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キャッシュレス生活に憧れるけど、お札とか名刺とか身分証は入れておきたい。でもスリムなお財布が欲しいというオーダー。

お財布を作ったりや家具を作ったり
木と革を組み合わせたものづくりをしている
PLYLIST(プライリスト)の小尾口(こおぐち)です。

今回いただいたお財布のオーダーは
キャッシュレス生活に憧れるけどなかなか移行できない・・・
スリムなお財布でスマートに生活したいけど、
お札とか名刺とか保険証とかはお財布に入れておきたい
というご相談でした。

そんなお財布を作るお手伝いをさせていただいたお話です。

打ち合わせ

今回オーダーをいただいたのは、僕の大学時代のお友達。
世の中的にキャッシュレス化が進んでいるけど、
病院とかまだ対応しきれてないし、現金必要なシーンは結構ある印象。
ということで、キャッシュレスに完全移行はできないけど、
できるかぎりお財布をコンパクトでスリム化したいというお話でした。

打ち合わせはLINEのやり取りのみです。
こちらから色々と質問させてもらい、答えていただきました。

お客様の要望としては以下のような感じでした。

・カード類はクレジットカードとSuicaなどを入れたい
・社員証、免許証などの身分証を入れたい
・身分証はお財布を開いたら提示できるように、表面が見れるようにしたい
・名刺を数枚入れられるようにしたい
・お札は入れたい
・お財布のスリムさを優先して、小銭入れは諦める

という感じでした。

ということで、スケッチをいくつか描いて写真でお送りし、
好みのものを選んでもらいました。
スケッチを元に模型を作って確認してもらい、
革の種類や糸の色なんかも写真を送って好みのものを選んでいただきました。

制作

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今回提案したのは、
マネークリップウォレット。
ビジネスシーンでもスリムで上品な印象を与えられるお財布です。

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特徴的なのは
お財布の中に身分証を入れるパスケースを一体化したこと。
ここに社員証と身分証をしまうことができます。
マネークリップウォレットにパスケースが組み込まれているお財布はなかなか珍しいと思います。

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そしてもう一つの特徴は、
名刺入れポケットの構造です。
ぱっと見は普通のカードポケットですが、
実はこのポケットに厚手の名刺を10枚以上収納することができます。
これを可能にしたのは、特殊な縫製技術「掬い縫い」という縫い方です。

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実はクレジットカードをはじめとするカードと名刺って微妙にサイズが異なります。
なので、お財布のカードポケットに名刺を入れようとすると、入らないこともあります。
入ったとしても、結構キツくて複数枚いれることはできません。

これを解決するために、外周の縫い代を名刺入れのところだけ無くすことにしました。
そして、腕のように伸ばした革を、胸の前で手を合わせるようなイメージで、
ポケットの中央で縫い合わせました。

これによって縫い代を無くすことがで
名刺のサイズにも対応でき
かつ
厚みに少し余裕をもたせられるので、
10枚以上収納可能になりました。
ただ、あまり入れるとスリムではなくなってしまうので、
厚手の名刺は5枚くらいがスリムさを保ててちょうどよさそうです。
薄手~普通の厚みの名刺でしたら10枚くらい入れても問題ありません。

効率を無視したオーダーメイドだからできる構造と機能です。
いや、もちろん効率はとても大事なんですが、
時には非効率も大事だと思うんです。

手縫いだからできる仕事は、作り手としてはとても楽しいものです。

ということで、今回のオーダー品は無事に完成しました。

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あらためて、オーダーメイドする意義を考えてみた

PLYLIST(プライリスト)は
僕と妻の2人ですべての業務をこなしています。

機械もないので、生産能力なんてめっちゃ低いですし、
作業部屋は6畳しかありません。
OEMなんて受けられません。

よくこんな環境で仕事をしているなと思います。

しかしながら、資本主義に逆行するようなこんなゆるいスタイルだからできるデザインもあると思っています。
それが、掬い縫いのカードポケットだったり、
木と革を組み合わせるデザインだったりすると思うんです。

とにかく、町工場よりも規模の小さい、
6畳工房だからこそできる非効率なデザインや小ロット生産ではないかと思います。

これにどれくらいの人たちが価値を見出してくれるのかは分かりませんが、
少なくとも、僕の周りにいる知人友人たちからは、
開業当初の予想をはるかに超える人数のオーダーを受けています。

コスパ重視でネットでポチッと買う行為をもちろん否定するつもりはありませんし、
僕自身もアマゾンとかで普段から買い物はよくしてます。

ただ、身の回りのものの中に
自分にとって特別なもの
それこそ、お金を惜しまずに本当に考え抜いて買ったものを長く使う
壊れたら直して使う
というものが
ひとつか、ふたつ
それくらいあってもいいんじゃないかな?
と思うのです。

そういう人たちの力になれたら幸せだなと僕は思います。

よろしければサポートしていただけるととてもうれしいです。製作活動に必要な道具に充てさせていただきます。