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【目指せソムリエ#13】世界を魅了する特別な泡、シャンパーニュ

はじめに


ナポレオンは「シャンパーニュは戦いに勝った時は飲む価値があり、負けたときには飲む必要がある。」と、ココ・シャネル「私は二つの時にしかシャンパンを飲まない。恋をしている時と、していない時。」という言葉を残しました。

なんだ、みんないつもシャンパーニュが飲みたいのね!その気持ち、とってもよくわかります!今回は、そんな世界を魅了する特別なスパークリングワインの産地、シャンパーニュ地方についてです。

シャンパーニュ地方は比較的覚える事は少ないので、ポイントを押さえ確実に得点につなげられるようにしましょう!格付け100%の畑や製造工程、甘辛度の表示は特に要チェックです。

シャンパーニュの概要

シャンパーニュ地方はパリから東に約140kmの場所に位置し、フランスのブドウ栽培地としてはほぼ北限に位置しています。


この地方では、約15,000軒の栽培農家がおよそ400の大手生産者であるメゾンにプドウを供給しており、メゾンが生産するシャンパーニュの出荷量の7割を占めています。歴代のフランス国王たちが戴冠式を挙行したランスの大聖堂もこの地方にあり、2015年には「シャンパーニュの丘陵、メゾンとカーヴ」としてユネスコの世界文化遺産に登録されました。

シャンパーニュ地方の気候は、大陸性気候海洋性気候が混じったもので、年間平均気温は11℃、年間日照時間は1680時間、年間降水量は700mmとなっています。また、マルヌ県では白亜質、オーブ県ではジュラ紀キンメリジャンの泥灰質などの土壌が広がり、マルヌ、オーブ、エーヌ、セーヌ・エ・マルヌ、オート・マルヌの5つの地域でシャンパーニュが生産されています。

シャンパーニュはイギリスやアメリカに多く出荷されていますが、それに次いで日本は世界第3位の輸出先となっています!(2020年はコロナ禍の影響で全体的なシャンパーニュの輸出量が15%程減少してしまいました)

シャンパーニュの歴史

シャンパーニュ地方では4世紀頃に古代ローマ人によりブドウ栽培がもたらされ、中世には修道士たちが畑を広げ、マルヌ川を利用して各地に非発泡性のワインを出荷していました。

シャンパーニュが誕生したのは偶然だったと言われています。シャンパーニュ地方は寒冷な気候であり、ブドウの収穫時期には酵母が途中で活動を止め、発酵が中断されることがよくあります。このような状態のワインが樽に詰められたままイギリスに渡り、ガラス瓶とコルク栓が普及していたイギリスで瓶詰めされました。そして、春が訪れ暖かくなると酵母が再び活動を再開します。この再発酵によって生じた炭酸ガスが逃げ場を失い、ワインの中に封じ込められることで、泡立つワインであるシャンパーニュが誕生したと考えられています。

1663年には英国の詩人サミュエル・パトラーが「ヒューディブラス」に発泡性シャンパーニュについて記し、1728年には国王ルイ15世がガラス瓶に詰められたワインの流通を許可しました。

1729年には、メゾン・ルイナールが創設され、発泡性シャンパーニュが商業化されました。そして1908年には、シャンパーニュ地方の境界線が最初に引かれましたが、オーブ県を含めるかどうかで紛争があり、1927年にはオーブ県を含めた境界線が確定しました。

シャンパーニュのブドウ品種

シャンパーニュの主要なブドウ品種には、白ブドウのシャルドネ、黒ブドウのピノ・ノワールムニエがあります。

シャルドネは、シャンパーニュに繊細さ新鮮味を与え、長期熟成を可能にします。ピノ・ノワールは、シャンパーニュにボディ骨格をもたらし、ムニエはフルーティーさしなやかさを与えます。これら3つの品種がシャンパーニュの主要なブドウ品種です!他にも4品種の白ブドウが認められていますが、その他の品種は栽培面積がすべて合わせても全体の1%に満たない量となっています。

シャンパーニュの郷土料理

シャンパーニュといえば華やかでラグジュアリーなスパークリングワインというイメージが強く、合わせる料理も高級フランス料理で・・というイメージが強いのですが、意外にもシャンパーニュ地方の郷土料理は素朴なものが多いのです。

また、シャンパーニュ地方に行くと、お土産屋さんには必ずピンク色の焼き菓子、ビスキュイ・ローズ・ド・ランスが売っています。実は人工的な着色料ではなく、カイガラムシから抽出された天然の色素で色付けしているそうです・・!

牛乳から造られた白カビチーズのシャウルスウォッシュチーズの
ラングル
は日本でもたまに見かけます。ラングルはチーズの中央にくぼみがあって、そこにシャンパンやマール酒を注いで食べるという食べ方もあるそうです!試みてみたいですね!!

