見出し画像

マジック:ザ・ギャザリングの話

 いままで「《なにかめいた》練習」として書いていたもの、あの名前はなんとなく肩肘貼ってしまっていたので、これからは「〇〇の話」として続けていきます。趣味とか、感じたこととか、気楽に書いていこうかな。せめて最低月一くらいの頻度で上がるとは思うので、よろしくお願いします。


 ところで、ボクはかれこれ5年以上、とあるカードゲームを続けています。名前は「マジック:ザ・ギャザリング(Magic; the Gathering)」、通称MTGと呼ばれるゲームです。。今回は、ボクのそれなりに長く続けているこの趣味について話していこうと思います。国内最大手の専門店が、「マジック記事を書いてみよう!」なんていう企画を行っていたので、実はそれに便乗するかたちです。

 そもそもの話からはじめましょう。そもそもMTGってなんなの、と。特にボクはこのnoteをそれなりに幅広く使っているのですが、ダッシュボードを見るに、その多くの方は俳句関連の興味が強い方かと思うので、知らない方も多いはずです。だから、ルールまでは触れないまでも、一番最初の、知識の部分から始めましょう。

 マジック:ザ・ギャザリングの世界では、あなたはプレインズウォーカーとよばれる魔法使いです。壮大なファンタジー世界の主人公となり、呪文を駆使して戦います。
 8か国語が発売され、70か国以上で遊ばれている世界初のトレーディングカードゲーム、マジック。1万7千種を超えるカードと、25年間で蓄積された戦略による対戦相手との駆け引きが、あなたの知的好奇心を満たす素晴らしい体験を提供するでしょう。しかもそれは友達とのカジュアルな遊びから、競技としての緊張感ある世界大会まで、1つの道で繋がっています。
 その道のりを歩むために必要なのは、たったひとつの『魔法』のルール。さあ、新しい冒険を始めましょう!

https://mtg-jp.com/startguide/

 MTGはアメリカ発祥の世界初のトレーディングカードゲーム(TCG)で、そして世界で最も遊ばれているTCGです。ボクの体感として、日本国内では、現段階で高い知名度を誇ってはいませんが、例えば漫画『遊☆戯☆王』(高橋和希)や同じくTCGの「デュエル・マスターズ」が誕生するきっかけを作ったのは、MTGに違いありません。対戦相手とカードの効果によってライフを削り合うという、今のTCGの形式を生み出したのが、このゲーム、というふうに考えてもらえば、間違いはないはずです。
 また、1993年発祥ということもあり、初期のカードは枚数も少なく、また、まだゲームシステムが整ってない故の能力の強さも相まって、骨董品としての価値の高さもよく知られています。オークションに出されては、カード1枚に1億円以上の評価が付けられるなんてこともあり、ボクが「MTGをやっています」と言うと驚かれることもしばしば。いや、ボクはそんな大層なカードは持っていないですよ?
 日本で流行していたのは90年代後半のようです。僕自身はその雰囲気をもちろん知らないけれど、カードショップや、ときどき顔を出すMTGバーなんかで知り合った諸先輩方のことを考えると、なるほど、という感じ。最近では、当時の風景を描く作品として、『すべての人類を破壊する。それらは再生できない。』(伊瀬勝良・横田卓馬 )という漫画も出てきました。ボクの知らない、つまりはまだ世界が20世紀だった頃の青春物語は、それが虚構であることを除いても、触れうることがないということもあって、輝かしく感じられます。

 ボクがこのゲームに触れたのは高校一年生の頃。その年は、アニメ・ゲームの世界では随分とカードゲームが賑わっていたことを記憶しています、遊☆戯☆王が連載20周年を迎え、その記念作品として映画『遊☆戯☆王 THE DARK SIDE OF DIMENSIONS』が公開された他、スマホアプリとして「Shadowverse」がリリース。ボクの同級生たちも多くの人がカードゲームに熱中していたように思いますし、ボク自身も、映画を見に行き、ゲームをインストールした、当時の学生の1人です。
 どちらも同じ先輩から勧められました。「見に行くぞ」と言われて付いて行き、「始まるらしいから入れろ」と言われインストールし、思えば随分と振り回されていたのだなあ。彼がボクを振り回した言葉の一つが「MTGやろうぜ」でした。

