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本を読む (26)

「スケジュールというものを到達点だと考える者と
 出発点だと考える者の違いであり、
 安西はそれに未だに順応できずにいる。」

この文章は私の好きな作家、吉田修一さんの「路」(ルウ)という小説にでてくる一節である。

※台湾に日本の新幹線を走らせる。という内容で舞台は日本と台湾。中国語を勉強してる私としてはかなり好きな内容である。

文頭に書いた一節を読んだ時に、妙な感動というか納得を感じた。

明らかに私は前者、「到達点」であり、
多くの日本人は国民性という一言で片付けるのは難しいとは思うが「到達点」派であろう。

更に小説内では
「世界に目を向けてみると
 スケジュールという言葉に対して予定通りに進むものと認識する人の方が少ないのではないだろうか」

とも書いてあり、
実は日本人は少数派らしい。

つまり
18時に誰かと待ち合わせしたら
18時集合を到達点として動くのが私を始め多くの日本人であり、
18時集合を出発点として
その日、何が起きるか分からないから遅れる、
あるいはそのスケジュールすらなくなるのが世界。

という感じである。

ちょっとその感覚に憧れる。
仕事の入り時間とかは厳守にしても、最近異常にその感覚に憧れるのである。

結局、過程を楽しめる人はかなり強い。

もちろん人それぞれ。

最近、晩酌をしながら小説を読む時間が私のリラックスタイムなのだが、
ちょっと酔いながら、文頭の一節を見つけ、この文章を書いている。

結果、今回の文章に到達点はなく、出発点であってもよいのかと。

冬が終わり、春がくるのをじっくり待つような感覚を大切にしたい。
そしてそれを楽しみたい。

そしてやはり読書は素敵な発見があり、よい。

ではまた。

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この連載は±3落語会事務局のウェブサイトにて掲載されているものです。 https://pm3rakugo.jimdofree.com