シャンパーニュの種類

シャンパーニュには、収穫年が記載されているものと、記載されていないものがあります。

収穫年が記載されていないノン・ヴィンテージ (ノン・ミレジメ)は、各メゾンの主力アイテムであり、毎年一定の品質を保つことが難しい厳しい気候のシャンパーニュで、過去に収穫したワインを取り置き、その年のワインとブレンドすることで品質の安定化を図ります。これにより、メゾン独自のスタイルを打ち出すことができます。ノン・ヴィンテージは、複数の収穫年のワインをブレンドするため、収穫年が無表示となります。

一方、ヴィンテージ (ミレジメ)は、優良年や特徴的な年に収穫されたブドウを使用し、単一収穫年のシャンパーニュを造ります。このワインは、二次発酵のための瓶詰めから最低36ヵ月間という長い熟成を経て出荷されます。ヴィンテージは、その年の気候や収穫状況によって味わいが異なるため、各年によって異なる特徴を持ちます。

Bollinger 公式サイトより


プレステージ・キュヴェ (キュヴェ・プレスティージュ)とは、各メゾンのフラッグシップのワインです。

例えば、Dom Pérignon(ドン・ペリニョン)はMOET&CHANDON(モエ・エ・シャンドン)社の特別なプレステージ・キュヴェとしてリリースされています。

Dom Perignon 公式サイトより

ブラン・ド・ブラン (Blanc de Blancs)とは、白ブドウのみを使用して作られたシャンパーニュを指し、主にシャルドネに使用されます。

ブラン・ド・ノワール (Blanc de Noirs)とは、黒ブドウのみを使用して作られたシャンパーニュを指し、「黒の白」という意味を持ちます。主にピノ・ノワールやピノ・ムニエが使用されます。

Blanc はフランス語で白、 Noir はフランス語で黒という意味です!


シャンパーニュの生産地区

シャンパーニュ地方には4大ブドウ栽培地があり、それぞれの地区に特徴があります。品種的な特徴で言うと、北部のモンターニュ・ド・ランスと南部のコート・デ・バールではピノ・ノワール、ヴァレ・ド・ラ・マルヌはムニエ、コート・デ・ブランではシャルドネが主に栽培されています。

ちなみに、モンターニュはフランス語で山、ヴァレは谷、コートは丘という意味です。これらのワードは他の産地でもよく出てきます♪

シャンパーニュのAOC

A.O.C. シャンパーニュはスパークリングワインのみなのですが、シャンパーニュにはコトー・シャンプノワロゼ・デ・リセイと呼ばれるスティルワインのA.O.C.が二つ存在します。

赤●のついたA.O.Cは赤ワイン、緑●は白ワイン、ピンク●はロゼワイン、
◉はスパークリングワインを生産することが可能です。

地区と村の格付け

シャンパーニュ地方で特定の村で収穫されたブドウを使用した場合にはグラン・クリュプルミエ・クリュの表示が認められています。

グラン・クリュは格付け100%クリュのブドウだけで造ったワイン、プルミエ・クリュは格付け90%クリュ以上のブドウだけで造ったワインに認められています。

シャンパーニュ地方のグラン・クリュとプルミエ・クリュはモンターニュ・ド・ランス地区、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区、コート・デ・ブラン地区に集中しています。グラン・クリュとして格付けされている村はモンターニュ・ド・ランス地区に9村、ヴァレ・ド・ラ・マルヌ地区に2村、コート・デ・ブラン地区に6村あります。どこの村がどこの地区にあるのか覚えましょう!

少ないところから覚える癖をつけるといいと思います。まずはヴァレ・ド・ラ・マルヌの2村。ひとつはマルヌと入っているので覚えるまでもありませんね!

次に、コート・デ・ブランはOやCから始まる村が多いですが、モンターニュ・ド・ランスにはOやCから始まる村はないので、見分ける手助けになりそうですね!

シャンパーニュの醸造方法

A.O.C.シャンパーニュではスティルワインを瓶に詰め、糖分と酵母を加え密閉して、瓶内で第二次発酵を促すトラディショナル方式(伝統方式)という製法を必ず用いなければなりません。その製法を細かく説明していきます。

まず最初にブドウを圧搾し、得られた果汁をタンクに入れて不純物を沈殿させる果汁清澄という作業を行います。その後、清澄した果汁をアルコール発酵させ、オプション的にMLF発酵をさせます。新鮮味を残すためにあえてMLF発酵を行わない生産者もいます。

