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【新連載】ワークショップで行う詩の推敲を公開します!(向坂くじら・岩橋由莉)①

こんにちは! 向坂くじらです。
詩人で、詩のワークショップを作っています。

ワークショップでは、参加してくださった方が詩を書きます。そのプロセスで、わたしが推敲のお手伝いをすることがあります。

推敲とは、詩や文章を手直ししてよりよくしていくこと。わたしが詩作の中でとても大事に思っている作業です。書きはじめた段階、下書きを終えた段階では見えていなかったものが、推敲の中ではじめて見えてくる……ということもよくあります。

この連載では、ワークショップ内で参加者の方と行う推敲を、表現教育家の岩橋由莉(ゆりさん)といっしょに実践し、そのようすを記録します。ゆりさんは声や朗読のワークショップを担当しており、わたしも一緒に詩と朗読のワークを作らせていただいています。

詩のワークショップでどのようなことをしているのか興味がある方、詩ができあがっていく工程を見てみたい方、ぜひお楽しみください!


今回はまず、お題を出して書いていただきました。
お題はこちらです。

「あるできごとや気持ちが夢に出てきたとしたら、どんな夢になるでしょうか?」

そして、この詩が届きました。記念すべき第一稿です。

(ゆり)


公園は作られた四角い緑
砂場に赤いお椀や黄色いスコップが落ちている
そこにスライスされたたけのこがお皿に載っている
それを横目に わたしは 歩く
行くべきところがある
ただそれだけを 思って

いつでもやめることはできるけれど
どこで止まったって
こんなの 私だけがたどり着ける場所でもなかった

気がつくと
皆は 四角く作られた中で 
赤いお椀を持っている
黄色いスコップを持っている
そして 笑っている

みんな そこが自分の場所だと知っているのだろう
そして どうして 私は知らない
こんなにも探して

お皿のたけのこを生のままかじってる男
掘りたてだから大丈夫だと言う
ばかだなあ、渋いに決まってるのに
はたして
「ペッペッ」と口に入れたたけのこをすぐ吐いた
えぐみがあるよ 
と甘えるように上目遣いでわたしを見る
わたしは そうなの とも 
お水飲む? とも言わなかった

ひとりで公園の砂場の真ん中に立っている

拳を握って 風に向かって
せめてそうして立っていよう
哲学するらいおん みたいに

だれか 何してるの?って聞いてくれないかしらん
そしたら、

「生傷だらけの七転八倒
そんな歩みだ 何が悪いっ」

って思いっきり悪態つく
悪態つく!

なるほど。ということで、この詩に対して、わたしからお返事を書きました。

(くじら)

ゆりさん

ありがとうございます! 受け取りました。とてもいい下書きです!
公園という場所設定、そこに唐突にあるたけのことそれを食う男というイメージと、そして「わたし」がもつ自分の行く道への葛藤や決意のようなもの、という主題とがちょうどいい遠さで、おもしろいです!
いいアイデアが出てしまったので、あとは楽しいばかりの詰めていく作業ですね!

いまの状態で読むと、「たけのこ」の異質さ、「男」と「わたし」とのなんともいえない関係、そしてところどころに挟まる「わたし」の独白がとても印象に残ります。

>「ペッペッ」と口に入れたたけのこをすぐ吐いた
えぐみがあるよ 
と甘えるように上目遣いでわたしを見る


いいですね〜。むかつきますね。
この男に対する「わたし」の冷たさと、ラストの

>って思いっきり悪態つく
悪態つく!

という態度はどこか響き合っているような気がします。この終わり、わたしはとても好きです。

完成に向けていくつか注文します。

>いつでもやめることはできるけれど
どこで止まったって
こんなの 私だけがたどり着ける場所でもなかった

>みんな そこが自分の場所だと知っているのだろう
そして どうして 私は知らない
こんなにも探して

など、独白のパートになると急に解像度が下がる感じがします。もっとシェイプアップさせてほしいです。普遍的な問いであるぶん、すでにたくさんいろいろな人が言及している内容です。そこをどうにかかわす、すりぬけるつもりで、余分なところを落としてください。

>「生傷だらけの七転八倒
そんな歩みだ 何が悪いっ」


ここも、悪態としては説明的なので、もっともっと肉声の悪態が見たいです。悪態で締めるからにはここが見せ場ですね!

いい下書きなのですが、あくまで下書きで、まだ完成ではないですね!
なにをもって完成とするかというのはむずかしいのですが、この詩に関して言えば、語順や、単語選びにも、検討の余地がまだまだある感じがします。ストーリーというか、筋立てのすこしある詩なので、なにを、どういう順番で読者に見せたいのか、再度検討してみてください!

ご覧いただくとわかるとおり、推敲のお返事をするときには「注文」をすることにしています。「注文」なので、詩の先生として、というよりは、詩の読者として、お客さんとして、のコメントに近いかもしれません。

まずは第一稿とそのお返事。これを受けて、ゆりさんからどんな改稿が返ってくるのか、どうぞお楽しみに!

[次回]


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