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心的外傷後成長? 心理士として、その言葉に思うこと。

今日は、心的外傷後成長という言葉に思うことを書いてみます。

「トラウマ体験をした後、思い悩み苦しい体験を経て人は精神的に成長すると言われています。それを心的外傷後成長と言います」。

もちろん実際にこのように経験される方もおられるとは思います。

ですが、これを言っていいのは当事者だけなのではないか、と個人的には考えています。

当事者でない立場としてこの言葉を使う場合には、特に慎重さが大切なのではないかと思っています。


というのも、被害を受けた方に対して「あってほしい姿・あるべき姿」を期待したり、向かう方向性を無意識に規定したりしかねない言葉だと思うからです。



とくに、家族間で起こったトラウマについて、この言葉が使われやすい印象を持っています。



例えば、通り魔からの被害を受けた方対して、「その体験にはきっと意味がある。乗り越えて成長できるよ」との言葉がかけられるケースは、あまり多くはないのではと思います。


こうした、被害者側の変化を期待する言葉は
「家族内で起こったことは、たとえそれが暴力や性加害であっても家族内で解決すべき」
という風潮の影響もいくらかあるのではないかと思っています。



ですが、これはある意味、被害後ダメージを負った被害者の方に対して、「超人的な何かの達成」を求めているという意味で、被害者の方に過度の負荷をかけるリスクがあると思います。


カウンセラーとして、クライエント様にこうなって欲しい、という理想を無意識的に持ってはいないか、またそれを暗におしつけてしまってはいないか、自分自身への自戒をこめての記事でした。

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