 ボクのカードゲーム遍歴は、それほど複雑ではありません。小学生時代、街中で拾ったカードから遊☆戯☆王を始め、コンビニに行ったついでで親に買い与えられたパックからデュエル・マスターズを始めました。どちらも小学生の道楽程度で、カードショップなんてわからなかったし、大会に出るなんてことはもってのほか。アニメの主人公たちが使役していたものと同じカードを手元に持っては、「カッケー!」と友人たちと言い合うだけ。友人の誕生日、当時やっていたアニメの最終回を彼の家で見ながら、「このカード持ってるぜ!」とケーキを片手にみんなで語り合っていた風景を、まだ覚えています。
 おそらく、真っ当にカードゲームを遊んだと言えるのは、高校生になって、前述の流行に触れてから。戦略を持って好きなカードを詰め込み、作ったデッキで試行錯誤しながら対戦していくという行為は、とても創造的で、ボクの性分に合っていました。ただ、どちらかと言えば、画面越しに誰かと対戦するよりも、実際に紙の束に触れながら、やいのやいのと友人と騒いでお祭りのように遊ぶ方が好みで、友人に「一緒にやろうぜ!」と広めた割には、Shadowverseへの熱は簡単に冷めてしまいました。

 ですから、先輩の「MTGやろうぜ」という言葉は、随分と魅力的に聞こえたものです。高校生にとっては、知名度や価格の高さといったところで、やや敷居の高い遊びではあったのですが、のめり込むまでは時間はかかりませんでした。
 はじまりは、ボクと、誘ってきた先輩と、もう1人、共通の友人である先輩の3人。便宜上、ここでは2人をA氏、B氏と呼び分けます。ボクが乗り気になると、「逃さないためだ」といって、簡単なデッキ1つをB氏が譲ってくれました。詳細は覚えていないけれど、当時は「カラデシュ」というパックが発売されたばかりで、その中に収録された「エネルギー」という能力を用いたデッキでした。長い関係ではなかったけれど、ボクの初めての相棒は〈静電気式打撃体/Electrostatic Pummeler〉。考えることは少なめに、「この1枚を!なんかすごくして!攻撃!勝ち!」という、シンプルなデッキ。初心者にはもってこいです。学校帰りにカードショップに寄っては、そのデッキを使って、MTGを両氏に教えてもらっていました。
 少しずつスキルアップしていって、三人チームで大会に出よう!という話が出始めます。結局出場の話は各々の予定が合わないなど頓挫するのですが、ボクは当時その話に乗り気で、結果を残すために初めてカードを単品で買いました。〈反逆の先導者、チャンドラ/Chandra, Torch of Defiance〉。当時の価格で¥4,000ほどして、高校生の財布には大きなダメージでしたが、それ以上に初めて自力で手にしたカードに心を躍らせたことです。
 ほどなくしてボクは気づきます。同級生の遊び相手が欲しいと。彼ら2人とはとても仲が良かったけれど、高校生にとって、先輩の教室に遊びに行くという行為は、非常に困難な行為で、ボクは授業が終わるまで、植え付けられた好奇心や情熱を共有する相手がいなかったのです。
 ボクは同級生何人かに、自分のために声をかけました。授業の合間なんかに、MTGの話をできる相手探しです。多くの友人が、その高価さや複雑さといったイメージから、あまり乗り気になってはくれませんでした。けれど、1人だけ、ボクの被害者理解者になってくれました。彼をC氏と呼ぶとして、C氏は、ボクがこの中高一貫校に入学して、一番最初に隣に座っていた、この学校での初めての友人でした。
 メンバーはこれで4人。それぞれがデッキを持ち寄って1vs1で対戦していましたが、あるときMTGの特殊ルールに気がつきます。それが「統率者戦」です。
 統率者戦は4人までの多人数で対戦するパーティーゲーム。同名のカードは例外を除いて1枚までしか採用できず、デッキは「統率者」に選んだカードと同色(≒同属性)のカードしか入れられません。ですが、1vs1vs1vs1という、TCGでは珍しい構図のゲームで、ボクとしては、MTGの中で最も賑やかなゲームだと思っています。
 ボクが統率者に選んだのは〈エドガー・マルコフ/Edgar Markov〉。これもA氏から譲り受けたデッキでしたが、自分で足し引きして、今でも同じメンバーで集まってはお祭り騒ぎを繰り広げています。

