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オーダーメイドのLファスナータイプの長財布が出来上がるまで

こんにちは。
今回の記事はオーダーのお財布が出来上がるまでを紹介したいと思います。

家具から革財布、金継ぎなど、
いろんな素材や技術を組み合わせた創作活動をしています。
PLYLIST(プライリスト)の小尾口です。

今回のご依頼は
Lファスナーの長財布です。

打ち合わせ

今回のオーダーをいただいたのは、実家のご近所さん。
打ち合わせは立ち話から入って、
今使っているお財布を見せてもらい、
問題点や要望をお聞きしました。

形はLファスナーの長財布
カードの収納はある程度欲しいが、
少なくてもカードを選抜するのでそこまで気にしなくてもよい。
小銭入れとお札入れは欲しい。
革はおまかせ。
色もおまかせ。

とのこと。

今回も結構おまかせ要素が強めのオーダーをいただきました。

僕が以前から試してみたかったカードの収納方法があったので、
それを試してみたいということを伝えると
試作品で構わないし、納期もいつになっても構わない
というお返事をいただきました。

本当に、ありがたいです。

試作

試作は12月にしました。

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試作でも本番と同じ、植物タンニンなめしのイタリアンレザーを使用しました。

めちゃめちゃざっくり制作工程の流れを書くと、

図面描いて、
型紙作って、
パーツを裁断して、
ファスナーの長さを調整して、
組み立て

という感じです。

カードの収納は
横ではなく、縦に収納するタイプです。
縦に収納するタイプは初めて作りました。
カードを入れたときのゆとりや、
LファスナーのR部分が大きいので、
カードと干渉しないかとか
色々と不安要素が多かったため、試作をちゃんと行いました。

あと、今回もう一つやりたかったことに挑戦しました。
ファスナーの引手をオリジナルで作るということです。
無垢の真鍮を削り、穴の加工をし、
金鎚を使って叩き、鎚目模様をつけた引手です。

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試作品の使い心地を検証するために、
奥さんに実際に使ってもらいました。

そこで出てきた課題が、
マチが浅いのでお札の端が潰れてしまう

という問題でした。

ということで、これを改善した設計をし直し、
型紙も作り直して本番の制作に入りました。

本番

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型紙に沿って裁断して

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曲線はこんな感じで
微妙にずらしながら何回も直線に切って曲線にしてます。

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ファスナーの長さを調整して

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外側のパーツと内側のパーツを合体させます。
この縦収納のカードポケットの形状が今回のお財布のポイント。

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そして、カードが見やすく
取り出しやすい
縦収納のカードポケット
カードの重なりが少なく、ポケットが膨らみにくい構造です。

機能性のこだわり


一般的な横収納のカードポケットは
上のカードと下のカードの重なり幅が多く、
ポケットが膨らみ、お財布内部を圧迫するため、
カードがギチギチに詰まりがちです。
よく見るタイプのお財布は
3枚〜4枚の分のカードの厚みが重なっています。
これはつまり、
カードを仕切る革も
カードの枚数分重なっているということです。

この問題点を
縦収納にすることと
ポケットのゆとりを大きめにする
こと
で解決しました。

見た目的には何が違うのか全く分からないと思いますが、
その差は歴然です。
カードの取り出しやすさが全然違います。

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そして、カードの見やすさの理由
小銭入れが低いから

一般的な小銭入れはカードの高さと同じ位置まであります。

しかし、果たして小銭をそこまでパンパンに入れる人はいるのでしょうか。
小銭入れが深いとむしろ底の隅っこの小銭が取り出しにくいという
問題点があります。

今回製作したお財布は
小銭入れを低くし、
かつマチをつけることで、
小銭の取り出しやすさ
見やすさを両立しました。

これによって、カードの視認性も向上し、
指を入れやすくなったので取り出しやすくなったというわけです。


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使用した革は
植物タンニンなめしのイタリアンレザー
スムースな質感とほどよい光沢が特徴です。

