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田島環さんのこと vol.1[岩橋由莉の場合]

今回研究所では、田島環さんの絵のワークショップを再び企画することになりました。以前オンラインで8回かけてされた絵のワークショップが本当に楽しくて素敵で、そのあとファシリテーター講座でも特別ゲストとしてたまきさんのファシリテーションを学ぶ機会を持たせていただいて、やっぱりもっともっとたまきさんのファシリテーションで絵を体感する場を創りたい!と研究所メンバーが一同に思ったのでした。 

今回は、その企画を発表する前に、企画者であるところの岩橋、くじらちゃん、うららの三人それぞれで、まずはたまきさんの創った場でどんな経験をしたかを紹介してみよう! ということになりました。まずは言い出しっぺの私、岩橋から!


たまきさんの場でもっと描いてみたいと思った理由はいくつかありますが、まずこの間の8回のオンライン講座が私にとってとても楽しい時間だったことが大きいです。何をするのかわからないまま言われたものを準備して、言われるがままにビー玉を転がしたり、紐を紙の上でスライドさせたり、紙を折り曲げたり……。まるで子どもの頃に帰ったようで、初めのうちは何も考えずとも何かが出来上がっていく過程が新鮮でした。何度か繰り返していくうちに、今度はもっとよくしたいと欲が出てきて、けれども、そもそもビー玉は思った所には転がらないし、紐をスライドしても狙ったラインはなかなか出ません。やっているうちに何が「いいもの」なのかわからなくなってくるのです。

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そんな時、時々たまきさんに言われるがままに出来上がったものを画面上で見せることがありました。その度に、短いコメントをくれるのです。「あ、いいですね」「素敵です」「綺麗です」そう言われると、あ、そうなのか、と思う。で、やっている間にまたわからなくなっていると、「一度手を止めて眺めてみてください」「また別のものをやってみて、もう一回戻ったらどうでしょう」と全体に対してのアドバイスなのですが、私には絶妙のタイミングだったりすることが何度かありました。どれも多くは語らないし、語り口も軽いのですが、的確だといつも思っていました。
ある時、どんな基準でアドバイスをしているのですか、と聴いてみたことがあります。するとたまきさんは「見てるとわかるわよ〜」とケラケラと笑いながら言われました。絵に向かっている姿勢を見るとわかるのだそうです。

そうやって回を重ねていくうちに、自分の浅い経験の中だけで何がいい、悪いと判断するのはやめようと思うようになってきました。
オンラインなので、やっている途中は自分の作品しか見えていないのですが、最後にみんなで画面上に出してみると、出来上がったものがあまりに違うので思わず笑ってしまいました。そうやってひとりひとりみんなが四苦八苦して手を動かした結果のものは、一堂に会して見てみると、それぞれにしか生み出せない線や形を表していたからです。

(後半になってくると、イメージする、という作業が入ってきたのでこれはこれでまたいろんなことが起こるのですが、今回わたしは前半での経験に絞って書いています)

たまきさんは、見てるとわかる、と笑っているけど、その奥にある描き手としての経験値のすごさを毎回経験していたのですが、その、根幹のようなものを実感したことがありました。オンラインのアーツ・ファシリテーター養成講座で、特別ゲストとしてお呼びした時のことです。絵の作業を体験する前に、「まず一分間目を閉じてください」と指示をされました。今までのたまきさんの現場では経験したことのないことだったのでとても印象に残っており、ふりかえりの時間で、そのことを聴いてみました。すると、

「始める前に自分の内側に集中して欲しかったんです。チェックインで和気あいあいしたいい雰囲気だったからこそ、一度、自分の内側に立つというスタートをしてほしくて」

ときっぱり言われました。

そういえば、その日は、たまきさんと初対面の方も多かったので、できるだけなごやかな場であろうとしたことを思い出しました。
たまきさんはそれを一度リセットしたかった。「自分の思い込みや見方の変化に気づくためには、まずは自分の持っているものをはっきり見つめないと」とことばを足されました。この人は、こうやって長いこと、絵を描くことを通して自分とそれ以外の世界と向き合ってきたんだな、とたまきさんの世界を垣間見た思いでした。

くじらちゃんへ続きます。

(岩橋由莉)

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