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一秒の誤ち (78)

”人は間違える生き物である”

 これはかの有名な誰か(エジソンとかアインシュタインとか誰かその辺の人)の名言だ。学校で義務教育を受け集団生活を学び、学習塾へ行ったり様々な習いごとをしたとしても、結局は人なので間違えてしまう。反対に義務教育を受けず孤独に過ごし、毎日昼寝ばかりしていても間違えてしまうだろうし、間違いがより増える可能性もある。とはいえこの名言も人の作ったものなので、間違えてる場合もある。そうなると何が間違いで何が正解で、何がきっかけでセロリが好きなのかもわからなくなってくる。一体ライオンハートとは何だったのか、ポニーテールとシュシュってよく考えたら歌詞作った人の年齢と感覚に無理ないか、歌ってる人達が可愛かったり特別カッコ良かったりしただけじゃないか、考えれば考えるほど正解と不正解が複雑になっていく。しかし、間違いなく間違いだとわかるものがある。過去にやってしまい後悔しているのに何度も何度も繰り返してやってしまうもの。それも中毒性がありつい出来心でというわけでもなく、ただただ間違いであると認識出来るものがある。それが何か、おわかりだろうか。
発表します、”火傷(やけど)です。

火傷とは熱によって皮膚や粘膜が損傷した状態のことで、医学的には熱傷(ねっしょう)という。症状に関しては皆さまご存知だろうし、何より痛々しいので説明は省かせていただくが、とにかく辛いものだ。軽症のものでも冷やすのを遅れたが最後、いつまでもヒリヒリと痛み、集中を削がれ、何らかの活力を失う。さらに”あれを触ったことで火傷をした、何故あれを触ってしまったのか”と自分を責めるようになる。肉体だけではなく、たとえ軽症でも精神にも影響を及ぼす恐ろしいものなのだ。

先刻、火傷をした。原因はトースターで熱せられた”ベーグル”である。冷凍のベーグルで、”軽くレンジ解凍した後トースターで焼いて食べよ”とベーグルの袋に書いてあったのでその通りにした。解凍したベーグルをトースターで片面を焼きひっくり返すのだが、この時、”これくらいなら手で大丈夫”と安易に考えたのがいけなかった。このベーグル、何も入ってないプレーンではなく、細かくオレンジみたいなものが混ぜ込んである、オレンジみたいなものベーグルだったのだ。さらにいうなら筆者は肌が弱い。すぐ日焼けするしすぐ肌が荒れたりする。それにもかかわらず、素手でベーグルをひっくり返したものだから、ベーグルに混ぜ込んである、熱を溜め込みやすいオレンジっぽいものに指が触れてしまい、火傷をしてしまったのである。己の力を過信したばかりでなく、相手の力量をも見誤ったのだ。直ぐに流水で冷やそうとしたが、今はまだ夏、ギリギリ夏なので、水道の水がぬるい。結果充分に指を冷やすことが出来なかった。
なぜ素手でひっくり返そうなどと馬鹿なことをしたのか。過去にも同じように熱いものを触って火傷をしたことがあるはずだ、その痛い記憶は今も変わらずあるはずだ、なのに何故。

人間は間違える生き物である。なぜなら時間というものを認識し、時間が経つことにより多少なりとも脳に経験が溜まっていき、成長していると実感しやすい生き物だからではないだろうか。過去に過ちを犯しても、それは過去の自分が起こした間違いであり、今の自分なら乗り越えられるはずだと考えてしまうのではないだろうか。
火傷の応急処置は時間との戦いである。速やかに冷やさなくてはいつまでもヒリヒリが止まらない。現在先ほど負った火傷を保冷剤で冷やしているがもう遅い。直ぐに、本当に直ぐに冷やさないとダメなのだ。最後に筆者からも名言を言わせてもらう。

”冷凍庫に入ってる紙や布の保冷剤は臭い”

人間は思うほど成長していない、皆さまも火傷にはくれぐれもご注意していただきたい。

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この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com