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『アデル・30』アルバムレビュー【音楽】

アデル 30

はいということで本日はアデルで30をレビューしていければと思います。

グラミー賞主要3部門を連続で獲得した前作の25以来6年ぶりのアルバムにて

全世界が待ち望んだアルバムです。

2012年に結婚した恋人ともこの6年間の間に破局し、子供が生まれ、

様々の経験を経て変化し母親になり

母親として、一人の女性・人間としての葛藤が

美しく、ノスタルジックな音とともに響いてきます。

このアルバムを制作するにあたり彼女はインタビューで「3年前にこのアルバムの制作を始めた頃、こんなに願っていたものになるとは思ってもいなかった。日々のルーティーンに頼り、安全圏で生活をしていた。と同時に自分では望んでいたとてつもない混乱と動揺の迷路に自分を投げ出していた。自分自身に血豆ができるほど向き合い、多くの古い過去を脱ぎ捨ては新しい時間に身を包み自分自身を導いてくれる本物のメンタリティーを見つけた。遂にあの時の感覚を取り戻したような気がする

このアルバムは死ぬか生きるかというほどに荒れた時期のことを歌っていて、家でずっと

啜り泣いていた時に友人が励ましてくれたお陰で立ち直るきっかけをくれたことで作ることが出来た。」と述べております。

今作はプロデューサーとして先日も映画作曲家として紹介させていただいたルデュウィグゴランソンを迎え入れ今作されていて曲のミックスもより壮大にだけど綿密に緊密に絡み合っています。曲の順番も時系列で並べられていて、このアルバムに関してはこの曲順で聴くことをアデルが強く願っています。

1. "Strangers By Nature"

うっとりと夢の中・アルバムの中に引きずり混まれるようにオーケストレーションと自宅のレコーディング部屋の音がミックスされた電子ピアノやクラシック楽器のコンビネーションが曲に微睡を生み出し、そこにアデルの胸から出される力強くだけど極限まで透き通った声が

夢で囁かれているような。中毒性のあるドラッグのような声で曲をコントロールし、広い砂漠の大地とイギリスロンドン近郊の庭園を同時に曲の中で体感できます。

2. "Easy On Me"

この川に価値なんてない。と彼女と別れた夫との関係を川に例え。

その川の水には希望があって、だけど静けさ(二人の冷めた関係)の中で溺れている私はそこに入ることはできない。と川を関係性に例えた歌詞と水のように流れていく二人の儚い関係性を表現したピアノは美しくも何処か殺風景でgo easy on meという歌詞は文字だけ見ると許してよ。という意味ではありますが、文脈を見てみるとなんでわかってくれないの。という皮肉が少し効いた苦しい時期の彼女の心の声なのかもしれません。

3分44秒もある曲なのに2分くらいに感じるほど川のように曲が過ぎ去り没入感の高い曲になります。

3. My Little Love

R&B+jazzyでパーカッシブなメロディーに注がれる息子への愛情と彼女の心苦しさ。

状況をまだ理解していない、純粋無垢な息子と

息子に対しての申し訳なさと自分や状況に対しての行き場のない悲しみが

今にも崩れ落ちそうな脆さと不安と共に彼女の声で語られます。

彼女の私生活を除いていると同時に、自分に重ね合わせてしまう人もいるのではないのでしょうか。

5. Oh My God

6. Can I Get It

ではこれまでのアデルよりグルーブの聴いたディスコナンバーになっています。

前半で後悔や哀しみを表現していたのに対し、この曲はそれらの悲しみは一旦置いておいて

独身になった人生を楽しもうというメッセージが歌われるのですが、何処か罪悪感のようなものがマイナー調のメロディーと湿っぽいグルーブに集約されているような気がして、

必死に楽しもうとしているアデルと彼女の過去や残されたものに対しての責任との狭間で葛藤する様が描かれた、雨の夜にぴったりのナンバーになっていると思います。

離婚を通して学んだ過ちを繰り返すのではなく、それを糧に進みたいとアデルが語るように

両方の曲とも楽しむことに対しての責任というか後ろめたさをまだ何処かに感じていることが聴いていて感じられたナンバーです。

7. I Drink Wine

とにかくピアノのメロディーが美しくパキッとアコースティックのみで表現されるバッキングはずっと聴いていられるほどうっとりしています。

歌詞が凄く心に響きます。全ての打ちのめされている人に聴いてほしいです。

How can one become so bounded by choices that somebody else makes? How come we've both become a version of a person we don't even like? We're in love with the world, but the world just wants to bring us down By puttin' ideas in our heads that corrupt our hearts somehow When I was a child, every single thing could blow my mind Soaking it all up for fun, but now I only soak up wine They say to play hard, you work hard, find balance in the sacrifice And yet I don't know anybody who's truly satisfied

特に最後の語らい

The only regret I have I wish that it was just at a different time A most turbulent period of my life Why would I put that on you? That's just, like, a very heavy thing to have to talk about But because of that period of time Even though it was so much fun I didn't get to go on and make new memories with him There were just memories in a big storm

は彼女の後悔と前に向いた両方が感じられるアルバムの中で一番感動的な曲だと個人的に思います。

9. "Woman Like Me"

前の自分だったらこの曲は書けなかったとアデルが語るほど、

この曲は彼女の元夫との関係性が悲しい形で描かれています。

Complacency is the worst trait to have, are you crazy? You ain’t never had, ain't never had a woman like me It is so sad a man like you could be so lazy

静と動をたくみに使い分ける様は映画音楽のようで

彼女のドキュメンタリーを見ている気分になりました。

11.To Be Loved

この曲はクラシックなアデルの雰囲気が感じられる曲で、

このアルバムの中で一番生音のピアノが直接耳に響いてきて、

彼女の声が支えられることで、彼女の声の特性が最大限発揮されていて、

ゴスペル調のメロディーと特に最後のコーラスは

一人オーケストレーションかのように彼女の声のビブラントが耳の奥を揺らし

心を動かされます。

最後の曲 Love Is A Gameは

このアルバムのフィナーレに相応しい

クラシック、ポップ、ゴスペル、ジャズと

全てが詰まった壮大なアルバムです。

ディズニーランドのように起伏に溢れ

Love is a game for fools to play And I ain't fooling , what a cruel thingTo self-inflict that painと歌いながらも

最後には Oh, you know I'd do it all again I love it now like I loved it then I'm a fool for them You know I'm, you know I'm gonna do it, oh I'll do it all again like I did then

と傷つくとわかっていながらも

人はまた人を愛すのだと

最後のフィナーレは迫力と彼女の高い声はアルバムに余韻を持たせ

アルバムを祝うかのように映画のエンディングのように

祝福のような盛大なセレナーデとしてアルバムは終幕していきます。

全体的に見ると、

結婚をして母になり離婚を経験してと、

短い間に嵐のような出来事が体験した彼女の人生の1ページを

音楽で見せてくれる。ここまで曝け出されると、想像の余地をする好きがないほど

真実味に溢れていて、彼女の言葉が直線的に

様々な音楽的アプローチの表現方法と共に響いてくる様は

ドキュメンタリー映画見たいです。

30という数字は大人になる数字と見られますが、

この30歳という数字は彼女にとってはもう一度経験と共に子供のような気持ちに戻る再出発てんを表しているのかもしれません。

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