3.ジャズ+ファンク+エレクトリック+民族音楽としての名盤『On The Corner』
このマガジンではタイトル通り、私、The JazztechnoiseのリーダーにしてプロデューサーであるDJ.Plugmatics(DJ.プラグマティクス)の好きな音楽を書いていますが、Jazztechnoiseというユニット名を名乗っていることからも明らかなように、一番影響を受けているのはいわゆるエレクトロファンク時代のマイルス・デイヴィスです。ということでマイルスについてはひとまとめではなく、アルバムごとにいくつか語っていきたいと思います。
まず、紹介したいのはこちらの『On The Corner』というアルバムです。
まあ、とにかくかっこいいです。1972年発表のアルバムで当時のジャズファンにとっては「?」だったでしょうが、当時、このスタイルで精力的にライブ活動とスタジオセッションを重ねていたマイルス本人は納得のアルバムなのではないでしょうか。
マイルスのアルバムでありながら、もはやマイルスのトランペットソロはそんなにというか、いわゆる「ソロ」としてはほとんどありません。ましてやその トランペットソロもエフェクターががんがんにかかっており、いわゆるトランペットの音色ではありません。しかし、そこはもともとミュートの音がトレードマークであったマイルスのこと、音を加工するのはむしろ当然のことなのでしょう。だれも聞いたことのない音、しかし、前衛に行くのではなくあくまでライブでも乗れる曲、それを当時のマイルスは目指していたのではないかと勝手に想像します。
さらにこのアルバム、スタジオ版ということもあり、いわゆるオールスターメンバーが揃っています。既にライブメンバーからは抜けていた、ハービー・ハンコック、チック・コリア、ジョン・マクラフリンといった、マイルスのみならず、いわゆるマイルス・ファミリーファンの大好きなメンバーも戻ってきています。親分が声をかければ断れない関係だったのでしょう。しかし、エレキギターのジョン・マクラフリンは当然と言えば当然ですが、ハービーとチックといったいわゆるコテコテのジャズの人にエレキとファンクの魅力を教え、その潜在能力をさらに引き出させたという意味で、やはりマイルスは天才だったと言えます。ほかに特筆すべきはこの時期のマイルスのバンドでサックス奏者を務めていたデイブ・リーブマンでしょうか。この人のサックスはジャズでもファンクでもない、この時期のマイルスバンドの音としか言いようのない音を奏でてくれます。
ということで、とにかくお薦めの一枚です。エレックトロファンク時代のマイルスはライブ盤が多いのですが、スタジオ制作版としてこれは不朽の名作です。
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