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『Taylor Swift・folklore』アルバムレビュー【音楽】

TaylorSwift

Folklore

はいということで本日は昨日サプライズリリースされた

Taylor swiftでfolkloreをレビューさせて頂ければと思うのですが、

今作は彼女の気まぐれ、夢、恐怖、物思いを注いだ楽曲が詰まっており、

隔離生活の中で作曲、レコーディングし、アルバム16曲中11曲はthe nationalのアーロンデスナーとの共同作曲になっており、ボンイベール等々、彼女が夢見てきたミュージシャンとの様々なコラボもされています。

この作品を作るにあたり、彼女はこのように述べております。

 「2020年が始まる前は、この音楽をリリースする“完璧”なタイミングについて多分考え過ぎていたでしょう。しかし、今私たちが生きる時代においては何も保証されていないと私に気づかせました」「もし愛しく思えるものを生み出したなら、それを世界に出すべきだと私は直感しました。これは私が受け入れられる不確かさの側面です。みなさん、心から愛しています」

個人的に彼女のドキュメンタリー映画で、都会の人混みやスターとして生きるプレッシャーに疲れ田舎暮らしをしていることは知っていたのですが、

このタイミングのサプライジングリリースは驚きでした。

気持ち的にはジョンメイヤーがパラダイスバレーを発表した時に近いかもしれません。

このアルバムを一言で表すなら、

「原点回帰」

です。

これまでポップスターとしてメディアに取り立たされ、

良い意味でも悪い意味でも、ファンが喜ぶ音楽を作ってきた彼女ですが、

今作は彼女の素の感覚が研ぎ澄まされた音楽で中学生の時に初めてテイラースウィフトを聴いた時のように新鮮で、それでいてこれまでの彼女の音楽の中で最も自然で音楽的にも非常にレベルが高く、個人的に過去作の中で一番好きです。

そういった意味で前作の「reputation」とは正反対に位置するアルバムになっていると思います。

前作は歌詞がとても直接的だったと思うのですが、

今作は歌詞と歌詞の間にスペースが生まれ、そこに彼女の息遣いや動きといった音楽的深みを体感できると思います。

The 1

落ち着いた雰囲気と重厚かつ優しいピアノが

テイラーのノスタルジアに共鳴し、

どこか森のコテージでカーディガンにくるまり焚き火をしている気分にさせてくれます。この曲は過去の失われた愛を懐かしむ曲になっていて、

もしも一つの間違いがなければ全ての結末が変わっていたかもしれないというとても切ない気持ちが

I persist and resist the temptation to ask you
If one thing had been different
Would everything be different today?

という歌詞から伝わります。

シンプルかつ重厚なアルバムの開幕です。

The last great American dynasty

この曲はアメリカ14代大統領のフランクリンピアースをアルコール依存症にしダメにしたと言われているジェーンをレベッカという人物に置き換え歌っているのですが、

アルコール依存症になり政権をぶち壊したのは大統領の責任なのに、素晴らしい時代を壊した女性と世間にファーストレディーが責められたことを女性の自由や人権のなさの皮肉に例えて歌っており、

I had a marvelous time ruining everything

と最後に私が素晴らしい時代をぶち壊したの という歌詞は

とても切なくテイラーが感じている女性の生きづらさを代弁しているのだと思いました。

どこかビートルズ・オノヨーコ問題にも通じるものがあってグッときました。

また、現代のトランプ政権の女性軽視を全く違う視点で批判しているのを感じ取ることが出来ます。

Exile

Bon Iver とのコラボレーションなのですが、

2人の良いとこどりみたいな曲です。

元彼が今の恋人に包まれているところを見てしまった、

テイラーとボンイヴァーの気持ちと、恋人がすぐに切り替えてしまう辛さをサウンドに乗せて届けています。

恋の終わりにサインがないことや、

これまでであれば未練の多い歌だった彼女が

成長しているのが伝わって

シンプルに美しいです。混じりけがないというか。

ボンイヴァーとの声が交わる部分は本当に癖になるというか

ずっと聴いていられます。 

Illicit affairs

今作勇逸のフィンガーピッキングソングになっており

どこか Phoebe Bridgers’ “Savior Complex.を想起させらるサウンドと

彼女の物語のような歌詞から情景を想起することができます。

最後の歌詞

“For you, I would ruin myself,” “A million little times.”

という切ない歌詞はこれまで彼女が男のせいにしてきた歌詞とは違い

自己犠牲の心が生まれている証だと思いました。

Mad Women

この曲は彼女のドキュメンタリー映画でも描かれていたのですが、

女性軽視を賛同しトランプ陣営を支持するテネシー上院議員のマーシャルブラックバーンを恐らく批判している曲になっていて。

彼女自身ブラックバーンに街を追い出されました。

その怒りが彷彿とこの曲には込められていて

Cause you took everything from me 

women like hunting witches too
Doing your dirtiest work for you
It's obvious that wanting me dead

という歌詞からは彼女のとてつもない怒りを感じます。

Mad womenという言葉は二つの意味を持っていると思います。

一つはブラックバーンを批判する頭がいかれた女という意味

もう一つは彼女自身の怒りの気持ちを込めて怒っている女性

一つの言葉に秘められた二つの対立構造を読み解いていくと

より深い部分で楽曲を楽しめると思います。

betty

この曲はアルバムの中で一番好きな曲で、

落ち着いたフォークギターとハーモニカ

優しく可愛いテイラーの声だけで何度も聴いていたくなる曲です。

個人的になんですけど、

聴いていて凄くジョンメイヤーをこの曲から感じ取りました。

心地よいギターとハーモニカ

The worst thing that I ever did Was what I did to you 

But if I just showed up at your party
Would you have me? Would you want me?
Would you tell me to go fuck myself Or lead me to the garden?
In the garden, would you trust me
If I told you it was just a summer thing?
I'm only seventeen, I don't know anything
But I know I miss you

という歌詞は若い頃、テイラーは別れた直後のジョンに

Dear johnという曲を書いてそれ以来非常に仲の悪い関係にありましたが、

それを想起させるような歌詞の内容に

このアルバムジャケットもパラダイスバレーに非常に似ているので

あくまで推測なんですけど、ジョンを思っているのかなと思わされる曲でした。

全体的に見ると

音楽的にこれまでのテイラーの中で群を抜いて耳心地の良いサウンドでした。

テイラーらしくほとんどの曲が恋愛ソングでそこに関しては、

聴いていて途中で飽きてしまう部分はありましたが、

そこに関してはサウンドが良い分相殺されていると思います。

原点回帰をしつつも、政治的な発言や相手を赦し自分を省みる歌詞は

彼女の新しい時代を感じさせましたし、

飾らない素のテイラーを見れた気がします。

凄く落ち着いてはいるのだけど、

内側は非常に熱く感情的なアルバムでした。

そんな今作はクリアで少し疲れた貴方を優しく自然に引き込んでくれるアルバムだと思うので是非聴いてみてください。

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