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カード3枚で生きる人のための特別なカードウォレット

家具、革財布、金継ぎなど、いろんな創作活動をしています。
PLYLISTの小尾口です。

今回の記事は「カード3枚で生きる人のための特別なカードウォレット」
の打ち合わせから制作までを紹介したいと思います。

打ち合わせ

今回オーダーいただいた方はキャッシュレス生活のためのカードウォレットを探していらっしゃる方でした。
ただ、なかなか思うようなものは見つからずにいたときに
PLYLISTのことを知ってくださいました。
お客様と僕で相談しながら自分らしいカードウォレットを見つけるお手伝いをさせていただけることになりました。

まず、どんなカードウォレットがいいのか
求める機能
外観
イメージ
などなど話をしました。

ネット上にある画像をお互いに見せ合ったりもしました。

最終的にはPLYLISTで販売している「名刺入れ」(現在のカードウォレット)を気に入っていただき、
形はそのままで、ポケットの数を増やすことになりました。
PLYLISTのカードウォレットは10枚くらいカードは収納できるんですが、
お客様は1枚1枚それぞれ入れるポケットが欲しいとのことでした。

機能性に関しては満足していただけるものができそうでした。
次は革や木の素材選びです。

最初はワイン色の革が好きというお客様でしたが、
手持ちにあるグリーンの革をご覧になると、
「これ個性的でいい!」と気に入っていただけました。
ということで革はロウ引きされたグリーンのイタリアンレザーを使うことに決まりました。

木を選ぶのもなかなか種類が多く大変なのですが、
雑談をしているときにお客様はウイスキーがお好きという話を聞いたので、
オークの木をおすすめしました。
ウイスキーの樽に使われている木材だからです。
あと、個性的な自分だけのカードウォレットを作りたいという想いをお聞きしていたので、
シルキーオークという赤みが強く、長細い水玉模様のような模様のある木をおすすめしました。

どちらの木も気に入っていただけたので、
両方を採用することにしました。

あとは、刻印を入れてほしいというオーダーをいただきました。
刻印は「11」という番号。


木材のツートーン使いや刻印の意味などについては
記事の後半で詳しく解説したいと思います。

制作


今回はオーダーいただいたカードウォレットの他にも在庫用も合わせて制作しました。
定番の4種類と奥さん用とオーダーいただいた特別仕様のもの
合わせて6つまとめて制作しました。

まずは木の準備。
木目のどの部分を使うか考えながら切っていきます。
実はこの木は厚み0.2mmくらい。
カッターで切れる薄さです。


この薄い木のシートを何枚も重ねることで
強度を高めています。
具体的には合計9層〜10層の木のシートを作ります。
また、木目の繊維の方向を90度回転させながら重ねているので
木の反り防止になっています。


形の切り出しと縫穴を開けるのはレーザー加工機の仕事。
精度高くて気持ちいいですね。


最後に塗装したら木のパーツは完成。


次は革の仕事。
こちらもどこの部分を切り出すか、革と向き合いながら考えます。


切り出したら革の床面(裏面)に処理剤を塗って磨いていきます。
毛羽立ちを抑えて、滑らかな面とツヤを出します。


木のパーツと革のパーツに金具を取り付けます。
金具はイタリアのPRYM社のものを使用しています。


木のパーツと革を縫い合わせ。
全て手縫いです。
糸は天然リネン糸を使っています。


いろんなカラーバリエーションがあると見ていてワクワクしますね。


マチを接着すると立体的な構造になります。


マチも全て手縫いです。


革包丁という道具で革を切ります。
綺麗な断面が美しい作品づくりでは大事です。


鉋を使って縫い合わせたパーツどうしの段差をなくします。

完成


こちらが定番の4種。
革:キャメル、チョコ の2色
木:アメリカンブラックチェリー、ブラックウォールナット の2種


こちらがオーダーいただいた特別仕様のカードウォレット。
ロウびき加工により、ほんのり白がかったグリーンのレザーが特徴的です。
使い始めるとロウが馴染んでいき、濃いグリーンに変わっていきます。

