アマゾンプライムお薦めビデオ② 76 『平家物語』
さて、今回お薦めする作品はTVアニメとして2021年に放送された『平家物語』です。
まあ、日本人であれば「盛者必衰の理を表す」平家の話は知っているであろう。勝つ側に視点を置く作品が多いのに対し、負ける側、滅びる側に視点を置いたこの平家の話が人々の涙を誘うのはいかにも日本的であると言える。そう、この話が古今東西、老若男女を問わずいまでも人々の心を打つのはこの「視点」があるから、滅びる側に寄り添った「視点」があるからである。
そしてこのアニメ版の『平家物語』もまさに「目」の話、「視点」の話である。
ストーリーはみんな知っている、その話はもう知っている、とiうものを新たに作品にする場合、当然それはストーリーを売りにはできない。そこにこそ作品を作る側の挑戦があるし、この作品はその挑戦に見事に成功している。時代モノアニメの傑作として故高畑勲氏の『かぐや姫の物語』が挙げられるが、この作品も決してそれに負けていない。アニメの魅力は絵と絵の動きにある。その事実を改めて示してくれた作品である。
監督は『けいおん』『聲の形』『響け! ユーフォニアム』などの 山田 尚子氏、で制作は長らく湯浅政明氏が代表を務めていた「サイエンスSARU」である。音楽もの、音ものを得意とする山田監督だけあり、琵琶の使い方もうまい(そもそも「平家物語」は読み物というよりも琵琶法師による演奏と語りのパフォーマンス=演芸文学である)。先にアニメの魅力として絵と絵の動きを挙げたが(そしてこの絵と絵の動きの魅力を最大限に使っているのもう一人の人物が湯浅監督でもあるが)音楽もその魅力の構成要素として挙げられよう。今回は(というか山田作品では今回も)音楽=楽器は劇伴というよりももはやもう一つの登場人物である。事実このアニメ版『平家物語』の主人公の名前はその名も「琵琶」である。
そしてこの作品、山田監督のサイエンスSARUでのデビュー作となったのに対し、一方で湯浅監督のサイエンスSARUでの監督最終作?となった『犬王』ともつながっている。『犬王』もいずれ取り上げたい作品であるが(Amazon prime videoで見られるようになるのを期待しています)こちらも「フェス映画」の異名通り、まさに音楽アニメである。このタイプの異なる現代の名匠がこのような形でリンクした作品を作り上げたことは、我々アニメファンの記憶と記憶に残るだろう。そして両者の今後のさらなる活躍が期待できる。
と、とにかくお薦めです。是非ご覧ください。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?