見出し画像

アマゾンプライムお薦めビデオ④ 152:ドロンジョのドラマでもあり同時にヤッターマン側のドラマでもある。ドラマ『ドロンジョ』

今回紹介するのは、あの「ヤッターマン」の悪役(というかワル役)にして我らがミューズ!ドロンジョ様誕生までのストーリーを、映画『ジョーカー』タッチで描いた秀作ドラマ『ドロンジョ』です。このドラマ、もともとはタツノコプロ創立60周年記念ドラマとして、2022年WOWOWで放送されたドラマだそうですが、そのまま埋もれてしまうのはもったいない。こうしてアマゾンプライムビデオに載ることで、改めて再評価されること間違いなしでしょう。

先に『ジョーカー』を引き合いに出しましたが、作り手側がそれを意識しているのは間違いありません。そう、悪には悪の言い分があるのです。しかし、『ジョーカー』がそれを描いたにとどまったのに加え、こちらはいわゆる正義側、『ヤッターマン』側の事情(=言い分)も見事に描いています。ドラマとしての主演はドロンジョを演じた池田エライザ氏ですが、ある意味裏主役はヤッターマン2号ことアイちゃんを演じた山崎紘菜氏と言ってもいでしょう。この方、もうすでに俳優として十分に評価されていますが、もっともっと評価されて、そしてもっともっと活躍してしかるべき方です。あの、大林宣彦監督がその晩年の一連の作品群に秘蔵っ子的に採用していたのにも十分納得がいきます。確かに存在感としては池田エライザ氏のほうが光り輝いているかもしれませんが、それに対して山崎氏は見事に演技で対抗しています。かわいい顔、きりっとした顔、泣き崩れた顔、怒りに満ちた顔、そして喜びを見つけた時の顔、ちょっとした表情の変化だけでそれらを見事に表現しています。そして運動神経もいい!恐らく実際にトレーニングの一つとしてボクシングをやっているのでしょう。とにかく動きにキレがあり、アクションシーンも十分見ごたえがあります。

と、山崎氏を絶賛しましたが、それを光らせているのはやはりそのストーリーというか脚本のうまさでしょう。そう、このドラマ、実は「正義とは何か」がそのテーマなのです。あなたの正義はみんなの正義ではない、しかし、それは決して悪を容認することでもない。というか正義の対義語は辞書的には悪となるがが、実際にはそうではない、この両者(正義か悪か)はそのような単純な表か裏かの問題ではない、というのがこのドラマが伝えたいメッセージでしょう。そして実は、そのメッセージはオリジナルの「ヤッターマン」にも既にありましたし(だからドロンジョ一味はあれだけの人気キャラなのです)、さらに言えばタツノコプロは常にそれを作品の中で見せてくれました。ガッチャマンしかり、キャシャーンしかり、ミツバチはっちしかり、そしてコメディ色が強いタイムボカンシリーズしかりです。これらの作品を子供時代に見た人たちが、今は作り手側になっているのです。その意味で、タツノコプロの遺伝子は(けっしてプロダクション自体がなくなったわけではないが、作品作りのペースは落ちているのは事実)しっかりと継承されていると言えるでしょう。このドラマの原作として「「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」(1977年制作)」としっかりとクレジットされているのはそのためです。子供たちは決してタツノコプロの一連の作品を単なる娯楽として見ていたのではないのです。もちろんタツノコプロ作品の魅力は人物もメカもそのカッコよくかわいいキャラクターデザインにこそありましたが、子供たちなりにそこにあるテーマを、そこにあるメッセージを、子供たちなりに考えてながら見ていたのです。

ということで、このドラマ、当時の「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」を知っている人はもちろん、知らない世代の人たちへのお薦めです。最後は見事、当時の「タイムボカンシリーズ ヤッターマン」へと戻って着地してくれますので、このドラマを見てから往年のアニメシリーズを見てみてもいいでしょう。

この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?