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数字を把握するー『学童保育(放課後児童クラブ)』

ののりりさんによる写真ACからの写真)

 不定期で子どもの遊びや育ちに関係する数字を調べるシリーズ。

 本日は、学童保育(放課後児童クラブ)について取り上げます。このコロナ禍で、保育園と共にその存在が重要視されるとともに、職員の過酷な勤務実態・待遇もニュースで取り上げられていますが、全国にどの程度の数があるのでしょうか。

 データの出典は、厚生労働省の「放課後児童健全育成事業(放課後児童クラブ)の実施状況」の令和元年のものです。毎年12月にその年の5月時点での実態が発表されるので、こちらが最新のものとなります。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000189556_00003.html

 ちなみに、放課後児童クラブは厚生労働省の事業で、児童福祉法に規定された、共働きの家庭などの留守家庭の児童に遊びや生活の場を提供して、健全な育成を図るものです。
 少し似ているけど異なる事業に「放課後子ども教室推進事業」があります。こちらは文部科学省の事業で、放課後や週末等に、子どもたちの安全・安心な居場所をつくり、地域の人の協力のもと、学習やスポーツ・文化芸術活動,地域住民との交流活動等の機会(放課後子ども教室)を提供するものです。
 前者は子どもを預かる場(子どもにとっては基本的には行かなければならない場)ですが、後者は居場所なので登録はしていても基本は自由参加の場所です。ただ、平成26年(2014年)に策定された「放課後子ども総合プラン」において、放課後児童クラブと放課後子ども教室を一体的に行う方向が示され、これを導入している自治体もあります。
 例えば横浜市は「放課後キッズクラブ」という名称で事業を展開していますが、利用区分が2つに分かれていて、利用区分1は午後5時まで、利用区分2は午後7時までとなっています。つまり前者が放課後子ども教室、後者が放課後児童クラブとなります。
 現在は、「新・放課後子ども総合プラン」が動いていますが、旧プランと合わせて厚生労働省の下記のページで内容が確認できます。
https://www.mhlw.go.jp/stf/seisakunitsuite/bunya/kodomo/kodomo_kosodate/kosodate/index.html
 横浜市の放課後キッズクラブに関しては、横浜市のホームページをご覧ください。
https://www.city.yokohama.lg.jp/kurashi/kosodate-kyoiku/hokago/hokagokids/houkago-kids.html

 加えて、主に民間企業が経営する学童保育もあります。様々なサービスを充実させていて、例えば英会話やダンスのプログラム、夏休みなどはキャンプに行ったりもします。近年様々な業種からの参入が相次いでいます。
 いろいろ挙げましたが、今回取り上げるのは、あくまで厚生労働省の放課後児童健全育成事業における放課後児童クラブです。

 さて、前置きが長くなりましたが数字を見ていきましょう。
 令和元年5月1日現在の、放課後児童クラブの数は25,881か所で、前年より553か所増加しました(グラフには出てきませんが、前述した「一体型」が5,361 か所(前年比 448 か所増)が含まれています)。
 登録している児童数は1,299,307人、こちらは前年より64,941人増えています。
 保育園と同じく放課後児童クラブでも待機児童が社会問題として顕在化してきていますが、令和元年の待機児童は18,261人です。前年より982人増えています。クラブ数が増えても、それを上回るニーズがあることがわかります。このことは、保育園の待機児童が大きな問題になった時点で予測できていたことですが、なかなか受け皿の整備ができていない実態が見えます。

クラブ数


 放課後児童支援員(スタッフ)の数は98,905人で、前年より8,136人増加しています。単純計算すると、放課後児童クラブ1つあたり3.8人、支援員1人で約13人の子どもを見ていることになります。細かい配置人数も発表されていて、下記の通りです。
 登録者が71人以上の施設でも2名配置という施設が122ありますが、どうやって運営しているのでしょうか。相当ヘビーなのではないかと想像します。

配置数


 1年ほど前に話題になったのですが、放課後児童クラブの職員基準が緩和されました。これまでは、放課後児童支援員を支援単位(40人以下)ごとに2人以上、そのうち最低1人は保育士などの資格か現場経験を持つ人を配置することを「従うべき基準」としていたのが、「参酌すべき基準」、つまり十分に参照しなければならない、逆に言うと参照すればいいというものになりました。極端に言うと資格や経験のない支援員一人でもOKになったということです。
 以前から放課後児童支援員も保育士と同じく「誰でもできる」と言われてきましたが、発達段階(年齢)の異なる多数の子どもの育ちを支えるには、やはりしっかりとした知識と経験が必要です。また、子どもの安心・安全を守ろうと思うと、危険管理にも精通しておく必要があります。
 経済性や待機児童問題など、大人の都合で子どもの育ちの環境はないがしろにされがちです必ず質とセットで考えないと、子どもたちの「今」が守れなくなります。「今」を活き活きと過ごせることが子どもの育ちにとって大切なことなのです。

 さて、今回は箇所数、登録者数、放課後児童支援員数だけ取り上げましたが、それ以外にも、運営主体、設置場所、登録児童の規模(人数)別などの情報も公開されていますので、興味のある方は、厚生労働省のページをご確認ください。
https://www.mhlw.go.jp/stf/houdou/0000189556_00003.html

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