 知っている人たちからすると「カジュアルフォーマットにいくら注ぎ込んでるんですか?」「2枚で完成するコンボを気軽に搭載するな」「なんで〈赤霊破〉に〈紅蓮破〉まで積んでるんだビートダウンデッキがノリで打ち消しを選ばないでくれ」などの意見も出てきそうですが、主にA氏とB氏の悪ノリが原因です。僕ら後輩陣は、先輩たちに振り回されては、次の辛酸を思い、強化や対策を繰り返してきた、ということにさせてください。

 ボクらがMTGを初めて数年たつと、MTGは25周年を迎えました。そんな中で発売されたのが「マスターズ25th」というパック。今冷静に見返すと、「ん?」となるラインナップな気もしなくはないですが、ボクらにとってはあこがれのカードが出るかもしれないという大きな期待を乗せた商品でした。
 ボクはC氏と相談して、2人でAmazonの予約ボタンを押しました。これも高校生には相当手痛い出費でしたし、親に頭を下げての購入でしたが、同じダメージを2人で負うと、意外と軽く感じられる物です。これがボクにとって初めてMTGで買ったボックスでした。
 ボックスが届いた当日、ボクらはDiscordで開封通話をしていました。購入したボクとC氏、それを解説するA氏・B氏に分かれた構図の中で、24パックずつ、合計48パックが剥かれました。結果としては、お目当てのカードは2人とも出せず終い。けれどボクは異様に〈スレイベンの守護者、サリア/Thalia, Guardian of Thraben〉や〈リシャーダの港/Rishadan Port〉をゲットしました。
 知らない方は意味がわからないと思うのですが、これらは「デス&タックス」と呼ばれるデッキのパーツです。名前の由来は英語の慣用句、「逃れられぬもの」を意味する語で、その名前の通り相手の動きを封じていくタチの悪いデッキです。
 そのデッキの基礎パーツがあまりにも集まる物ですから、ボクらは大盛り上がり。囃し立てられこのデッキを組むことになりました。

 どのカードを、どう集めたのか、それぞれを覚えています。〈魂の洞窟/Cavern of Souls〉は初めて引いた高額神話レア。〈梅澤の十手/F○○kin Japanese Weapon Umezawa's Jitte〉は、B氏から「レガシーデビューおめでとう」とプレゼントされました。一つ一つのカードに自分の物語を感じながら、ボクはMTG界のオールスターゲームともいえるカードプールの広いルール、レガシーに足を踏み入れ、MTGにのめりこんでいったわけです。

 カードの整理をしていると、今でも始めたばかりのことを思い返します。そして、次にまた自分たちのグループで賑やかに遊べる日を思います。MTGは、ボクの青春の一つで、ボクにとって、繋がりの中の、大きな部分を占めています。
 MTGはこれから30周年を迎えますが、ボクもボクで、このゲームを5年以上続けていることになります。これからもたくさんの出会いや、ストーリーが、このゲームからもらうことになるのだろうなあと考えると、これまでの出費なんて痛くないくらい、ワクワクが止まらないのです。どうですか?あなたも一度。


 




この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?