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Vtuber「ジョー・力一」

でも、結局は。
ジョー・力一というパフォーマーは一人であったと。

一人から始まったんだ。


「【リレー配信】1周年+チャンネル登録10万人記念 JOE MUST GO ON」 より

いちから株式会社が運営するバーチャルライバーグループ「にじさんじ」、そこには約100人程のライバー(Vtuberを指す)が所属し、ゲーム実況、雑談、歌といった、それぞれ得意な分野で活動をしている。

その箱に流行りのゲーム実況をせず、持ち前の話芸と歌を武器に活動する謎のピエロ、ジョー・力一(読み方:りきいち)という男が存在する。

2018年の晩夏にデビューして以来、激辛ラーメンを食べながら落語をしたり、Vtuberが流行りのボカロやアニソンを歌う中ひとり平沢進縛りで歌を歌ったり、時には視聴者投稿型企画で5時間以上大喜利をしたりと、
独自のスタイルを突き進む彼について書いていく。



知った経緯

まずは、星の数居るVtuber業界の中から彼を知った経緯を話そう。

2019年の冬、月ノ美兎鈴鹿詩子の10分まとめ動画を見て強烈なキャラクターのフックに引っかかり、にじさんじに興味を持ったのが始めの入り口だった。

知ったタイミングとデビュー時期が一緒だったさんばか(リゼ・アンジュ・とこ)の3人を中心に、時間が空いた時に偶に見るペースでのんびりVの世界を楽しんでいた。


ゆるく追いかけていた中、2019年夏に一本の動画が公開される。

にじさんじ1周年記念楽曲 「Virtual to LIVE
過去の配信映像とファンアートを映しながら、バーチャルの世界から発信してきたこれまでとこれからを歌うの楽曲だ。

ワクワクしながら再生すると...。

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うん...?

スクリーンショット 2020-05-04 2.15.32

なんか右端にHUNTERXHUNTERに出てそうな奇抜なピエロが居た。
休載期間中に冨樫先生に見切りをつけて飛び出してきたのだろうか、幻影旅団はどうした?

気になりつつも曲は進み、泥だらけ足元で肩を揺らしだす。

2番に入る。
ひまちゃんとクレアさん、ドーラと緑仙に続いて

スクリーンショット 2020-05-04 2.49.54

(1:54)鷹宮リオンとのデュエットパート、
ブチャラティみたいな体型をした右のピエロは、落ち着いたかっこいい歌声で、不格好に投げた言葉で日々を綴ってきやがった(歌詞)。

ここがジョー・力一とのファーストコンタクトであり、ぐっと心を捕まされ興味を持った瞬間である。

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「Virtual to LIVE 」の歌唱メンバーとして、東方Projectに迫る勢いで増え続けるにじさんじライバーの中から12人が選ばれており、その中にジョー・力一が居た。
当時は男性ライバーについて興味・理解が薄く、かわいい美少女が蔓延るVtuber界隈ではニッチな存在として捉えていた。
(同じく出演している男性ライバーの剣持くんについては、古くからにじさんじを支えている存在として多少知っていて受け入れていた)

今となっては、ライバーの性別など関係なくおっさん同士のV呑みコラボなんかも楽しんでいるが、その入口を切り開いてくれたのは彼であった。

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ここからはジョー・力一の活動を動画を踏まえて紹介する。

活動内容(定期)

まずは基本的に毎週配信しているである「りきいちファーム」。
1週間の活動を振り返った後に、毎回お題を用意してネタ出しを行っていく。

人を選ぶ配信ではあるが、面白い事を探っていく過程を楽しめる人にとってはとことん面白い内容となっている。(地獄のようなボケもしてくるが)。

例を上げていくと
第41回 「『いい大人が』昔話」
いろいろな昔話に「いい大人」というキーワードを挟むとどうなるというのが話のテーマ。
"走れメロス"、"おきなかぶ"等の既存作品からネタを考えていく。
"三匹のこぶた"を軸に考えた時には、実家暮らしの無職ないい大人である子豚三兄弟を、母親がお父さんも定年近いし実家から出て自活してと切り出すところから物語は始まる。そこから現実が見えていない、いい大人な三兄弟の言い訳が始まり、実家から出て元ネタ通りそれぞれの家を立てていく。

これをアドリブの軽快な語り口で面白へと昇華させているのが、力一の凄さである。三兄弟が自立した後に旦那も仕事に行った後、お母さんが午前11時に白ワインを開けるシーンには生々しい質感を感じた。

第33回 「テーマパークのスタッフ気分でグイグイ生きる」
テーマパークのスタッフは明るく親切でグイグイ来る感じが羨ましいという話から始まり、世の中をスタッフの感じで生きれば暮らしが良くなるんじゃないかと考えていく。
こういう普遍的な日常をひねって考えていくしょうもないテーマも案外多く、ついつい笑ってしまう。

第2回 「サンダーって生きづらいよね」
ポケモンのルギアって気持ちで飛んでるよねという話から、サンダーの話になる。関節がなくパキパキの翼だけしかないからつらそうだし、飛行機に乗る時は羽がたためないから3席分とっちゃって乗れないよねって話。
この後に、サンダーより生きにくそうなポケモンについて考察していく。
こういう突飛な発想から出てくる考察系雑談も見どころの一つだ。

流石に初見の方だと毎回2時間を超える深夜の一人喋りはハードルが高いと思うので、気になる方は有志が作成した切り抜き動画から見るといいだろう。
以下の動画は丁寧に編集がされていて見やすい。


次に隔週配信を行っている深夜ラジオ「舞元力一」。
このラジオは、にじさんじ所属34歳の農家(マジ)のおっさんライバー"舞元啓介"と二人でパーソナリティを努めている。

