌うんでしょうね。(途中省略)恐らく、うーん。上を向いて歩こう。になるんでしょうな。」

というマクラがある。
(マクラの一部抜粋であり途中省略もしてる事をご理解頂ければと。)

このマクラを昔、舞台袖で聞いた時、
確かにそうだよな。
と思った記憶がある。

ポイントは老若男女。
つまり子供から年寄り、性別問わず皆で歌える歌。なのである。

それぞれの世代に分ければそれぞれの世代の歌があるだろうが、全世代となるとこれは非常に難しい。

師匠のマクラのように
「上を向いて歩こうに」になるのだろうが、しかしながら最初の一節。は皆が歌える。と限定的になりそうだ。

「上を向いて歩こう、涙がこぼれないように、思い出す、春の日。ひとりぼっちの夜」

ここは皆が歌えるだろう。
つまり曖昧な部分が少なく、限りなく完全に歌える曲となるとなのだろうか。

イギリスではoasisのDon't Look Back in Angerが第二の国歌なんとも言われている。
もちろん私もイギリス国民ではないのでなんとも言えないが、確かに大勢のイギリスの人が口ずさんでる姿は多々見たことはある。

たぶん一節以上は歌えるのではないかな。と感じる。

なぜこんな事を急に言い出したかと言うと、
コロナ禍でプライベートでも仕事でも海外に行く事もなくなった中、寒くなると東南アジア好きの私は東南アジアが恋しくなるのである。

タイ、カンボジア、マレーシア、シンガポール、フィリピン、ベトナム、ミャンマー。

東南アジアには行っているのだが、
夜の東南アジアの街(フィリピン、ミャンマーは治安の事情除く)に出歩くと様々な広場や、酒場や、公園やらでバンドが演奏していたりする。

その演奏にあわせて聞いている老若男女が皆口ずさんでいる姿がどの国に行ってもあった。
もちろん私は聞いたことないが恐らくその国で誰もが口ずさめる「第二の国歌」のようなものなのだろう。

そのような曲や歌がどこの国にもあるのだ。

しかも諸外国では割と完璧にほぼその歌を、いわゆる画面に映る歌詞がなくとも皆が口ずさんでいる姿がとても印象的であった。

その歌が日本では何になるのか。
何故か秋の夜長に引っかかった。
思い出す、秋の日。ひとりぼっちの夜。

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この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com