Lファスナータイプの長財布と少し大きめのRが
革の質感と相まって柔らかい印象を与えてくれます。

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ファスナーの引手は試作同様にPLYLISTオリジナルの
鎚目仕上げの真鍮引手(つまみ)です。
凹凸の表情が触るととても心地よいです。

ファスナーはYKK EXCELLAを使用。
YKKのファスナーの中でも最もグレードの高いファスナーです。

磨かれた光沢と
エレメントの噛み合わせ精度の高さが抜群です。

普段ファスナーを開け閉めする感覚とは少し違います。
このYKK EXCELLAのエレメントは
ひとつひとつのエレメントが噛み合わさる感覚、外れる感覚が指先に伝わってきます。
この心地よさが他のファスナーとの違いです。

家具で例えると、
引き出しを開け閉めする際に感じる空気をスーッと押し出す感覚や
引き出しを締めると他の引き出しが飛び出てくる

みたいな感じです。
加工精度の高さを感じる高級ファスナーです。

PLYLISTがオーダーメイドのお財布に込める想い


実はまだPLYLISTの長財布に定番商品はありません。
そして、今までオーダーをもらったお財布には
1つとして同じものはありません。
「このお財布ずっと長いこと使っているんだけど、もうさすがにボロボロで買い換えたいんだー。でもなかなか思うようなお財布見つからないんだよねー。」
こんなお客様が多くいらっしゃいます。
PLYLISTでお財布をオーダーしてくださる方は、
モノを大切に扱い、一つのお財布を長く使っている方が多い傾向です。

「思うようなお財布が見つからない」という悩みは皆さん一緒ですが、
「理想のお財布」は皆さん違います。

ここでちょっと話は変わりますが、
PLYLIST(プライリスト)という屋号に込めた想いをお話ししたいと思います。

Ply(プライ)=重ね合わせる、撚り合わせる
Playlist(プレイリスト)=音楽の再生リスト(曲を再生する順番をリスト化したもの)
という二つの単語を組み合わせた造語です。

人それぞれの価値観、生き方、理念、ライフスタイルに応じた
素材や技術、デザイン、アイデアの組み合わせリストを提案することで、
心から豊かな生活を送るために、少しでも役に立ちたい
そんな想いからこの名前を決めました。

お客様に寄り添いながら、
ワクワクするような組み合わせだったり、
ほっこりするような組み合わせだったり、
いろんな組み合わせを考えましょう。
そして、音楽のように
その人にとってかけがえのない存在になるものを
そして、
暮らしと心を少しでも豊かにしてくれるものを
つくれるように、私はなりたいです。

PLYLISTという屋号は
お客様にできるかぎり寄り添ったものづくりをしたい
という想いが前提としてあります。

「なんか思うようなお財布が見つからない」
そんな人と一緒に、理想のお財布を見つけるお手伝いをさせていただくことが
PLYLISTのやりがいであったり、幸せだったりします。
職人や、お店に相談するというイメージよりも
友達とか知り合いに相談するような感覚でいてもらいたいです。
僕はあくまで理想のお財布を見つける旅の伴走者として
使う人の相談にのって
理想の形に近づけるお手伝いをする人
みたいなイメージです。

たかがお財布、と思われるかもしれませんが、
毎日使うものだからこそ、
一人一人の使い方も違うし、
こだわりがうまれやすいものだと思います。

毎日使うものだからこそ、素材にもかなりこだわっています。
質の高い革を使い、
質の高いファスナーを使い、
使う人の使い方に合わせた機能性を持ったものにしたい。
そういう想いがPLYLISTのものづくりにはあります。

ここまで読んでくださりありがとうございました。
僕の作品やオーダーのものはSNSにも投稿しています。
制作風景や日常まで、基本毎日アップしています。
もし気になる方いらっしゃいましたら、ぜひフォローしていただけるととてもうれしいです。


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