この舞元という男もVtuberのメインストリームから外れて我が道を行くライバーで、息の合った二人の掛け合いが楽しめる。

特に人気コーナーである「今日のひとくち嘘ニュース」は、深夜ラジオによくあるハガキ職人の腕が発揮されるコーナーであり必見だ。


活動内容(歌・コラボ)

このピエロ、歌唱力が高く音域が広い
平沢進を始めとして筋肉少女帯、電気グルーヴ、椎名林檎の楽曲を見事に歌い上げる。
アップロードされている単発動画の中で代表的なものだと、町田ちまと歌った「獣ゆく細道」だろうか。

リアルライブでは布施明の往年の名曲「君は薔薇より美しい」を始め、米米CLUB「アブラカタブラ」や、大槻ケンヂもブログで反応するほど話題となった「林檎もぎれビーム!」も素晴らしかった。

花畑チャイカとのユニット曲、「サブリミナル・シンクロニシティ」は楽曲としてのクオリティが高く必聴だ。ファンからは旧宝島とも言われている。


RRR(鷹宮リオン・竜胆尊とのユニット)とのカラオケ配信では、途中からものまねの無茶振りにアドリブで答えながら歌う姿にピエロの天才ぶりを感じる。


またコラボ動画では、主に大喜利系の企画で力を発揮している。

女子校花畑
深夜に長時間大喜利をする企画。
前提知識としてにじさんじを軽く知っておかないと厳しいが、この4人がローテンションで大喜利を考えていく過程と空気感含めて面白い。

ポケモンのくらしラボ
珍しい力一主催の企画。現代社会に暮らすポケモンについて考える1時間。
運命に抗い水泳大会に挑むゼニガメとニョロボンは見どころの一つ。

【本人希望】引退したメンバーでエピソードゲーム
引退した名伽尾アズマとのエピソードトークを話す企画。
エピソードが無さそうな力一だが、みんなでピクニックをした嘘100%の思い出を語りだす。


RRRという鷹宮リオン・竜胆尊と共にユニットとしても活動しており、立場の弱いポジションで振り回される姿を見ることができる。


活動内容(その他)

単発動画
小ネタ動画集などの単発動画も定期的に投稿している。
活動初期に投稿された「にじさんじオーディションの思い出」では、彼を語る上で欠かせないオーディション前にでっち上げたキャラクター鹿鳴館キリコの話が聞ける。


ボイス

にじさんじのライバーは、定期的にBoothで期間限定個人ボイスを販売している。
かわいい女性ライバーに混じって偶に力一のも買ったことがあるのだが、どれもクオリティが高い。

特に去年のハロウィンボイスは名作だった、
話の概要を軽く書くと(以下ネタバレ注意)。

「ようやく…ようやく目を覚ましてくれたね」
ハロウィン当日、天才博士リキチャンシュタイン最高傑作と呼ぶ者が目覚める。
「やはり私は天才だった。天才に不可能はない、その証拠がお前だ。」
民衆や学会の老人共に自分の天才性を証明できると息巻き、生まれたばかりの最高傑作に語りかける。
この世に生を受けたからには、誰だって目一杯楽しむ権利がある。
この日のために作っておいたという洋服を着させ、夜の祭りへと二人で繰り出す。

道中仮装した子ども達に出会う。
最高傑作は博士お手製のキャンディを渡そうとするが逃げられてしまう。
「子供相手はいつもこうだ」と博士は呟く。
悲しい顔した最高傑作に、
「もうじき世界中の皆がお前の友達になってくれるさ。」と博士は慰める。

パーティ会場に二人で忍び込む、趣向を凝らしたお菓子食べさせ楽しい気持ちになるか聞き、その答えに「そうかそうか、味覚受容器正常...」と満足気に喜ぶ。
会場を物色していると最高傑作は魔女の家を象った立派なケーキに興味を示す。
博士はメインディッシュであり、おそらく参加者全員に振る舞われるものだろうと説明するも、言葉を詰まらせ言い直す
二人で全部食べるぞ〜!今のうちだ!!

二人でケーキをがっつき、博士は俗の幸せを感じていると周りに気づかれてしまう。逃げるぞと最高傑作に言い、周囲に「失敬失敬、ハッピーハロウィン!」と楽しげに捨て台詞を吐き二人で脱走する。
「ケーキの食べかすを落としたりするんじゃあ無いぞ、ヘンゼルとグレーテルはそれで足がついたんだ。」

...

博士はオカルトなど信じない、しかし今日という日に最高傑作を生み出した事で運命を感じている事に調子が狂っているのだろうと思っていた。

最高傑作に語りかける
明日から味気ない日常に戻るが、私とお前だけは目一杯楽しく生きてやろう。
そしていつかは世界中のどいつもこいつも...、(略)

このセリフの続きからクライマックスは、2019ハロウィンボイスが再販されたら自分買って聞いて欲しい。
心温まる絵本のような物語に演技力の高さが相まって、完成度の高い作品になっている。

脚本・演出も全て自分でやっているというのだから恐ろしい。女児アニメ愛好家でプリキュアを観ている経験がここに活かされているのだろうか。

ボイス事情についてはちょっとだけ買った程度なので詳しくないが、何やら女性ファンは毎回心を乱されているらしい。一体普段はどんなボイスを出してんだ。


まとめ

Rain Dropsのメンバーとしてメジャーデビューを果たしたジョー・力一。
つい最近には、偶に聞いていたFMラジオ「沈黙の金曜日」に出演しラジオスターとも評される"アルコアンドピース"と共演していたものだから驚きである。


素は緊張しいで繊細な面が見え隠れしているが、常に期待を上回ったパフォーマンスを提供してくれている。プロの道化師としてどこまで進んでいき何を魅せてくれるのだろう、V業界の躍進も合わせて楽しみだ。


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