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2019年鬼貫青春俳句大賞応募作『どうしても夏だった。』

 モテるために作った作品が、結局落選したみたいです。モテるために作ったのに、結果が出なかったので、どうせなら非常に格好悪く負け犬の遠吠えをしておきます。

「これを選んでくれない限り俳句は詩には昇華できない気がしま〜す!!」

……本心かはさておき。ただ、一応選考会で触れていただいたりしたらしいので、ほとぼり覚めてそうな今頃公開しておきますかね。ちなみに、正直、30句連作というより30行詩な気がしなくもないし、実のところ路地裏ナキムシ楽団の楽曲「ラムネ」の翻案に近い感じがします。


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どうしても夏だった。             田村奏天(タムラカナメ)

キスをした。どうしても夏だった。雨。
はつなつのきみがめがねをかけていない
ビー玉めいてラムネの瓶に透かされる
それだけで違う気がしてくるボート
「このまま消える?どこよりも白い祭へ」
はまなすにさわれば海と同じ冷気
眩しさという夏浜の今を走る
手を引いて軽い手を知る手と空豆
誰も来ていないしパパイヤあまりつつ
国道の数字は輝いた。暑い。
《一夏》の《一》にすべてが乗るとかげ
ぼくたちだけのパラソルにかくれられる
明け方の見つかるまえのアマリリス
蛍つかまえて無邪気で二人きりの闇
南風吹く君を自然に名前呼び
二人乗りばかりを着けてはたた神
霧や思う以上に重いままの呼気
夏負けて、見つかる。苦い色の街。
髪も夏シャツも一日ずつ湿る
抱きしめれば無力な閉じられた裸
なにも出来なくて夕立のバスストップ
泣いていた、石と思える晩夏の中。
くだかれていったしいらのそのからだ
走り疲れて花火を枯れてから知って
屋根から消えていく海の家だった
「トマト齧ってまた逃げ切れなかったねぼくたち。」
取り出せなくてラムネの瓶に残るもの
夏果の門を予鈴のあとに過ぎる
あさなぎのめがねのきみがまたまどぎわ
二人でいた雨。過ぎ去った峯雲は。



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