発酵したキュヴェが落ち着いたら、異なる品種やクリュ(畑)のワインをブレンド(アッサンブラージュ) します。ノン・ヴィンテージの場合はここでリザーヴ・ワインを加えて、品質の安定化・スタイルの普遍化を図ります。その後、瓶詰め作業を行い、リキュール・ド・ティラージュ(ワイン、酵母、糖の混合液)を加えます。

瓶詰め後、リキュール・ド・ティラージュにより瓶内で再び発酵が起こり、炭酸ガスが発生します。

その後、ボトルを水平にして暗く涼しい熟成庫で保管し、二次発酵で生じた滓(役目を終えた酵母)が自己消化を起こしてワインに溶け込み、複雑な香味を醸成します。瓶内熟成後、ボトルを動かして滓を瓶口に集め、滓を取り除く作業を行います。このとき、瓶口を-27℃の溶液に浸して滓ごと凍らせて抜栓し、瓶内のガス圧で凍った滓の塊を飛び出させます。

最後に、甘味調整のためにリキュール・デクスペディションまたはリキュール・ド・ドサージュという液体を滓抜き後のシャンパーニュに添加し糖分を調整します。最後に、コルクを打ち込み、金属製の止め板と針金を組み合わせたミュズレで固定します。

工程は日本語だけでなく、英語・フランス語でも言えるように何度も確認しましょう!


シャンパーニュ製法以外のスパークリングワインの製法については【目指せソムリエ#9】ワインをデザインする - ワイン概論④醸造 - で学びましたね。もう一度見直しておきましょう!

ラベル表示用語

生産者の登録業態とその略号


シャンパーニュの生産者は、その業態に応じてCIVC (シャンパーニュ委員会)に登録されており、ラベルにはその略号(アルファベット2文字)が記載されます。

最も多く流通しているのはNM(ネゴシアン・マニピュラン)で、原料を他の栽培農家等から購入するメゾンを表します。自社畑を所有している場合もあります。

RM(レコルタン・マニピュラン)は自社畑のブドウのみで醸造する栽培農家を表します。

CM(コーペラティヴ・ド・マニピュラシオン)は、生産者協同組合を表します。加盟栽培農家のブドウを用いて、醸造から販売までを行います。

RC(レコルタン・コーペラトゥール)は、共同組合にて委託醸造したワインを買い取り、自社銘柄で販売する栽培農家を表します。

SR(ソシエテ・ド・レコルタン)は、一族の所有する畑の原料を用いて、醸造・販売する栽培農家を表します。

ND(ネゴシアン・ディストリビュトゥール)は、完成したシャンパーニュを購入し、自社ブランドのラベルを貼って販売する流通業者を表します。

MA(マルク・ダシュトゥール)は、スーパーマーケットやレストランのプライベート・ラベルが貼られたシャンパーニュを指します。

少し遠回りになるかもしれませんが・・・登場するアルファベットの意味を理解すると、イメージが持ちやすく、覚えるヒントになるかと思います!
N(ネゴシアン) → 取引業社
M(マニピュラン) → 扱う・製造する
R(レコルタン) → 収穫する
C(コーペラティヴ・コーペラトゥール) → 協同組合
S(ソシエテ) → 会社
D(ディストリビュトゥール) → 販売業社
M(マルク) → 英語で言うマーク。印。
A(アシュトゥール) → 購買者

甘辛度表示

シャンパーニュのラベルには、そのワインの残糖度合いを表す言葉が表示されます。

まず、糖分添加をしておらず残糖度が3g/ℓ未満の場合には、Brut Nature(ブリュット・ナチュール)Pas Dose(パ・ドゼ)Dosage Zero(ドサージュ・ゼロ)などの表示が認められています。

Extra Brut(エクストラ・ブリュット)は最もドライで、残糖度が0〜6g/ℓ未満です。Brut(ブリュット)はExtra Brutよりも少しだけ甘く、残糖度が12g/ℓ未満です。

Extra Dry(エクストラ・ドライ)は残糖度が12g/ℓ未満ですが、Brutよりもやや甘く、Sec(セック)は残糖度が12〜17g/ℓと、優しい甘口です。Demi-Sec(ドゥミ・セック)は更に甘さが増し残糖度が32〜50g/ℓで、Doux(ドゥー)は残糖度が50g/ℓ以上の極甘口となっています。

おわりに

ここまで読んで下さったプレ・ソムリエさん、お疲れ様でした!シャンパーニュも覚える事はたくさんありますが、ボルドーの後だと比較的優しく感じますね ꉂꉂ ( ˆᴗˆ )

プルールではボルドーをはじめ、世界各国のワインを取り扱っています。
オンラインショップにはほんの一部のみの掲載なので、ワインをご希望の方はお気軽にこちらまでご相談ください☆
また、よく見直しをしているつもりなのですが、noteの間違いに気がついた方はこっそり教えて頂けるととても助かりますm(_ _)m


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