フィアンセ

女︰ん……。らめぇだよ……。
ここ、会社だよ?

男︰大丈夫だよ。誰も来ないから。

女︰そんなのわからないじゃないですか?
男︰俺、誰だか知ってる?

女︰はい……。
男︰なら。誰も来ない理由わかるよね?

女︰!!!
男︰そういうこと。

女︰(涙が頬を伝う)
男︰なんだよ。泣いてるのか? 

女︰……。 
男︰しらけるなぁ。

男︰今日は、逃してやるよ。泣いてる女をどうこうするような趣味はなくてね。

女︰……。
男︰ん?なんだ?逃げないのか?

女︰男なんて……。
男︰ん?男がどうした?

女︰なんでもありません。
男︰そうか?
女︰はい。

男︰逃げないなら、続きするぞ?
女︰もうどうでもいいです。
どうせ、あと1ヶ月で死ぬんですから。

男︰ん?なんでだ?
女︰あと1ヶ月で帰ってきちゃうんです。

男︰誰が?
女︰フィアンセです。

男︰わからんなぁ。普通、喜ぶんじゃないのか?

女︰ええ。普通なら。
男︰ん?

女︰彼は尋常じゃない束縛をします。

嫉妬もすごいんです。
なので、私はどこにも行ってはダメなんです。

だから、彼から逃げたくて
色々な男性のところ行くのだけど、

今のような状態になると、
いつも涙が頬を伝って、相手が止める。

そのときに、いつも思うの。なんで、あんな束縛御曹司が好きなんだろうって。

男︰そうか……。きっとそのダメさが魅力になってしまってるんだな……。

女︰……。そうかもしれません。
男︰だけど、その手の男は女を幸せにできない。

御曹司ってことは、金はあるだろうけど。

ほんとは、そのことに気づいているんだろ?

女︰はい。
男︰しかし、わからんな。
彼氏がダメ男なのは、わかったが、

それとあと1ヶ月の命というのは、どう関係するんだ?

女︰それは……。私の心とカラダの限界があと1ヶ月ってことです。

私は、猫のような女ですから、束縛は、らしさを奪われます。

そうなると、いのちが消耗します。

それでも、好きだから誤魔化してきましたけど……。もう、ムリです。

男︰なるほどな。何か方法はないのか?
女︰……。あることにはあるのですが…

男︰なんだ?
女︰いまの彼氏より惚れることができる相手をみつけて、関係を持つことです。

男︰なるほど。で。見つかったのか?
女︰いいえ。

男︰なら協力してやるよ?
女︰でも……。

男︰なんだ?ろくでもない男が最後の男でいいのか?

そんな傷ついたままでいのちの灯が消えてもいいのか?

女︰イヤです。 
男︰じゃあ決まりだな。こっちへおいで。

女︰……。
男︰大丈夫。「今日は」何もしないから。ゆっくりとな。

女︰……。
男︰やっと俺の女になったか……。

ここまで落とすのに時間かかったのはじめてだ。

その分、俺も執着しちゃうかもしれないけど、覚悟しとけよ?

女︰えっ?執着されたら、いまの彼と同じになりますよね?

男︰いいや。違う。俺の束縛は、お前を幸せにする束縛だ。

女︰???
男︰お前以外の女なんてこの先ずっといらない。

だから、結婚を前提に付き合ってくれ!

女︰!!!
女︰本気ですか?

男︰あゝ。
女︰(小さく頷く)

男︰よかった。じゃあ。いまの返事がなかったことにならないように「証拠」ほしいな。

女︰!!!
男︰はは。安心しろ。お前からしろなんて言わないから。
だけど、受け取れよ?

女︰(小さく頷く)

(熱い抱擁とディープキス)

男︰さぁ。帰ろうか。
女︰はい。

(カラダが離れる)
女︰……。(物足りない…)

男︰(照れながら)おっ。月が綺麗だな。

女︰それって……。
男︰ん?あゝ。そうか。

まぁ。その意味もあるけど、
さっきプロポーズしたからわざわざ改めて言うことでもないから……。

純粋に月が綺麗だなと。

女︰そうなんですか……。
男︰ん?なんだ残念だったのか?

女︰はい。他の女性(ひと)は、どうか知りませんが、
私は、何度でも聞きたいです。

男︰そうか……。
女︰はい。だから……。
もう一度、さっきのを……。

男︰わかった。
男は、そういうと、彼女の
望むまま熱い抱擁とディープなキスをした。

そして、わたしたちは、ゆっくりと愛を育み
無事結婚し、子どもも授かった。

これも、束縛彼氏のおかげかと思うとなんだか不思議な気分だ。

今宵の月は、いつにも増して美しかった。

はじめましてたかはしあやと申します。 記事作成・キャッチコピー・タイトル付けを 生業としておりますが このままだと止めないと いけなくなるかもという位 金銭的に困っていますので、 サポートをしてもらえると 泣いて喜びます。 どうぞよろしくお願い致します。