バケモノの子より (25)
先日、電車の中の広告で劇団四季による「バケモノの子」のCMを見た。
ご存じの方も多いが細田守監督の作品である。
別にアニメや映画に詳しくはないが、非常に好きな作品なのである。
何故、この作品に感銘を受けたか、というと
細田守監督は「修業」(修行)といものを凄く理解されておられるからだ。
もちろん作品全体を通して素晴らしく、あっという間に終わってしまうぐらい面白いのであるが
主人公が、師と仰ぐバケモノから色々と動きや技を習得していく中で
まず、真似る。
徹底的に真似る。
普段の動きやら、表情、仕草に至るまで。
そして、盗む。
真似て盗む。
「修業ってそれが当たり前でしょ??」と思う方も多いかもしれないが
それをもう一歩踏み込んだ「修業」(修行)の完成形のようなシーンがあったのである。
主人公が台所で下働きをしている時
庭にいる師のバケモノの会話、
足音から師がどのような表情をして、
どのような足捌きをしているのか台所で想像しながら真似るシーンがあり、その動きがピタリとハマっている。
これぞ「修業」(修行)の完成形である。
同化。
心の中に、もう1人の同じ師をつくるという事。
この場合、師匠ならどうするか、師匠ならどう考えるかを繰り返し考える、の繰り返しが修業なのである。
ジャンルは違えど、修業をした身としてこの台所のシーンにものすごく感銘を受けた。
私も入門当初兄弟子から
「自分の考えを全て捨てて、一旦0になって、師匠ならどうするか、師匠ならどう考えるか、徹底的に師匠の身になって考えるように。」と言われた事がある。
これは本当に難しい事なのである。
しかしそれを徹底していると
師匠の「あれ」で何が欲しいのか分かる時が来るのである。
何故?と聞かれると答えるのが非常に難しいのであるが
まさに、ずっと側にいて師匠の事を考え、見て、学んだ
に尽きるであろう。
二ツ目になって丸7年。自由に働かせて頂いてる中、電車の中でふとこのバケモノの子のCMを見た時に、そんな事を考えたのである。
私は本当に良い修業をさせて頂いていた。
車内のモニター広告から窓の外に映る渋谷の景色に目を移しつつ、
改めて偉大な師匠の下で修業をしていると感じた。
師匠。PARCO1ヶ月公演、ガッテン27年間お疲れ様でした。
この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com