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除湿機 (71)

此処のところ、梅雨でもないのに非常に湿度の高い日が続いているので、満足に洗濯もままならない。洗った衣類やバスタオルなども、外には干さず部屋干しばかりしている。出来ればベランダでカラッカラに乾かしたいが、お天道様だって休みたい時もあるので仕方がないのだろう。とはいえ洗濯はしないとどんどん溜まっていく。一体どうしたものか。これが平安時代なら「洗濯はわざわざ雨の日にやらなくていいでおじゃる、乾かないでおじゃる」と諦めるのかもしれない。しかし現在は平安時代ではなく令和四年なのでおじゃる。我々現代人には除湿機というものがあるのだ。

ネットで割と大雑把にかつ適当に調べたところ、家庭用除湿機が誕生したのは、昭和42年(1967年)なのだそうだ。生活様式が変わり、住宅の洋風化に伴って、家の中に結露やカビが出来やすくなり建具が歪んだりする(これを湿害というらしいが本当かしら)ようになったらしい。因みに我が国で初めての除湿機が生まれたのは昭和27年(1952年)で、倉庫や図書館などで使う業務用だそうだ。さらに言うと大変に高価なものだったしい。初めの頃はみんな除湿機など必要ないと考えていたらしいが、徐々にその必要性を感じるようになっていった。主に雪国に需要が多かったそうだ。今や除湿機は家庭に欠かせないものになったと言っても過言ではないだろう。当然我が家にも一台あり、近頃はブラック企業並みに朝から夜、夜から朝とフル稼働させている。寝る前に電源を入れ除湿を始めると、朝にはタンクに満タンの水が入っている。寝ている間にずっと働いてくれていることに、感謝するとともに申し訳なくも思う。そしてタンクに溜まった水を見る度に、空気中にはこんなに水があるのかと考えさせられる。さらにはせっかく溜めた水を捨てるのなんかもったい、何かに使えないものだろうかと。

結論から言えばこの除湿機に溜まった水、何にも使えないそうだ。見たところ綺麗でも実はめちゃくちゃ汚い水らしく、当然飲めやしないし雑巾掛けにも使えない、まして洗濯などもってのほかだそうだ。空気中のカビやらなにやらがめいいっぱい詰まった汚水らしいのだ。見た目には綺麗に見えるのに不思議なものである。

世の中綺麗に見えても汚いものがある。また汚く見えても綺麗なものもあると、わかった風な浅いことを言って終わろうと思ったが、さすがに無理だ。なぜならそんなどうでもよい結論に繋げたかった訳ではなく、ただただ毎日頑張ってる除湿機について書きたかっただけだからだ。これから梅雨の時期に向かい、皆様の家庭用除湿機もフル稼働することだと思う。梅雨が終わったらで良いので、どうか除湿機に労いの言葉をかけてもらいたい。一緒に鍋を囲むのも良いかもしれない。あ、湯気は吸わなくても良いんだよ。

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この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com