実は、お客様がお持ちになっている革製品はほぼワインレッドで統一されていました
しかし、なぜ今回グリーンの色を選ばれたのか。

打ち合わせの際にいろんな革を見ていただきました。
その中にワインレッドももちろんありました。
そして、革にもいろんな種類があり、個性があるということを知っていただきました。

お客様は新しい自分に挑戦するという意味で、普段選ぶものとは違うグリーンの革を
それも、個性が強めのグリーンの革を選びました

そして2種類のオークのツートーンが鮮やかで、見た目がとても新しい。
間違いなく世界で一つだけのカードウォレットです。


実はこの木の配色もお客様のこだわりがあります。
以前、結婚式場で働いていたということもあり、
新郎新婦の並び方からインスピレーションを受けて配色を決めました。

刻印の「11」は
中学時代に野球部でピッチャーだったお客様のエピソードから来ています。
結果が出始めてた頃、天狗になってしまった結果、
「1番」をつけれずに2番手になってしまった経験があるんだそうです。
(ちなみにこのあと、高校の野球部では1番をつけることができたそうです。)
この当時の自分を忘れずに、「調子に乗りすぎるなよ」という自戒の念を込めて「11」の刻印を入れたいというオーダーをいただきました


中は、カードポケットを一つ増やしています。
このカードウォレットはもともとクレジットカード等を10枚程度は収納できます。
なので病院に行く時、銀行に行く時、など
その時々で必要なカードが増えても問題ありません。


横から見るとこんな感じ。


最初はこの厚さですが、
使い込むともっとぺったんこになります。
最初のぷっくりしたフォルムもかわいくて個人的に好きですが
使い込むとスリムにポケットに収まってくれるという実用性もちゃんとあります。

カスタムメイドの良さ

これは間違いなく、自分好みにできるということだと思います。
定番ではちょっと満足できない人。
フルオーダーは予算的に厳しいけど、長く使える特別なものが欲しい
そういう人にはぴったりだと思います。

そして、いろんな種類の革や木を見ると、
どのお客様もとてもワクワクされていて、楽しそうなんです。
定番もいいけど、定番にはない革や木の表情や個性を見ると
「うわー!これめっちゃ素敵ー!」ていうものを皆さん見つけるんです。

デパートや百貨店でいろんな商品の中から選ぶのとはまた違う楽しさがあります。

これは自分で作品を作るという工程に似ているからだと思います。
「この革とこの木を組み合わせたらどうだろうか」
とか
「カードのポケットはどのくらい必要だろうか」
とか
「ボタンとギボシだったらどっちが使いやすいだろうか」
とか
自分が実際に使っているシーンをかなり鮮明にイメージすると思うんです。

そして実際に作っていく作業工程は
僕がInstagramやTwitterで毎日更新していきます

お客様は、だんだんと形になっていく様子を見ることができます。

自分が考えたものが出来上がる過程を見られるというのは、
かなりワクワクして楽しいと評判です。

ネットでポチッと買うのも必要だし、手軽だし、僕は全く否定するつもりはないですが、
大切な一つのものを手に入れるのに、
素材から選んで、考えぬいて、職人と相談するという体験は
かなり非日常的な体験です。

そして打ち合わせから完成までに早くて2〜3ヶ月くらい
長い時は1年以上かかった時もありました。

これだけ待つということも現代ではほぼあり得ないですよね。

ですが、それがかえってお客様にとっては楽しみに待つという時間
発酵熟成のような機能を持っているような気が僕はしています。

というのも、PLYLISTにオーダーくださった方は皆さん、
「待っている時間もSNSを見て想像を膨らませるのがワクワクして楽しかった」
と言ってくださる方が多いんです。

ネットでポチるのも、大型ショッピングモールで商品を購入するのも楽しいですが
こういうちょっと不便な購買体験をするというのも悪くないんじゃないと
僕は最近思っています。


ここまで読んでくださった方、ありがとうございます。
僕のことやPLYLISTの作品に興味を持ってくださった方は
ぜひ、SNSをフォローしてくださるとうれしいです。

よろしければサポートしていただけるととてもうれしいです。製作活動に必要な道具に充てさせていただきます。