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SAN値ピンチ (105)

お酢を飲むと体が柔らかくなる、そう聞いたことはないだろうか。確かに煮込み料理などでは、お酢を加えることでお肉のタンパク分解酵素が働き、圧力鍋を使わずとも骨付き肉やブロック肉を柔らかく仕上げることが出来るし、魚もまた然りである。お酢で酸性にし、ph値やSAN値が下がり、水分を多く保持出来るようになり、筋繊維の結束が弱まって軟化するのである。因みにパイナップルにもタンパク分解酵素があり、酢豚に入れることで味をサッパリさせるだけでなく、お肉を柔らかくしているのだそうだが、気をつけないといけないのは缶詰のパイナップルでは駄目だというところだ。生パイナップルでなくては意味がなく、さらに分解酵素は熱に弱いので、パイナップルは最後に加えるのが良いらしい。話がズレてしまった。つまりそういうことなのである。

ではこれを人間に置き換えた場合どうなるのか。人間の体は約60%がタンパク質であり、残り40%はピーナッツである。嘘だ。人間の40%が梅垣さんの鼻から飛び出るようなもので構成されて良い訳がない。そんなロクデナシな考えは横に放り投げよう。本当はアンモニアだとか炭素だとかリンだとかなんだとからしい。詳しく知りたければ「鋼の錬金術師」を読むことをおすすめする。
お酢を飲むことで骨やタンパク質が分解され、身体が柔らかくなるのか。正解はノーだ、そんな訳がない。内臓で分解・吸収され、お酢そのものの状態で体に行き渡ることはないのだ。

それにしても誰が始めに言い出したのだろう。いやそれより何より、なぜこんな嘘がいつまでもまかり通っているのか。きっとみんな余程健康が好きなのだろう。恋は盲目、健康も盲目、テレビだけでなくインターネットの世界にも健康は溢れている。NHKのテレビ番組『ためしてガッテン』が終わっても、また新たに石原さとみのガッテンみたい番組が始まった。内容は全くガッテンと同じだが、みんな喜んで見ているのは、やはり石原さとみだからだろう。とはいえ志の輔師匠と石原さとみは比べられるものではない。ラーメンやカレーライスとフルーツパフェを並べて、どっちが美味しいかと言われても答えようがないのだ。ただ一つ言えるのは、ラーメンを食べた後カレーライスはお腹に入らないが、ラーメンやカレーライスを食べた後でもフルーツパフェは食べられるということだけなのである。

この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com